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勇士
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ステリオ渓谷で、傷ついた兵士達の
手当てをしていた、ラーランド軍の前に
宮宰デュラン自らが、率いて来た
ミストラルの援軍が到着した。
全ての存在を、跪かせるため
暗黒で覆いつくして、押しつぶすような空の下で
ミストラル軍の動きが到着してすぐに
あわただしくなっている。
「魔道師隊は一箇所に集めて、動かすんじゃない
我等の兵に出来るだけ手伝わせて、楽をさせるんだ、余計な事をさせるな」
「はっ、癒しのみに専念させます、デュラン様」
デュランは、白い髪の少年から話を聞いた
アリアの報告から、被害の大きさを予想し
負傷者への癒しを行わせるため
魔道師達全員を、先行して送り込んでいた。
聖職者でもある魔道師達は
亡骸に弔いの祈りをかけることすらできないで
近くに集まっている負傷者を、見つけては癒しを行っている。
リオルドの報告で、癒しを行う魔道師達を一箇所に集めたくても
予想より多い負傷者を運べるだけの人が不足していて
魔道師達の方が、動くしかなくなっているのはわかっていた。
「魔道師達に最小限の癒しをするようには指示はしているのか」
「リオルド様が、されているようです」
「そうか、さらに徹底させておくんだ」
「はい」
「魔道師達には無理をさせるな
できるだけ、普通の手当で、間に合わせるんだ」
「はっ」
「癒しを優先するのは助かりそうな者からだが、集めた負傷者達からの話も、しっかり聞くんだ」
「なぜですか、デュラン様」
「特別に優先して助けなければならん者も、いるはずだ」
「なるほど、それはたしかに」
傷ついた兵士の数が余りにも多すぎて
このままでは、いつまで、魔道師達の魔力が持つかは、わからない。
「魔道師達の下へは、我が兵を使って負傷している者を運ばせるんだ」
「はい」
「馬でも、肩でも、なんでいい、効率よく、運べそうな物を使え」
「はい、親衛隊の大盾も使わせます」
「そうしろ、無駄な労力は使うな、頭を使え」
ミストラルの親衛隊が持つ、濃く深い青色をした大盾までも
担架にして、負傷者を運ぶようだ。
「傷が深くて、動かせない者も探しだして
見つけ次第、その場に、兵士を行かせて、傷の手当をさせろ」
「はっ」
デュランは負傷者が多すぎて、人が不足している
ラーラント軍にはできなかった
援軍として来た、無傷で元気な、ミストラル軍の兵士達を
全て使い、出来うるかぎりの負傷者を救うつもりだ。
ステリオ渓谷まで、急いで来た疲れはあるだろうが
戦ってもいない、ミストラルの兵士達は、元気だ。
「我々は無傷だ、必要な物は馬も含めて、全て出すんだ」
「馬までですか、我々の分は残されないのですか」
デュランには兵士だけでなく、貴族に至るまで
足を怪我し、歩いて帰ることも
ままならないものが、大勢いるとの報告を受けていた。
「そうだ、全て出すんだ、我々は、その気になれば
何も食わずに、水だけで、歩いてでも帰るぞ」
最低限のものは近隣の町や村から徴収して
無事に帰れるのだが
出し惜しみは一切しないという意思を
徹底させるために、大袈裟で
わかりやすい指示を、わざと出している。
「我が軍が急いで戻れるよう、公国に支援のため
伝令の幻獣を使わせます」
「いい、それは、すでにライナに、伝えさせている」
「近隣からの応援はまだか」
「既に、仰せのとおり、町や村に、伝令は向かわせております」
「遅いな、早く来た者には、褒美(ほうび)を出す事は伝えたのか」
「はい」
「なら……」
「次は、いかにいたしましょうか」
「いいから、レッセフェルト、お前も行くんだ」
「はっ?」
大まかな指示を出せば、細かい所は
自らの力で、普段から領地を治められるだけの
実力を持っている、貴族達が
全て、自分で考えて、問題なくこなしてくれるはずだ。
「ここで、ずっと、跪いているつもりか?」
「ーーはっ、なるほど、これは失礼」
跪いていた配下の騎士は貴族で
主君との契約の下に、引き連れてきた
自らの軍で、陣頭指揮をするために
馬に飛び乗ると、待っていた
勇士を引き連れて、急いで戻っていった。
「戻るぞ、コールスロー」
「ウィ、レッセフェルト爵」
貴族は戦争で命がけで戦う代わりに
王と契約して、領地を与えられている。
同じような、全身の鎧姿の勇士は
貴族の領地の一部を、任されているので
利害関係もあるのだが、そういった上下の関係ではなく
生死を供にする盟約を結んだ、盟友といった間柄だ。
貴族に、とっては、武勇は当然だが
知恵に優れた勇士を盟友に、つけることが何よりも大事だ。
この世界では常識として
天才的な勇士ほど、なぜか変わり者が多い。
評判が悪い貴族には、優れた勇士は
近寄りたがらないので
貴族にとっては、自分の優位を
わかりやすく、周囲に誇示してくれる、大切な存在だ。
レッセフェルト伯爵が空を見上げて
立ち止まると、コールスローも傍で待っている。
二人の呼吸はピッタリだ。
「しかし、不気味な空だな、コールスロー」
「ウィ、レッセフェルト爵」
「だが、我等の前には敵ではないな」
「ウィ、レッセフェルト爵」
「……お前は、それしか言えんのか」
「ウィ、レッセフェルト爵」
「こんなときぐらい普通に話せんのか、コールスロー」
「ウィ、レッセフェルト爵」
「頑固な奴だ、全く……」
「ウィ、レッセフェルト爵」
「もう、よいわ、行くぞ、はあっ!」
「ウィ、レッセフェルト爵」
かなり変わっているが、勇士コールスローは
レッセフェルト伯爵とは長い付き合いで
供に、残忍なウルクスを相手に
戦い抜いてきた互いを認めあう盟友だ。
手当てをしていた、ラーランド軍の前に
宮宰デュラン自らが、率いて来た
ミストラルの援軍が到着した。
全ての存在を、跪かせるため
暗黒で覆いつくして、押しつぶすような空の下で
ミストラル軍の動きが到着してすぐに
あわただしくなっている。
「魔道師隊は一箇所に集めて、動かすんじゃない
我等の兵に出来るだけ手伝わせて、楽をさせるんだ、余計な事をさせるな」
「はっ、癒しのみに専念させます、デュラン様」
デュランは、白い髪の少年から話を聞いた
アリアの報告から、被害の大きさを予想し
負傷者への癒しを行わせるため
魔道師達全員を、先行して送り込んでいた。
聖職者でもある魔道師達は
亡骸に弔いの祈りをかけることすらできないで
近くに集まっている負傷者を、見つけては癒しを行っている。
リオルドの報告で、癒しを行う魔道師達を一箇所に集めたくても
予想より多い負傷者を運べるだけの人が不足していて
魔道師達の方が、動くしかなくなっているのはわかっていた。
「魔道師達に最小限の癒しをするようには指示はしているのか」
「リオルド様が、されているようです」
「そうか、さらに徹底させておくんだ」
「はい」
「魔道師達には無理をさせるな
できるだけ、普通の手当で、間に合わせるんだ」
「はっ」
「癒しを優先するのは助かりそうな者からだが、集めた負傷者達からの話も、しっかり聞くんだ」
「なぜですか、デュラン様」
「特別に優先して助けなければならん者も、いるはずだ」
「なるほど、それはたしかに」
傷ついた兵士の数が余りにも多すぎて
このままでは、いつまで、魔道師達の魔力が持つかは、わからない。
「魔道師達の下へは、我が兵を使って負傷している者を運ばせるんだ」
「はい」
「馬でも、肩でも、なんでいい、効率よく、運べそうな物を使え」
「はい、親衛隊の大盾も使わせます」
「そうしろ、無駄な労力は使うな、頭を使え」
ミストラルの親衛隊が持つ、濃く深い青色をした大盾までも
担架にして、負傷者を運ぶようだ。
「傷が深くて、動かせない者も探しだして
見つけ次第、その場に、兵士を行かせて、傷の手当をさせろ」
「はっ」
デュランは負傷者が多すぎて、人が不足している
ラーラント軍にはできなかった
援軍として来た、無傷で元気な、ミストラル軍の兵士達を
全て使い、出来うるかぎりの負傷者を救うつもりだ。
ステリオ渓谷まで、急いで来た疲れはあるだろうが
戦ってもいない、ミストラルの兵士達は、元気だ。
「我々は無傷だ、必要な物は馬も含めて、全て出すんだ」
「馬までですか、我々の分は残されないのですか」
デュランには兵士だけでなく、貴族に至るまで
足を怪我し、歩いて帰ることも
ままならないものが、大勢いるとの報告を受けていた。
「そうだ、全て出すんだ、我々は、その気になれば
何も食わずに、水だけで、歩いてでも帰るぞ」
最低限のものは近隣の町や村から徴収して
無事に帰れるのだが
出し惜しみは一切しないという意思を
徹底させるために、大袈裟で
わかりやすい指示を、わざと出している。
「我が軍が急いで戻れるよう、公国に支援のため
伝令の幻獣を使わせます」
「いい、それは、すでにライナに、伝えさせている」
「近隣からの応援はまだか」
「既に、仰せのとおり、町や村に、伝令は向かわせております」
「遅いな、早く来た者には、褒美(ほうび)を出す事は伝えたのか」
「はい」
「なら……」
「次は、いかにいたしましょうか」
「いいから、レッセフェルト、お前も行くんだ」
「はっ?」
大まかな指示を出せば、細かい所は
自らの力で、普段から領地を治められるだけの
実力を持っている、貴族達が
全て、自分で考えて、問題なくこなしてくれるはずだ。
「ここで、ずっと、跪いているつもりか?」
「ーーはっ、なるほど、これは失礼」
跪いていた配下の騎士は貴族で
主君との契約の下に、引き連れてきた
自らの軍で、陣頭指揮をするために
馬に飛び乗ると、待っていた
勇士を引き連れて、急いで戻っていった。
「戻るぞ、コールスロー」
「ウィ、レッセフェルト爵」
貴族は戦争で命がけで戦う代わりに
王と契約して、領地を与えられている。
同じような、全身の鎧姿の勇士は
貴族の領地の一部を、任されているので
利害関係もあるのだが、そういった上下の関係ではなく
生死を供にする盟約を結んだ、盟友といった間柄だ。
貴族に、とっては、武勇は当然だが
知恵に優れた勇士を盟友に、つけることが何よりも大事だ。
この世界では常識として
天才的な勇士ほど、なぜか変わり者が多い。
評判が悪い貴族には、優れた勇士は
近寄りたがらないので
貴族にとっては、自分の優位を
わかりやすく、周囲に誇示してくれる、大切な存在だ。
レッセフェルト伯爵が空を見上げて
立ち止まると、コールスローも傍で待っている。
二人の呼吸はピッタリだ。
「しかし、不気味な空だな、コールスロー」
「ウィ、レッセフェルト爵」
「だが、我等の前には敵ではないな」
「ウィ、レッセフェルト爵」
「……お前は、それしか言えんのか」
「ウィ、レッセフェルト爵」
「こんなときぐらい普通に話せんのか、コールスロー」
「ウィ、レッセフェルト爵」
「頑固な奴だ、全く……」
「ウィ、レッセフェルト爵」
「もう、よいわ、行くぞ、はあっ!」
「ウィ、レッセフェルト爵」
かなり変わっているが、勇士コールスローは
レッセフェルト伯爵とは長い付き合いで
供に、残忍なウルクスを相手に
戦い抜いてきた互いを認めあう盟友だ。
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