最強の魔道師に成り上がって、人気者のアイドルをやってるんですけど、燃え尽きて死んじゃうぐらいやらないとダメな前のめりな性格なんです。

ちちんぷいぷい

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運命の姉妹

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急な坂を降りた崖の下には
空から差し込んでいる光の下で
透き通った、清らかな水が流れている。

水辺には、命をやさしく包み込むような
やわらかな空気が、満ちていた。

「う~ん、すごく気持ちいいぞ」

「アレクシス様、少しは、お気を引き締められよ!」

「フェステル、わっ、わかってるぞ、でも……」

アリアは、坂を降りた後
水辺に、黙ったまま、ずっと立っている。

「巫女、そろそろ、よろしいですかな」

「はい、待たせてすみません」

「さて、王大使さまは、ここで、ご遠慮くださりますよう」

ミストラル公国と、水の精霊教会には、守らねばならない秘密がある。

「わかったフェステル、後を頼んだぞ」

「申し訳ござりませぬ」

「ソフィア様、いや…… ソフィアを頼みます、アリア様」

「はい、私も、気持ちは同じです」

抱きかかえている、ソフィアの身体が
空気のように軽くなる。

「どうか、お手を下げて、お離しくださりますように」

腕の中にある
ソフィアから手を離すと
フェステルの魔法で、宙に浮いたままだ。

最大の秘密の一つとされている
古代魔法を執行する場には
ミストラルでも選ばれた者しか
立ち会えないと、告げられている。

ベルナルドに、託されたのは
ヴィーズの水辺に至るまでの
短くはない時を
ソフィアへの想いをこめて
運ぶところまでだ。

「どうか、救ってやってください」

「きっと、ソフィアの魂を、取り戻してみせます」

「アリア様の、お力を信じています」

「はいっ」

ミストラルの魔道師達がアリアを
必死で止めようとしていたのを
傍で見ていたので
ベルナルドも、アリアが
命がけなのは、わかっている。

「我らも、命がけで巫女の供をいたしまする」

ソフィアを救うための古代魔法の執行は
ミストラルの魔法研究による
英知の全てをかけて、行われる事を
王太子ベルナルドを通じ
ラーラント王国に対して
君主であるアレクシス公の名に
かけ誓うという宣言がなされる。

「ミストラルの名にかけ、ここは、我らにお任せを」

アレクシスの後ろで、続いて
アリアとフェステルも、跪ずく。

「アレクシス、ここは頼む……」

「はい、我が命に替えても、必ずや」

シーザリアとの同盟の可能性を自ら葬り去って
自ら同盟を維持し、逃げ道を塞いだにもかかわらず
決戦への援軍が遅れてしまったのは、大失態だ。

王太子ベルナルドを、命の危険にさらしてしまい
その上、ラーラントで、敬愛を集めるソフィアを
失うようなことになれば、同盟が破綻する不信感へと
つながりかねない。

戦乱の世は、いつどうなるかは、誰にもわからない。

ラーラントは他国を積極的に侵略するほどの
余裕はないが、大国シーザリアは違う。

同盟を組んだとしても、力の関係を考えると独立は危うい。

ミストラルも、シーザリアとの同盟を、一時は考えたのだ。

今は、シーザリアと、ラーラントが対立していても
追い詰められたラーラントが、シーザリアとの間で
なんらかの協力関係を築けば
公国は窮地に陥ってしまう。

ミストラルはラーラントとの同盟関係を
より深めたいと考えているのを
はっきりと示すためにも
危険な魔法の執行に
君主のアレクシス公が、最後まで立ち会い
先頭に立ち、一国の命運を賭ける。

「国王陛下には、ベルナルド様から
我らの決意をどうか、お伝えください」

「偽りなき想いの全て
我が胸に、深く受け止めずにはいられません。
父である国王に必ずや、貴国の揺るぎない決意を伝えましょう」

同盟は、上辺だけの飾り立てた
美しい言葉だけでは成立しない。

ラーラントの誇りにかけ
供に命をかけて戦うことだけが
同盟国の王太子としての責任だ。

出来ることは、一つだけしか残されてはいなかった。

「ならば、我が剣に、想いの全てを託さん!」

命がけで供に戦い抜く、決意をとして
腰から、自らの分身でもある
剣を抜くと、大地に突きたてた。

運命の神の像が彫られている剣に
祈らずとも、想いの全ては、託されている。

ベルナルドは、ソフィアを、しばらく見つめたあと
アレクシス達の姿を、再び見ることもなく
川の流れから遠ざかり、坂を登って、この場を去っていった。




ミストラルには初代、水の巫女、アイリスが残したとされている
巫女の魔力を最大限まで高める白銀のティアラとシルバーロッド
そして、強力な魔法の糸で編まれた
白いローブが大切に、守り抜かれてきた。

「巫女に、水の精霊アクエラのご加護を……」

「アクエラのご加護を……」

フェステルとアレクシスが、魔法の成功を精霊に祈る。

「アリア、遠慮はいらんぞ
闇の支配者どもが出ようなら
我が、刀で、封じて見せるぞ」

アレクシスは、神話の英雄のように
闇の神々でもある魔王達とさえ、戦ってみせる、意気込みだ。

「さすが、我が主じゃ、良くいいなされた、では遠慮なく……」

「あっ、あれ、見、見えんぞ、くそっ、闇の支配者どもめ、こんなのは卑怯だぞ!」

「ほっ、ほっ、ほっ、アレクシス様には、まだ、お早いかと存じまする」

アレクシスは何者かの魔法で、暗闇の底に突き落とされてしまったのだ!

「では、巫女、はじめなされ」

「はい」

アリアは身に着けているものを全て脱ぎると
川に入水し、ステリオ渓谷を流れる大河ヴィーズの
清らかな水で、全身を清める。

「水の神ステイア、巫女である、わが身に力を……」

川の水と交わる、擬似的な婚姻の儀式を通して
ヴィーズに流れる水の神ステイアの力を身体に注ぎこむ。

透明な水を、合わせた両手ですくうと
手に取ったまま川から上がって
ソフィアの傍で
口に含んだアリアは
ソフィアにそっと口づけをし
清らかな水を分け与え
自分と同じように、潤す。

この世の聖なる川の水で
死者の喉を潤すことは
蘇るときに、魂の記憶を失わせる
冥界を流れる川の水を飲むことを防ぐためだ。

「約束したんだからソフィア……
きっと救ってみせるから、待ってて」

「……」

ソフィアが微笑んで、応えたような気がした。

運命の四姉妹と呼ばれている
はじまりの巫女いらい
4人の全ての巫女が
伝説の帝国時代に
神託が行われたという
聖なる神殿に、集った事は一度もない。

最初の精霊の巫女達が
運命の四姉妹と特別に呼ばれているのは
運命の神に愛され加護の下に
あったとされているからだ。

運命の四姉妹の結束が
闇の頂点に立っていた存在の魂をゆさぶり
世界の全てを変える
きっかけになったと伝説では伝えられている。

同盟を組んでいるミストラルと
ラーラントの巫女同士として
供に同じ戦場で、一緒に戦ったこともある
アリアとソフィアは
互いの運命を理解しあえる
かけがえのない姉妹同然だ。

「水の神ステイア、冥府を守護する闇の支配者に、討ち勝つ力を」

アリアの指には、白銀の指輪に埋め込まれた
青く透き通った魔石が、差し込まれている。

「うむ、巫女、おやりなされ
このフェステルめが、冥界まで、お供いたしまずぞ!」

「な、なんだ、こ、この闇の支配者どもめ
アリア、こちらはまかせるんだ、遠慮はするな」

アレクシスは、手ごわい暗闇と戦っていた。

「水の精霊アクエラよ、全てを捧げる
覚悟の巫女に、大いなる、ご加護を!」

この先は何が起きるか全くわからない。

フェステルも、魔力を高めるための
精霊への祈りに入る。

エリサニアの魔道師が、魔法を執行する時は
精霊への祈りを捧げるのと同じように
二つの掌(てのひら)を合みわせたあと、
左右の指を隙間無く、交互に組み合わせて
胸の前で、しっかりと握り合わせる。

祈りの姿勢を取ったとき
身体から伸びている両腕の先で
にぎり合わせた手が円を描く。

「ソフィア…… いくよ」

アリアは、一糸纏わない姿で
身体のぬくもりを伝え
ソフィアを強く抱きしめた後
頬を合わせて、蘇らせようとする相手と
身も心も、一つになろうとする。

運命による、死者を救うため
自らも死して、魂となり、闇が支配する
冥界にむかわなければ
救う手が届くことはない。

戻ってこれる、保障など、どこにもない。

青い魔石の指輪だけでなく
最後にもう一つだけ魔法を執行するための触媒が必要だ。

救いたい相手のために、命を捧げるほどの想い……。

「……」

「うん、今から迎えにいくからね、待っててソフィア」

何かが聞こえたのか、アリアの青い瞳が
はきはきとした、元気さを取り戻し明るくなった。

ソフィアの待ってるという声が、たしかに聞こえたのだ。
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