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歪に軋む歯車
生きた骸
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「柊……?」
現れたのは弥夜。映像内で見た顔にも関わらず、七瀬は明白な恐怖を見せる。銀色の瞳で揺らぐ冷たい殺気が、自身が映像で見たそれとは余りにも異なっていた。掛け離れ過ぎていた。
「何発殴れば気が済むの? それ以上私の相方に触んなよ糞女」
殺意を宿した声に場の雰囲気が一変し、まるで鑢のような刺々しい空気が漂い始める。七瀬を抉るように正視した弥夜はこれまでに見せたことの無い冷たい表情をしていた。
「弥夜……お前……」
「ごめん、やっぱり心配で後をつけて来たの。周りは私達をよく思わない人達だらけだから、茉白が何かに巻き込まれてしまうんじゃないかって」
「別に巻き込まれても良くない? こんな奴が死んでも誰も悲しまないでしょ」
掴まれた腕を振り払った七瀬。弥夜は嘲笑を浮かべて目を細めると首を横に振った。
「私が悲しむ。夜羅が悲しむ。戦いもしなかった奴に人の過去を冒涜する資格は無い。どんな過去があろうと、それでも茉白は歯を食い縛って生きて来た。今はね? 茉白は私の相方なの」
「相方? 私の人生を台無しにしたこいつが? 笑わせないでよ。傷の舐め合いをして楽しい?」
「私達は辛くとも共に生きる選択をしたの、戦うことを選んだの。寄り添うことを傷の舐め合いだと言うのならそれで構わない。でもね? 相方をこんな風にされて黙っていられるほど、私は温厚じゃないよ」
救いの街の地下で自身が吐いた言葉と同じであることに気付き、茉白は目を見開いた。
「……死ねよ糞女」
刹那、弥夜を護るように展開した殺意が視覚化する。それは、本来なら有り得ない殺意の具現化。深緑色をした粘り気のある殺意が行き場を失って猛り狂い、辺りの景色を薙ぎ払う。錆びた船の部品や廃材が、殺意に舞い上げられては壁に衝突し風穴をあける。そのまま地に落ちたかと思えば床面を軽々しく陥没させた。
「ば……化け物……!!」
瞳に浮かぶは畏怖なる念。腰を抜かした七瀬はへたり込み弥夜を見上げる。最早、その目に映るのは人と呼べるような存在では無かった。
「弥夜、やめろ」
視覚化した殺意を目の当たりにし、稀崎の時と同じだと思考した茉白。蠢く殺意が意思を持つように膨張と伸縮を繰り返していた。
「でも……!! 茉白の生きて来た過去を冒涜して、好きなだけ殴って、そんなの私耐えられないよ……!! 産まれてこなければ良かった人なんて……この世には居ないから!!」
「お前の言いたいことは解ってる、もういい」
「良い訳無い!! 助けてもらっておきながら結果が伴わなかったからって茉白のせい? 自ら抗ったの? 環境を変えようと足掻いたの? 人に縋ってばかりじゃん。笑わせんなよ。自分で戦いもしなかった奴に茉白のことを悪く言う資格は無い」
「うちが手を出さず傍観していれば、七瀬の人生はめちゃくちゃにならなかったのも事実だろ」
「はあ? 馬鹿じゃないの? なに責任感じてるの? 虐められていた子を助けて何が悪いの? 悪いのは全部こいつ、他人任せで人の後ろに隠れることしか出来ない腰抜けの臆病者」
「もう放っとけ」
「生きて来た過去を笑う奴は黙らせろって、茉白が教えてくれたんだよ? 私は貴女のことが大切。そんな大切な人を傷付けられて黙っていられる訳が無い」
茉白は弥夜の肩に手を置き、宥めるように首を横に振る。その際、拒絶するように跳ねた殺意が牙を剥く。訳も分からないまま僅かに傷付いた手のひら。茉白は傷口から垂れる血液を目の当たりにして思考を巡らせた。
「いいからやめろ、うちは大丈夫だ」
交差する視線。互いに意思をぶつけ合う。しばらく唸った弥夜は渋々と肯定すると不満げに踵を返した。へたり込む七瀬は眼中に無いと言わんばかりに無視され、倉庫内には冷たい靴音が響き渡った。
「帰るよ、茉白」
肩越しに振り返った弥夜を見て、茉白は鼓動を高鳴らせる。身形は見慣れた弥夜そのものだがまるで別人であり、淡く纏われている魔力ですら普段とは異なり過ぎていた。
──こいつ、何者だ?
今までとは明らかに違う得体の知れない雰囲気だった。共に海沿いの倉庫を出た二人は目を眩ませる程の光に遭う。
「何だろう?」
独白する弥夜の声を掻き消すように、幾つものエンジン音が重なり木霊する。瞬く間に二人を囲んだ八台の車。ヘッドライトの不快な光が全方位から降り掛かる。
「柊 弥夜と、その後ろに居るのが夜葉 茉白だ」
車から降りたスーツ姿の男が通信機でコンタクトを取る。連動するように車から降りて来た数十人が、二人に対してあからさまな敵意を向けた。
「なるほど、うち等を殺す為にもう追っ手が来たか。どう見てもタナトスの連中だな? うち等が特別警戒区域アリスへ至るのがそんなにも怖いか」
「これはこれは麗しき毒姫達。雁首揃えて深夜のピクニックですか」
男は執事さながら丁重なお辞儀をしながら嘲るような視線を二人へ向ける。一連の動作に一切の隙は無い。前へと歩み出た茉白が煽り返すように挑発的な表情を浮かべた。
「まあ、そんなところだ。丁度退屈だったから遊んでくれよ蛆虫共」
茉白が日本刀を具現化すると同時に、四台の車が消し飛んだ。何処からともなく現れた毒蟲が次々に車を切り裂き、付近にいた者達も巻き添えで無惨な姿を晒す。瞬く間に立ち込める死臭。死体を尽く啜る毒蟲は愉悦の咆哮をあげ、その身には弥夜と同じく粘り気のある殺意が纏われていた。まるで何かに飲まれているように、動き回る瞳が形容し難い嫌悪感を煽る。
「足りない足りない足りない……」
触覚を引き抜いた弥夜は断鎌へと昇華させると、力強く地を蹴って別の車を狙う。即座に切り裂かれた車の上に立ち、満月を背景に黒い髪を戦がせた。
「有り得ない……全員能力者だぞ……」
まるで殺意の奔流。潮風に混ざる血の匂いは未だ消えず。茉白と話をしていた男は目の色を変えて逃走を試みるも、毒蟲が即座に喰らい付き容易く命を奪う。弥夜は頬擦りをしてくる毒蟲を愛おしそうに撫でると、その流れで二本目の触覚を引き抜いた。
髪の隙間から覗く銀色の瞳に宿る狂気。
それはまるで──生きた骸。
四肢裂きの断鎌を両手に持った彼女は、軽々しく手中で回転させると鬼のような形相で残りの者達を仕留めた。まさに一瞬の出来事。破壊の限りを尽くす相方に、茉白は僅かながら不可解な感情を抱く。
「誰だよお前」
茉白が手を下すまでも無く男達は全滅。数十人の命が一瞬にして奪われた。
「誰って、貴女の相方である柊 弥夜だよ? 茉白のことを悪く言われて……ちょっと機嫌が悪いの」
大破し炎をあげる車を背に振り返る弥夜。空に昇りゆく火の粉を背景に二人の視線がかち合い、燃え盛る炎の音がやけに大きく木霊する。灼熱が互いの肌を灼く中、静かに飴を咥えた弥夜は一口で噛み砕いた。
──来る。
この時、何かを感じ取った茉白は即座に刀を構える。同時に飛び掛かった弥夜が、大きな弧を描いて断鎌を振り下ろした。闇に尾を引く瞳の残光。虚空を揺蕩う火花。殺意に取り込まれた弥夜は自我を失い身体を振り回す。
「何やってんだよ弥夜!!」
初撃の重さでクレーターの如く陥没した茉白の足元。即座に二本目の刀を具現化させた茉白は、間髪入れずに降り注ぐ断鎌の応酬に身を捻じ入れる。予測不能な位置から繰り出される得物の挙動や、人とは思えない衝撃の重さに形勢は傾き圧され始めた。
「おい!! しっかりしろ!!」
「茉……白……」
戦況は圧倒的不利。弥夜を遠ざける為に放たれた無数の蛇は一瞬にして切り裂かれ意味を成さず。即座に刀の毒を一滴舐め取った茉白は、救いの街で行使した力を以てして弥夜の鎮圧に臨む。なおも劣勢は続き、互角にすら至らない。縫うように地を走り撹乱させる茉白ではあるが、その速さにすら追従する弥夜は一心不乱に断鎌を振るう。
「茉白大好き……好き好き好き好き」
月明かりのみの暗い夜闇に、至る所で哭くように散る火花が皮肉にも美しく迸った。弥夜の瞳は虚ろになっており、まるで生きた骸の如く身体を酷使する。無理矢理に剣戟を切り上げた茉白は、蛇を使役して倉庫の上へと飛び上がる。そのまま息を吐き出すと昂る心を鎮めた。下に取り残された弥夜は表情一つ変えずに断鎌を手中で回転させていた。
「ねえ。降りておいでよ、茉白」
「『灰葬空虚』、『毒葬遡行《ヴェノム・トリガー》』……弥夜を止めるぞ」
呼び掛けに応えるように刀に纏わり付いた漆黒の魔力。刀は、茉白から魔力を吸い取っているのか悦びに満ちた鼓動を晒す。苦痛の滲む表情が力の代償を物語っていた。
現れたのは弥夜。映像内で見た顔にも関わらず、七瀬は明白な恐怖を見せる。銀色の瞳で揺らぐ冷たい殺気が、自身が映像で見たそれとは余りにも異なっていた。掛け離れ過ぎていた。
「何発殴れば気が済むの? それ以上私の相方に触んなよ糞女」
殺意を宿した声に場の雰囲気が一変し、まるで鑢のような刺々しい空気が漂い始める。七瀬を抉るように正視した弥夜はこれまでに見せたことの無い冷たい表情をしていた。
「弥夜……お前……」
「ごめん、やっぱり心配で後をつけて来たの。周りは私達をよく思わない人達だらけだから、茉白が何かに巻き込まれてしまうんじゃないかって」
「別に巻き込まれても良くない? こんな奴が死んでも誰も悲しまないでしょ」
掴まれた腕を振り払った七瀬。弥夜は嘲笑を浮かべて目を細めると首を横に振った。
「私が悲しむ。夜羅が悲しむ。戦いもしなかった奴に人の過去を冒涜する資格は無い。どんな過去があろうと、それでも茉白は歯を食い縛って生きて来た。今はね? 茉白は私の相方なの」
「相方? 私の人生を台無しにしたこいつが? 笑わせないでよ。傷の舐め合いをして楽しい?」
「私達は辛くとも共に生きる選択をしたの、戦うことを選んだの。寄り添うことを傷の舐め合いだと言うのならそれで構わない。でもね? 相方をこんな風にされて黙っていられるほど、私は温厚じゃないよ」
救いの街の地下で自身が吐いた言葉と同じであることに気付き、茉白は目を見開いた。
「……死ねよ糞女」
刹那、弥夜を護るように展開した殺意が視覚化する。それは、本来なら有り得ない殺意の具現化。深緑色をした粘り気のある殺意が行き場を失って猛り狂い、辺りの景色を薙ぎ払う。錆びた船の部品や廃材が、殺意に舞い上げられては壁に衝突し風穴をあける。そのまま地に落ちたかと思えば床面を軽々しく陥没させた。
「ば……化け物……!!」
瞳に浮かぶは畏怖なる念。腰を抜かした七瀬はへたり込み弥夜を見上げる。最早、その目に映るのは人と呼べるような存在では無かった。
「弥夜、やめろ」
視覚化した殺意を目の当たりにし、稀崎の時と同じだと思考した茉白。蠢く殺意が意思を持つように膨張と伸縮を繰り返していた。
「でも……!! 茉白の生きて来た過去を冒涜して、好きなだけ殴って、そんなの私耐えられないよ……!! 産まれてこなければ良かった人なんて……この世には居ないから!!」
「お前の言いたいことは解ってる、もういい」
「良い訳無い!! 助けてもらっておきながら結果が伴わなかったからって茉白のせい? 自ら抗ったの? 環境を変えようと足掻いたの? 人に縋ってばかりじゃん。笑わせんなよ。自分で戦いもしなかった奴に茉白のことを悪く言う資格は無い」
「うちが手を出さず傍観していれば、七瀬の人生はめちゃくちゃにならなかったのも事実だろ」
「はあ? 馬鹿じゃないの? なに責任感じてるの? 虐められていた子を助けて何が悪いの? 悪いのは全部こいつ、他人任せで人の後ろに隠れることしか出来ない腰抜けの臆病者」
「もう放っとけ」
「生きて来た過去を笑う奴は黙らせろって、茉白が教えてくれたんだよ? 私は貴女のことが大切。そんな大切な人を傷付けられて黙っていられる訳が無い」
茉白は弥夜の肩に手を置き、宥めるように首を横に振る。その際、拒絶するように跳ねた殺意が牙を剥く。訳も分からないまま僅かに傷付いた手のひら。茉白は傷口から垂れる血液を目の当たりにして思考を巡らせた。
「いいからやめろ、うちは大丈夫だ」
交差する視線。互いに意思をぶつけ合う。しばらく唸った弥夜は渋々と肯定すると不満げに踵を返した。へたり込む七瀬は眼中に無いと言わんばかりに無視され、倉庫内には冷たい靴音が響き渡った。
「帰るよ、茉白」
肩越しに振り返った弥夜を見て、茉白は鼓動を高鳴らせる。身形は見慣れた弥夜そのものだがまるで別人であり、淡く纏われている魔力ですら普段とは異なり過ぎていた。
──こいつ、何者だ?
今までとは明らかに違う得体の知れない雰囲気だった。共に海沿いの倉庫を出た二人は目を眩ませる程の光に遭う。
「何だろう?」
独白する弥夜の声を掻き消すように、幾つものエンジン音が重なり木霊する。瞬く間に二人を囲んだ八台の車。ヘッドライトの不快な光が全方位から降り掛かる。
「柊 弥夜と、その後ろに居るのが夜葉 茉白だ」
車から降りたスーツ姿の男が通信機でコンタクトを取る。連動するように車から降りて来た数十人が、二人に対してあからさまな敵意を向けた。
「なるほど、うち等を殺す為にもう追っ手が来たか。どう見てもタナトスの連中だな? うち等が特別警戒区域アリスへ至るのがそんなにも怖いか」
「これはこれは麗しき毒姫達。雁首揃えて深夜のピクニックですか」
男は執事さながら丁重なお辞儀をしながら嘲るような視線を二人へ向ける。一連の動作に一切の隙は無い。前へと歩み出た茉白が煽り返すように挑発的な表情を浮かべた。
「まあ、そんなところだ。丁度退屈だったから遊んでくれよ蛆虫共」
茉白が日本刀を具現化すると同時に、四台の車が消し飛んだ。何処からともなく現れた毒蟲が次々に車を切り裂き、付近にいた者達も巻き添えで無惨な姿を晒す。瞬く間に立ち込める死臭。死体を尽く啜る毒蟲は愉悦の咆哮をあげ、その身には弥夜と同じく粘り気のある殺意が纏われていた。まるで何かに飲まれているように、動き回る瞳が形容し難い嫌悪感を煽る。
「足りない足りない足りない……」
触覚を引き抜いた弥夜は断鎌へと昇華させると、力強く地を蹴って別の車を狙う。即座に切り裂かれた車の上に立ち、満月を背景に黒い髪を戦がせた。
「有り得ない……全員能力者だぞ……」
まるで殺意の奔流。潮風に混ざる血の匂いは未だ消えず。茉白と話をしていた男は目の色を変えて逃走を試みるも、毒蟲が即座に喰らい付き容易く命を奪う。弥夜は頬擦りをしてくる毒蟲を愛おしそうに撫でると、その流れで二本目の触覚を引き抜いた。
髪の隙間から覗く銀色の瞳に宿る狂気。
それはまるで──生きた骸。
四肢裂きの断鎌を両手に持った彼女は、軽々しく手中で回転させると鬼のような形相で残りの者達を仕留めた。まさに一瞬の出来事。破壊の限りを尽くす相方に、茉白は僅かながら不可解な感情を抱く。
「誰だよお前」
茉白が手を下すまでも無く男達は全滅。数十人の命が一瞬にして奪われた。
「誰って、貴女の相方である柊 弥夜だよ? 茉白のことを悪く言われて……ちょっと機嫌が悪いの」
大破し炎をあげる車を背に振り返る弥夜。空に昇りゆく火の粉を背景に二人の視線がかち合い、燃え盛る炎の音がやけに大きく木霊する。灼熱が互いの肌を灼く中、静かに飴を咥えた弥夜は一口で噛み砕いた。
──来る。
この時、何かを感じ取った茉白は即座に刀を構える。同時に飛び掛かった弥夜が、大きな弧を描いて断鎌を振り下ろした。闇に尾を引く瞳の残光。虚空を揺蕩う火花。殺意に取り込まれた弥夜は自我を失い身体を振り回す。
「何やってんだよ弥夜!!」
初撃の重さでクレーターの如く陥没した茉白の足元。即座に二本目の刀を具現化させた茉白は、間髪入れずに降り注ぐ断鎌の応酬に身を捻じ入れる。予測不能な位置から繰り出される得物の挙動や、人とは思えない衝撃の重さに形勢は傾き圧され始めた。
「おい!! しっかりしろ!!」
「茉……白……」
戦況は圧倒的不利。弥夜を遠ざける為に放たれた無数の蛇は一瞬にして切り裂かれ意味を成さず。即座に刀の毒を一滴舐め取った茉白は、救いの街で行使した力を以てして弥夜の鎮圧に臨む。なおも劣勢は続き、互角にすら至らない。縫うように地を走り撹乱させる茉白ではあるが、その速さにすら追従する弥夜は一心不乱に断鎌を振るう。
「茉白大好き……好き好き好き好き」
月明かりのみの暗い夜闇に、至る所で哭くように散る火花が皮肉にも美しく迸った。弥夜の瞳は虚ろになっており、まるで生きた骸の如く身体を酷使する。無理矢理に剣戟を切り上げた茉白は、蛇を使役して倉庫の上へと飛び上がる。そのまま息を吐き出すと昂る心を鎮めた。下に取り残された弥夜は表情一つ変えずに断鎌を手中で回転させていた。
「ねえ。降りておいでよ、茉白」
「『灰葬空虚』、『毒葬遡行《ヴェノム・トリガー》』……弥夜を止めるぞ」
呼び掛けに応えるように刀に纏わり付いた漆黒の魔力。刀は、茉白から魔力を吸い取っているのか悦びに満ちた鼓動を晒す。苦痛の滲む表情が力の代償を物語っていた。
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