最強の魔道師に成り上がって、人気者のアイドルをやってるんですけど、燃え尽きて死んじゃうぐらいやらないとダメな前のめりな性格なんです。

ちちんぷいぷい

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ステリオ渓谷は、山脈が途切れている場所らしく
むき出しなった、硬そうな岩肌が、両側に見えている。

切り立った岩壁で、挟まれている渓谷は
戦場となれるほどの、大きさはあるが
一国の規模の軍隊が、兵士達を配置すれば
通行が出来ないように、封鎖してしまうのは簡単だ。

エリサニアの中央を占めている
ラーラント王国や、東側のトーラル王国から
西側のシーザリア王国や、北にあるミストラル公国へ
向かうには、ステリオ渓谷を通り抜けるしか
整備された、正式な道はない。

片側の切り立った崖のすぐ下を流れている
大河ヴィーズは、渓谷の先で
北から流れてきたライナルと合流して
南にある、海へ向かっている。

川の流れが、大きく方向を
変えてしまうような場所に、近づいているため
渓谷は、横にも、人が気付かないぐらいの
わずかだが、少しだけ、傾いていて
どこも、同じ高さになってはいない。

渓谷の傾きは、目に見えてわかるような
ラーランドへ向かっての、緩やかな傾斜だけではない。

渓谷の、わずかばかりの傾きのため
偏った場所を、ずっと流れ続けていた
水は時間をかけて、川底を深く削ってしまって
渓谷の中に、川でつくられた、もう一つの谷として
河谷(かこく)をつくっている。

他の場所より、かなり低い所を
流れている水は、近づいて、見下ろさないと
上からは、隠れてしまって、見えない。

渓谷に入ると、あわせる様に
川幅も、狭くなってしまうので
流れが、他の場所より、速くなっていて
水が流れている所は、長い年月をかけて
深く窪んでしまっていて、崖の下だ。

重要な交通路を、行き交う人々の為に
給水や、水浴びをなどをして
疲れを癒すための、休息できる場所が
崖の下には、何箇所か、設(もう)けられてはいる。

近づくと、下に見えてくる
水面にも、いけるようにはなっていて
自然に削られて、出来上がっていた
崖の形に、逆らわないように、うまく利用して
下りていける道が、人手で作られていた。

坂道が、いつ、造られたかまでの
正確な時期は、いまとなっては、わからない。

伝説のエリサニア帝国時代より
ずっと、前から、あると伝わっている。

川は、生命の誕生を祝福し、命を大切に育てるのに
喜びを感じるという、水の女神がいる場所として
聖なる場所とされ、生死の狭間として
重要なものだと考えられてきた。

精霊教会では、子供が誕生したときに
洗礼として、水をかけたり
巫女が精霊に向かっての
神託に望むときに
水浴びをして、全身の身を清めるのも
同じように、水のように廻っているとされる
生命を称え、祝福する意味が、あるのだとされている。

隠された意味を、追い求める余り
命という理(ことわり)こそが
理想なのだと、考えているからだと
説明するような、変り者もいる。

そして、忘れてはならないが
水の辺(ほとり)は、油断してはいけない
死者の魂が、冥界に向かう入り口として
人々に、常に恐れられなければならない場所だ。

ラーラント親衛隊から、少し離れた場所で
清らかで、透き通った、水が静かに流れをつくっている。

「ごくごく、ぷは~、うめ~え!」
「こりゃ、生き返る~」
「身体に染みんで、いきやがる!」

「副隊長、こりゃ、ほんとに新鮮で、綺麗(きれい)な水ですぜ」

給水を支持した、兵士達が
川から水を、汲(く)み上げてきたようだ。

喉が渇いてしまったのか
水桶(みずおけ)に移し変えて
もってきて、柄杓(ひしゃく)のようなものを使って
皆で、うまそうに回し飲みをしている。

指示どおり、水を運び終えてしまい
国王親衛隊の副隊長ラッセルに
次の指示はもうないのか、確認するために
近づいて来て、汲んで来た水を差し出した。

「ささ、せっかくだし、副隊長も、どうぞ」
「おう、はええな」

「そりゃもう、急げって話ですから」
「たしかに、こりゃ、うめえな」

「あの~、副隊長…… 
俺も、怪我してる仲間を、そろそろ、見てやりてえんですが……」

大乱戦の結果として
親衛隊の兵士からも、怪我人が、多く出ていた。

兵士達が、まず、見知った仲間を心配するのは
よくわかっている。

国王の為に危険を顧みないで
皆で生死を供にする、親衛隊は
兵士達の結束を、なによりも
重んじて来たからだ。

親衛隊長である、王子のベルナルドから
ソフィアの事を諦めないで
最後まで、出来うる限りの事をしてほしいと
命令というよりも、ラッセルに願いとして
託していった。

ラッセルだけでなく、ベルナルドにしても
助かる見込みがあるとは思えないような
ソフィアを、最優先にすることが
誤りではないかとは、感じてはいる。

いくら、相手が精霊の巫女で
民衆の敬愛を集めているからといっても
助かる者を、後回しにしてしまうのは
指揮官として、正しい事なのか、ずっと
難しい判断を、し続けなければならない。

それなりに、精神的に追い込まれてもいる。

たった一人で、危険を顧みず
ミストラル軍を出迎えにいった
ベルナルドの願いがなければ、さすがのラッセルも
多数の親衛隊の兵士達が、想う気持ちを考えると
自分の感情を、押し切ることに、思い悩んだかもしれない。

「死ぬわけじゃないなら、後にしろ」

ずっと、なんとからないかと
頭を使って、方法を考えていはいる。

ラッセルも今回も自分の感情が
間違っていないと信じたい。

少しでも暇になると、ラッセルは
かなり後ろで、ソフィアへの癒しを
続けている、魔道師達の様子を確認しにいっていた。

疲れ果てて、その場に倒れそうになる
魔道師達を見ていると
ベルナルドが、間に合うとは、正直、とても思えない。

「へばっている、魔道師達を介抱してやれ!」

考え抜いても、綺麗な、汲みたての新鮮な水と
食べ物を切らさないことぐらいしか、思いつかない。

「肩だ、ぼやぼやしてないで、肩を、貸してやれ!」

親衛隊には、使いたくても魔法は使えない。

あとは、気休めにしか、ならない様なことしか
できる事は、残されてはいない。

意識を失いそうになり、朦朧(もうろう)と
しはじめた、魔道師達の力を少しでも
長く、繋ごうと、肩を貸すようにするぐらいだ。

「ほら、肩につかまりな、魔法使いのだんな」
「すまないな……」

「いいってことさ」
「俺も、仲間を助けられなかったしな、気持ちはわかるさ」

「しかし、たすか…… おっと、いっちゃいけねえな」
「ああ、ありがとう」

親衛隊の兵士が、肩を貸そうとすると
休んでいた、魔道師が、様子を見ていたのか
交代しようと、近寄ってきた。
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