【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

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最終章 魔王をその身に宿す少年

139.メルタノの三賢者(後)

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(こ、こいつは……なんだ。この魔王をも凌ぐ強大な霊気オーラは)

 魔神の勘が今ここで戦っても勝ち目はゼロだと告げている。

 マッカの死体に目をやった。

(こいつも途轍もなく強くなっていた筈……今のこの短い間にやられたってのか……)

 寒気がする思いだが、ふとその手に持っていた戦斧バトルアクスに目が止まる。

 何か閃いた様に、リドが何もしてこない内にと素早くそれを拾った。

「チッ。バカみてーに重てーな。ハル、目ェ瞑ってろ」
「え、まさかそれで?」

 ハルヴァラの顔からサッと血の気がひく。

「任せとけ。最悪千切れてもお前なら勝手に治癒するだろ」
「ひ……ひど……」

 ハルヴァラの反応を待たずに斧を振り回した。

 さすがに魔族の力だった。
 彼女は見事にハルヴァラの両手の鎖を切り、両足の枷をぶった斬った。

 それは今まで彼女を捕らえていたものでもあったが、逆に30年、彼女を支えていた鎖でもあった。

 細くなった彼女の足はその痩せこけた体すら支える事ができず、彼女はよろめいてすぐに転倒する。

 一方のロゼルタも斧を振り回した反動でへたり込んでいた。

 だがそのお陰でハルヴァラが地面に顔をぶつける前にロゼルタが抱き抱える事が出来たのだが。

 一向に体力が回復せず、消耗しきったロゼルタももう立つ事が出来ず、ハルヴァラを抱き、尻餅をついたままだった。

(この状態じゃあ逃げろっつってもひとりじゃ無理だな)

 本当は自分が時間を稼ぐから逃げてくれと言いたかった。

 ハルヴァラを見つめて、さてどうしようかと考えていた時、当のハルヴァラはロゼルタの体のあちこちを触っていた。

「や、やめろ、くすぐってー」
「これ……リュカオンの術式ね」
「知ってるのか!?」

 コクリと頷く。

「でもまずは逃げよう」

 ハルヴァラの言う事は正しかった。

 だが上を見上げて力無く笑った。

「すまねー。さすがにあそこまで飛ぶ力は……もう残ってねーな」

 実のところ、ロゼルタの体は限界をとうに超えていたのだ。

 最後の気力で斧を振り回したと言っていい。

 ハルヴァラが自力で逃げれるのなら抱き着いてでもリドの足止めはする覚悟だったが、どうやらそれも無理そうだ。

 申し訳無さそうに言うロゼルタに、ハルヴァラは生気のない顔でニコリと笑いかける。

「でも私と違って魔素はたっぷりだね」

 何かの気配を探る様に少し虚空を見上げ、もう一度笑う。

「それに近くにクリニカもいるようだし」

 その時、リドの様子が変わった。

「ふう……久しぶりの……体……」

 両手を閉じたり開いたりを数回繰り返す。

「はるか昔、人間だった頃を思い出す」

 独り言を呟くとふたりを見てフフンと口の端を上げて笑った。

「ふたりとも、とても美人だね。どうやらリドは君達を引き合わせておいてここに閉じ込め、同時に乱暴したかったみたいだ。まったくしようのない奴だ」
「テメーは……」

 と言いかけてロゼルタが何かに気付いたように言い直した。

「テメーがリリアってやつか」
「その通り」
「あたしらの祖先なんだって?」
「まあ、そうだね」

 体をふたりに向け、目を細めて笑う。

「体が心地良い重さを持ち、命というものを感じる。懐かしいな」

 リドとのあまりの性格の違いにロゼルタもどう対処して良いのか戸惑った。

「で……そのリリア様は今更蘇って一体何をしようとしてるんだ?」

 リドリリアは愉しそうに更に目を細めると、

「そんな事……私を何だと思っているんだい? 全て滅ぼすに決まってるじゃないか」
「全て……滅ぼしてどうしようと?」
「また再生するのさ。私の世界をね。幸いなことに」

 自分の下腹をさすりながら、

「私だけいれば子を増やす事が出来るのでね。この世は完璧な私と私の家族だけとなる」

 と言い、妖しい目つきでロゼルタを見据えて笑う。
 その目を見てゾッとしたロゼルタだったが、逆に笑い飛ばしてみせた。

「こりゃおかしい。笑っちまうな」

 リドリリアは初めてムッとした顔を見せ、「何がおかしい」と言った。

「全て破壊して残るのはテメーとテメーの分身だけって? アッハッハ! 引き篭もり拗らせ過ぎじゃねーの。気色悪過ぎて笑いが止まんねー」

 眉間に皺を寄せたリリアだったが、ふとまた柔らかい表情に戻る。

「ふふふ。怖がってるね。喜ぶがいい、新世界への最初の贄は君達にしてあげる」

 リドの腰にある魔剣『魔喰』に手を掛けるとニコリと笑う。

 その時!

 ずっとロゼルタに抱かれ、黙っていたハルヴァラが突如ゆっくりと立ち上がる。

「ふふ、ふ。ほらもう脚が太くなってきたよ?」

 突然そんな事を言い出した。

 確かに先程までより血色も良くなり、言われてみれば少し肉付きが良くなった様に見える。

 リドリリアはハルヴァラの言動が理解出来ず、怪訝げな表情を浮かべて顔を傾けた。

「これが今の魔族だよ。食べなきゃ飢えて痩せ細るし、誰とも会えなきゃ寂しがりもする。人間はもっと弱い。体は貧弱ですぐ死ぬし。でもねえ」

 両腕を体の前で合わせると全身から真紅の霊気オーラを噴出する。

「そんな弱い奴らが肩寄せて生きてるのがこの世界なんだよ。完璧な奴ばっかの世界なんてゴメンだね!」
「お前の意見など聞いてはおらぬが」

 不可解と言わんばかりにリドリリアは不思議そうな顔でハルヴァラを見る。

「そりゃ失礼。聞く耳持たないならあっち行っててくれる?」

 ハルヴァラの両手に赤い光が収縮していき、とんでもない熱量を持った小さな球となる。

「えらく魔力を振るっているが、一介の魔神如きが一体何をするつもりだ? そんな程度の魔力では……」

 言い掛けて想定を超えたのか、不意に警戒の色を見せて口を噤む。

 息を呑み、それを見ていたロゼルタは、不意に自分の魔素がごっそり消えたのがわかった。

(こ、こりゃあ……)

 ハルヴァラはニヤリと笑い、

「一介の魔神の悪足掻き、受けてみなさいよ! 『三賢者の天魔滅亡メルタニア・ペルギウス』!」

 そう叫んだ刹那、部屋の中は紅で満たされた。

 それはメルタノの三賢者の力を全て使って放つ、究極の奥義。

 ハルヴァラ、ロゼルタ、そして覇王城の中でドーンと戦っていたクリニカ3人の魔素を根こそぎ奪い、消費する。

 その強制力はレイドックの指輪の効果で無尽蔵といえる魔素量を保っていたクリニカの魔神化をも解いてしまう程だった。

 当然その威力も生半可なものではなく、同時に張ったロゼルタとハルヴァラを包むバリアを除き、全ての形あるものが削り取られた様に消え去った。

 特にリドリリアがいた前方は、くり抜いた様に巨大なトンネルと化した。















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