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悲報
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なんとか部屋に戻ってきて、ソファに崩れる。
車に乗って行ったり来たり、電話を取り、スタッフを送迎して、帰る。
今夜もそんな代り映えのない日常だと思いながら着替えていた時、チャイムが鳴った。
インターホン越しに見慣れぬ男がふたり立っている。
『志賀直也さんのご自宅でよろしいでしょうか』
「はあ」
出かける前に来る客は厄介だと思いながら気のない返事をした。
『櫻井聖夜さんの事でお話をうかがいたいのですが』
中年の男が警察手帳を提示している。
急いでドアを開けると目つきの悪い男と柔和な顔をしたベテラン風の男が立っていた。
「櫻井さんがお亡くなりになった事はご存知ですか?」
「…え‥」
突然のことに直也の脳はすぐに理解できなかった。
「検死の結果自殺なのは確定しているのですが、最後の通話履歴があなたの番号だったのでお話だけ伺いたい」
「ちょっと待って…。櫻井さんが、何?」
呆然として立っている直也の姿を見て、警察と名乗る男が言う。
「自分の体を十数箇所刺して、ベッドの上で亡くなっていました」
「誰が?」
目の前の男が何の話をしているのか、直也は理解できない。
「刺し傷の角度から自分で刺した事は間違いないのですが、死亡推定時刻に通話履歴があったので何か知っているかと思いまして。こちらは彼をある事情でマークしていたので知っていることがあれば話を聞きたい」
「…‥」
状況が全く頭に入ってこない。
「大丈夫ですか?」
固まって動かない直也に警察を名乗る男が声をかける。
「うそ…、櫻井さんが…‥」
立っていられなくなり玄関に座り込んでしまった直也に、ふたりの男が目を合わせる。
ベテラン風の男がしゃがんで直也の目をのぞく。
「最後に会ったとき、何をしていました?」
「…セックス」
「え?」
「セックスしてました」
目つきの悪いほうの男が引いている。
「その時どんな会話を?喧嘩とかしました?」
「…喧嘩するほど…仲がいい関係ではない…」
狭い玄関の壁に片手をついて、どうにか体を支えている直也にこれ以上掘り下げて聞くことはなかったのか、中年の男は立ち上がった。
「原田慎吾さんの葬儀にあなたは参列されていましたね」
直也はかすかに頷く。
これ以上何を聞きたいんだろう。
「櫻井さんは彼の骨壷に手を伸ばした状態で発見されました」
「‥‥」
やはり後を追ったんだなと納得する。
「あのふたりとはどういう関係でしたか?」
どんな関係だったんだろう。
しつこく聞いてくる中年の男は何を聞きたいのだろうか。
「櫻井さんと原田さんの関係はご存知でしたか?」
「さあ…」
俺が知りたい。
「もう少しで奴らを追いつめることが出来たのに」
後ろの男が忌々しそうに吐き捨てた。
「おい」
中年の刑事がそれをいさめる。
「お時間いただいてありがとうございました」
収穫はないと判断したのか、中年の男が挨拶してふたりは去っていった。
直也は座り込んだまま、まだ立ち上がれない。
エレベーターの前まで来て目つきの悪い警察官がボタンを押す。
「ホモなんて何考えてるかわかんないっすね」
「差別用語だぞ、それ」
すぐ到着したエレベーターに入る中年の男に続く。
『閉』ボタンを押しながらどっちでもいいわ気色悪いとしか男は思わなかった。
車に乗って行ったり来たり、電話を取り、スタッフを送迎して、帰る。
今夜もそんな代り映えのない日常だと思いながら着替えていた時、チャイムが鳴った。
インターホン越しに見慣れぬ男がふたり立っている。
『志賀直也さんのご自宅でよろしいでしょうか』
「はあ」
出かける前に来る客は厄介だと思いながら気のない返事をした。
『櫻井聖夜さんの事でお話をうかがいたいのですが』
中年の男が警察手帳を提示している。
急いでドアを開けると目つきの悪い男と柔和な顔をしたベテラン風の男が立っていた。
「櫻井さんがお亡くなりになった事はご存知ですか?」
「…え‥」
突然のことに直也の脳はすぐに理解できなかった。
「検死の結果自殺なのは確定しているのですが、最後の通話履歴があなたの番号だったのでお話だけ伺いたい」
「ちょっと待って…。櫻井さんが、何?」
呆然として立っている直也の姿を見て、警察と名乗る男が言う。
「自分の体を十数箇所刺して、ベッドの上で亡くなっていました」
「誰が?」
目の前の男が何の話をしているのか、直也は理解できない。
「刺し傷の角度から自分で刺した事は間違いないのですが、死亡推定時刻に通話履歴があったので何か知っているかと思いまして。こちらは彼をある事情でマークしていたので知っていることがあれば話を聞きたい」
「…‥」
状況が全く頭に入ってこない。
「大丈夫ですか?」
固まって動かない直也に警察を名乗る男が声をかける。
「うそ…、櫻井さんが…‥」
立っていられなくなり玄関に座り込んでしまった直也に、ふたりの男が目を合わせる。
ベテラン風の男がしゃがんで直也の目をのぞく。
「最後に会ったとき、何をしていました?」
「…セックス」
「え?」
「セックスしてました」
目つきの悪いほうの男が引いている。
「その時どんな会話を?喧嘩とかしました?」
「…喧嘩するほど…仲がいい関係ではない…」
狭い玄関の壁に片手をついて、どうにか体を支えている直也にこれ以上掘り下げて聞くことはなかったのか、中年の男は立ち上がった。
「原田慎吾さんの葬儀にあなたは参列されていましたね」
直也はかすかに頷く。
これ以上何を聞きたいんだろう。
「櫻井さんは彼の骨壷に手を伸ばした状態で発見されました」
「‥‥」
やはり後を追ったんだなと納得する。
「あのふたりとはどういう関係でしたか?」
どんな関係だったんだろう。
しつこく聞いてくる中年の男は何を聞きたいのだろうか。
「櫻井さんと原田さんの関係はご存知でしたか?」
「さあ…」
俺が知りたい。
「もう少しで奴らを追いつめることが出来たのに」
後ろの男が忌々しそうに吐き捨てた。
「おい」
中年の刑事がそれをいさめる。
「お時間いただいてありがとうございました」
収穫はないと判断したのか、中年の男が挨拶してふたりは去っていった。
直也は座り込んだまま、まだ立ち上がれない。
エレベーターの前まで来て目つきの悪い警察官がボタンを押す。
「ホモなんて何考えてるかわかんないっすね」
「差別用語だぞ、それ」
すぐ到着したエレベーターに入る中年の男に続く。
『閉』ボタンを押しながらどっちでもいいわ気色悪いとしか男は思わなかった。
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