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注射

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「ん…」
ぷつ、と小さな音がする。
黒服の組員に体を支えられながら青年は腕を出して朦朧としていた。
その差し出された腕に新川は注射針を刺す。

「今夜もがんばって働けよ」
「…うん!」
優しく頭を撫でられて青年は嬉しそうに目を閉じた。
部下に女の服をかき集めさせて半分女装させてみた。元々顔のいい子たちばかりなので違和感は少ない。ウィッグもかぶせてみると女に見える子もいた。
「なかなかいいじゃないか」
ただ客の趣向があるので半分は男の子っぽさを残す。

朝まで飲んだ状態で、ここで遊んだことも記憶に残らないくらい泥酔した客相手の商売だ。穴が使えればまあクレームはこないし、ここまで来て文句言って帰った客は数える程度だ。
「てめえら客ひっぱって来いよ!」
新川が檄を飛ばす。勢いよく飛び出していく組員を見送って新川は青年を膝に座らせた。
「お前を買った男、帰ってこいって泣いてたぞ」
「だってえ…。クスリがないんだもん。やだよお」
「じゃあそれがあれば帰るんだ?」
「うーん…。退屈……」
新川は青年が自分に振り向いてほしいことをわかっている。恋人を装って近づいてだんだんクスリの味を覚えさせて離れられなくした。でもここまで稼いでくれれば上等だ、あとは人生やり直してくれと思って送り出したのだが。

ヤク中に未来なんてねえか。

ここで飼い殺してまた稼がせるしかないな、本人もその気だし仕方ない。
「まだお客さんいないしい、しよ?」
「んー、お前を汚したくないなあ」
夜中なのか朝方なのか、午前3時ごろ、客を連れて部下が部屋に入ってくる。
来る前に下でシステムの説明はしているので後は気に入った子を選んでもらうだけだ。

「この子いかがです?うちのナンバー1です。いい体してますよ」
新川が膝に乗せた青年を客に見せる。男はゆっくり近づいてきて青年の顎に手をかけて上に向けさせた。
「ほんとに女みてえだな。壊れないか心配だ」
「頑丈ですよ。男の体だから」
しばらくじっと見てから、男はガラスの向こうにいる商品を見始めた。
女装、ウケなかったかな?
結局ひとり男の商品を選んで上に移動していった。
「ああ~ん、もお。次はいつお客さん来るのお?」
「来なかったら部下全員で輪姦してやるよ、喜べ」
「やあん!待てなああい!!」

膝の上で駄々をこねている青年を支えながら新川は書類を手に取った。
部下が盗撮してきたある青年の写真。
後藤がしくじる羽目になった長谷川という男の愛人らしかった。
切れ長の眼に生意気そうな顔。こういう子を堕とすのは楽しい。
もうひとりの子はおとなしそうな、でも何を考えているかわからない、少し知性を感じる青年だった。最終学歴が大学ということで納得した。

「成斗…」
気がつくと青年は新川のスボンに手を入れて勝手にしごいていた。
「お前なにしてんだ」
「入れて…、欲しいの…これ……」
新川は青年の体を持ち上げて床に叩き落とした。着せられたドレスに埋まるように青年が倒れる。
「成斗…この穴に入れて!ほらもうこんなにひくひくしてるの。欲しくて我慢できないの!!」
「頭おかしいだろこのヤク中が!客が来るまで待ってろ!!」
「うわああああん!!やだっ、いやだああ!!」

うるさい。
あーバッドなほうにキマったの?めんどくさいなもう。
新川は青年の腕を引っぱって使っていない部屋に入った。
「足開け!ほらさっさとしろ!」
ひどい罵倒を受けても欲しい刺激を目の前にして青年は嬉しそうに足を開く。
新川はズボンと下着を脱いで荒々しく青年の穴につっこんだ。
「…ああ…、成斗…なりとぉ……」
「これが欲しいんだろ?味わっとけ。後でしっかり稼いでもらうぞ」
「あっ、あ!…ああんっ、や…!!いい!!気持ちいいい!!」
ドレスが吐き出される精液で汚れる。絶頂がきてもすぐに勃起するそれはクスリの効果で収まることはない。

「脱がせばよかったな…汚れた」
「ああん…、ごめんなさい…でも気持ちいいのお……止まらないの」
自分をクスリ漬けにしてほかの男に抱かせて金を稼いでいる男のどこがいいんだか。もう正確な答えがわからないんだろう。気持ちよければ誰だっていい。崩壊はそこまで来ている。
「あ、ん…や……あ…、やんっ…成斗…成斗お……」
「この後ちゃんと仕事しろよ」
「はっ!ああ…ああんっ、あ、や!気持ちいい!成斗に犯されて気持ちいいのおお!!」
強く突かれて青年が悦びの絶叫を上げる。肉の当たる卑猥な音は部屋中に響き、新川は青年の中に吐き出すとさっさと立ち上がって青年を引きずりながら部屋の外に出た。
「おい、こいつ綺麗にしとけ」
飽きたオモチャを捨てるように部下に青年を押し付ける。誰の精液なのかわからない白い液体まみれで目がぐるぐるしている男をとりあえずシャワールームまで運んで服を脱がし頭から水をかけた。

「ああ…成斗……」
股の間から精液が流れてくる。部下の組員は顔をしかめながらそれをシャワーで流した。
「どうだ?」
なんの気紛れかバスタオルを持って新川が現れた。
「もう今日はいいからゆっくり休みな」
「成斗…」
ああ、こういうふうに人間を操作するのか、勉強になったと部下が思った。
感心している部下の視線に気がついて、新川は薄い笑いを浮かべて首を横にふる。
「今日は客の入りが少ないな。店は閉店だ。一番広い部屋にみんな集めろ。全員でこいつを輪姦してそれを撮影だ」
「は、はい!」
ビルの外でキャッチしている人間全員に伝えるためその組員は急いで走り去っていった。

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