最強の魔道師に成り上がって、人気者のアイドルをやってるんですけど、燃え尽きて死んじゃうぐらいやらないとダメな前のめりな性格なんです。

ちちんぷいぷい

文字の大きさ
49 / 51

脚本

しおりを挟む
ミストラルの決死隊を率いてきた
リオルドから、ミストラル全軍が
続いて到着するという報告をガリバルドは受けていた。

「はい、我らだけで、先に来ましたが、遅かれ早かれ……」
「デュラン殿がすぐにこられるというなら……」

「こちらは、それで問題ありません、報告をし、準備させます」
「それは、助かる、リオルド殿。兵達は激戦でつかれております」

「援軍としては、当然です」
「うむ」

親衛隊のような王直属の正規兵でもない
兵士達は庶民としての日々の生活もあり
本来、やるべきことがある。

「今年は戦の稼ぎで、なんとか乗り切れるぜ」
「ああ、この金で、来年に向けて準備もできるってもんだ」

「来年こそは、誰も殺さずに、畑仕事で終えたいもんだ」
「このところ、毎年のように不作続きだからな」

「驕り高ぶった人間に、神様の復讐が、はじまったんだってよ」
「1000年続く戦乱の世も、何かの恨みなのかも知れねえな」

「本当だとしたら、おっかねえ話だ」
「まあ、こう争いばかりだと、暗い噂も出まわっちまうだろう」

「でも、あの空を見るとな」
「与太話とも思えなくなっちまうな……」

「全くだ」
「ああ、とにかく、急いで帰らなきゃな」

「かあちゃんと嫁と子供が腹すかせて待ってからな」
「おれもだ」 

敵が去った今、目立った負傷の無い、疲れ果てた
兵士達を無理に留めて、つまらない不満を買うよりも、戦場から離れることを許していた。

「俺は残るぜ、お前はやることがあるだろうし、帰るんだ」
「なんでだ」

「俺はラーラントに、住んで長いからな」
「怪我した奴らを、そのまま放っておけないのだろ」

「まあな、ミストラルの援軍まかせってのもな」
「わかった、先に戻って、お前が生きてるのを伝えといてやるよ」

残っている兵士達は怪我をしているか
自らの意思で、残るのを選択した者達で
人手が不足してしまうのはしょうがない。

「せめて、途中まで一緒に行きたかったが……」
「もう戦場なんかで会わないほうがいいさ」

「気持ちはわかるが、俺にはそんな余裕はない、すまん」
「ああ、ここでお別れだ」

「それもそうだな」
「それじゃ、縁があればまたどこかで会おう」

「短かったが、一緒にやれて、楽しかったぜ」
「もしなんか、あれば訪ねてこい」

「お前もだ、一緒にやるのは戦場だけじゃないからな」
「ああ、頼む、それじゃ」

「あばよ、生きてればまたどこかでな」
「おうよ、じゃ、元気でな!」

デュランがミストラル軍を率いて来たときには
最優先にやるべきことは、わかりきっていた。

「ふう…… あとは……」
「デュラン様っ、そろそろ、ラーラント側に、礼を取りにいきませんと」

「ああ、わかっている」

援軍として、到着してから
指示できることは、全て終えた。

後は渓谷近隣の町や村から
応援の人や物資が届くまでは
待たなければならない。


馬の駆ける音がして、誰かが
近づいてくる気配がしたので
デュランは振り向いて、指示を出そうとする。

「デュラン様」
「リオルドか…… ガリバルド様のご様子はどうだ」

「はい、見た目はお元気そうですが、無理をされておられます……」
「そうか、ガリバルド公らしいな」

礼を取りにいくよりも先に
ミストラル軍が、できることを
最優先するほうが、ガリバルドにとっても助かる話だ。

「どうだった」
「会ってみて、頭が良く、人望の厚い方だと見ました」

「公は実質的には、ラーラント副王だ、良く見ておくんだ」
「ソフィア様に配慮された決断を迷わずされていたのは、我らにとっては救いでした」

「何も、できず、むざむざ死なせていたらと考えるとな」
「はい、立場というものが、なくなります」

デュランは、アリア達が崖の下にある
大河ヴィーズにいることはわかっている。

「アリア様は大丈夫でしょうか」
「リオルド、アリアを信じるんだそれしかあるまい、それに……」

「例の魔道師の少年ですか」
「ああ、何かあるな…… そう考えるのが自然だ」

「偶然にしては全てが、出来すぎていると感じます」
「そうだ、よく理解しておくんだ、我々は、操り人形だ」

「人形が勝手なことをすればどうなるのでしょう」
「人形は芝居のためにあるものだ、壊して、交換されるだろうな」

「即座に撤退した、シーザリアは懸命だったと」
「そうだ、さすがは、ヴェサリウス王というところだな、勘がいい」

ヴェサリウス王は、降る雪の見事さを、見逃してはいなかった。

「それほどまでの力の持ち主なのでしょうか」
「一国の軍の前であれだ、そう見るのが妥当だな」

「立ち向かったなら、我々はどうなっていたのでしょうか」
「アリアがいたので、遠慮はしてくれただろうが、考えたくはないな」

「これが、いつも、おっしゃる道理なのでしょうか……」
「そうだ、リオルド、世を芝居に例えれば、脚本があるのだと、教えたな」

「はい、デュラン様、脚本とは、従うべきだが、従わずともいいものだと」
「そうだ、芝居と同じで、役者次第だ、なぜだ」

「芝居は、道理を理解する者が、書くべきだからです」
「役者が道理を知るなら、役者の芝居、そのものが脚本となる」

「なるほど、よくわかります」
「戦いも含めて、全ては芝居にすぎない」

リオルドは、主であるアレクシスの姿を思い浮かべてしまう。

「アレクシス様が、参ってしまっている顔が目に浮かびました」
「もっと、わかりやすく教えるべきだろうか…… どう思う」

「いえ、わからないほうが好奇心を抱きます、私はそうでした」
「そうか、私もいつどうなるかわからない、それが一番、大事だ」

死の支配者でもある、冥王の怒りを最も受けなければならないのは
神に背くことをアリアに、許したデュランだ。

「そろそろ、いくか、供をするんだ、リオルド」
「いえ、もう、あちらに来られるかと、
それをお伝えに先に」

「では、行くぞ、リオルド…… なんだ!?」
「ガリバルド様のほうから、挨拶に出向かれます、それを伝えに来たのです」

「なるほどな、らしい……」
「はい」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...