最強の魔道師に成り上がって、人気者のアイドルをやってるんですけど、燃え尽きて死んじゃうぐらいやらないとダメな前のめりな性格なんです。

ちちんぷいぷい

文字の大きさ
16 / 51

ミストラルの巫女

しおりを挟む
敵意が感じられない相手に対して
危険だからと心配している他の魔道師達に
待つように指示をし、少年から信頼を得る為に
1人で近づく事を決めたアリアは馬で傍に駆け寄り
降りて、近づく。

「えっへんっ、おっほん、ごほん、ごほん
私はアリア・マーテルって言うの
信じてもらえるかわからないけど
こう見えても水の巫女なの、凄いでしょ
それで君は?」

まだ若い自分が巫女ではないと
少年に疑われてしまわないように
わざとらしく、少しだけ偉そうに咳払いをしてしまうが
慣れてないせいか、少しむせてしまう。

「ギリアム、ギルって呼んでくれていい」

厳しい雰囲気を漂わせている
少年が思ったより素直に名前を教えてくれたので
アリアは凄く、うれしそうしているのが青い瞳に明るく浮かんでしまい
疑いもせず、自分を巫女と認めてくれた事に凄くほっとしている。

「え~と、そうそう
ギルくんは、そこで何をしているのかなあ
お姉さんに教えてもらえる?」

敵か味方かも不明で素性のまるでわからない
少年にギルくんと馴れ馴れしくして
自分に何を話したいか、聞きだそうとするが
冷静沈着を装っているが、明らかに焦っている
ギルがそっけなく、遮るようにアリアを突き放す。

「まっ、いいか、急いでるんだ、時間がない
火の巫女が危ない、君の力を貸しほしいんだ」

指につけていた指輪を慎重にはずして
真っ白な手のひらの上に置いて、アリアに差し出す。

白銀の指輪には輝くような、高価な宝石と見間違えてしまうような美しい
魔石が埋め込まれており、魔道師なら誰でも
ひと目で解かるが、透きとおるような濁りの全くない
美しさから、一国の最高位の魔道師で
選ばれた特別な存在の巫女であるアリアですら
青い魔石としては、これまで見た事もないぐらいの質の良さだ。

「うそ、ギルくん、これって、命の石だよね……
どうして、君がこんな物を持ってるの」

差し出された魔石は幾世代にも渡り
強力な魔道師が魔力を注ぎ込まないと
できないような魔法を使う上での触媒だが
透き通るまでに、美しく輝くまでのものは一国の王ですら
手に入らないような値段などつけることが出来ないぐらい
希少な物で、命の石と特別に言われている。
信じられないような高価な物を
当然の様に差し出す少年の言った事に嘘はないと判断し
事態の深刻さに気付いたアリアの顔色が変わる。

「ソフィアに何があったの、教えて」

王や貴族ですら手の届かないような希少価値のある
魔石を所持していると言う事もあるが
少年から感じる、巫女である自分を凌ぐような
常人離れした魔力から、かなりの力を持つ
魔道師である事は間違いない。
魔道師が無償で、二度と手に入らないような特別な
命の石を差し出してまで、水の巫女である自分に
誰か命の危機を告げる事について聞かずとも
実はアリアにはギルの話が無言で通じている。

希少な青い石を使うよう差し出す事の意味に
ついては、すぐに想像がついたアリアが思わず、驚いて
教えてとだけで言葉を省略してしまったのはそこからは
水の巫女であるアリアとミストラルのごく限られた
秘密を知りうる立場の魔道師だけが解かる話だからだ。
少年は決して知るはずもない事について知っている上で
希少な命の石を差し出してまで
ソフィアの命にかかわる様な危機を救うように
言っているとしか、考えられない。

「君はなんで知ってるの、どうして……」

アリアが尋ねた事は水の巫女アイリスが残した
神の力を直接行使する、直接盟約呪文(ディレクタナル)の事だ。
運命の四姉妹と言われている、最初の巫女の一人であるアイリスの残した
古代魔法の存在については極秘にされ、口外は厳禁となっている。

「あいつが残したものを、僕が知らないわけがない」

さっきから、子供らしくなく、常に冷静沈着だった少年が
一瞬だけ悔しさをにじませた様な人間らしい感情を始めて見せた後
少し哀しい陰のある表情を浮かべたようにアリアには見えた。

「あいつってーー」

少年がミストラル公国の最大の秘密の一つを知っていて
今は精霊教会で聖女として、崇拝の対象となっている
水の巫女アイリスが後の為に残した古代魔法の事に
ついて詳しく知っているのは間違いなく
しかも、そのアイリスの事を、あいつと言ったとしか思えないが
少年の心の奥にずっと隠していただろう
つらそうな表情を見逃さなかったアリアは無理に聞き出す事はできない。

「わかった、これ以上は無理に聞かないね。
でも、この指輪は借りるだけだからね、必ず君に返すから」

少年の手から指輪を受け取ると無くさない様に
優れた癒し手である水の巫女として
数え切れない程の人を強力な魔力で癒し救ってきた
掌から伸びている繊細な指の一つにすぐに差し込むが
少年の話の内容に驚いて気を取られていたためなのか
うっかりあわてて、女性にとって特別な左手の薬指につけてしまい
場所を間違ったのに気付くと恥ずかしげに照れた表情を浮かべて
あわてて、右手の中指に指輪をつける位置を差し替える。

「えっと、おほんっーー 間違えちゃった。
指輪は将来ギルくんが、幸せにしたい人にあげないとね」

アリアとソフィアは同盟国の巫女同士と
言う関係でもあるが、二人とも元は孤児で
精霊の巫女としての才能を見出され
教会に拾われた似たような境遇を持っていて
子供の頃から、教会を通じ交流のあるとても気の合う仲の良い友人だ。
別れる時には絶対に守ると誓い合った大切な約束も交わした
ソフィアの身を案じると急がなければならない。

ミストラル軍としても、東方から攻めて来た異国の侵略者と
戦う為に、ラーラントが援軍として、駆けつけたときに
敵が畏怖するような強大な魔力を見せ付け
全力で戦ってくれた公国の恩人である、ソフィアの身に危険が
迫っているのは、今後を考えても、大変な事なのは間違いない。

「あれ…… なんで君はソフィアのこと……う~ん
まっいいか、忘れて……」

少年がソフィアの事を、なぜ知っていて、ここまでするのかの理由も
気にはなるが、目の前の少年にそれを聞いても
込み入った話に答えるとは思えない。
返すと言った指輪を受け取りに来てほしいと
約束をして、どこかで話す機会が、またあればと願うしかない。

「じゃあ、ばい、ばい、またね、ギルくん」

別れ際に少年の名をまた馴れ馴れしく
くんずけで呼び、頭をナデナデして
にこっと微笑んだ後、少年を背にして
後ろに振り返ると、これから起こる事を考えて
少しつらくなってしまい、いつものように
うつむきそうになる顔を我慢して、
ソフィアとの大切な約束を果たす事だけを
胸に強く誓って、馬に飛び乗り少年の前から立ち去っていく。

白い髪の魔道師はいつの間にか
ミストラル公国軍の前から消え去った。

少年は自分への距離感をあっというまに縮めてしまい
有無を言わせない子供の扱いに慣れたような言動から
アリアが子供好きなのは強く感じたが
それだけではなく、自分の頭をなでた
その手が最後に離れるのをためらい
少し辛そうにしていた事を思い出して
子供に対して何か、償うような心の痛みを隠し持っていて
それが、あいつとアリアがどこか似ているとも感じていた。

アリアは事の重大さを、宮宰のデュランに伝えて
進軍を急ぐように報告するだけでなく
1000年使用される事がなかった
秘密にされている古代呪文を詠唱し執行するために
必要な、宝物(ほうもつ)の使用許可を願い出るつもりだ。

報告を受けたデュランは急いで
騎兵を主力とした決死隊を組織して
精鋭揃いの騎士達をアリア達、魔道師隊の護衛につけ
ステリオ渓谷に先に向かわせる決断を下す。

公国の恩人であるソフィアの危機を救うために
決死隊に護衛されたアリア達、魔道師隊が目的地に向けて、出発した後
ミストラル公国軍も進軍を再開した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...