花屋の息子

きの

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8 添い寝

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俺は今ちょっと困っている。


「いや!兄様はじぇしかとねるの!」

「でもイオリも今日は疲れているだろうし、一緒に寝たら狭いだろ?ほら、お父さんが一緒に寝てやるから」

「お父さんはべつにだいじょうぶよ」

「がーん」


食事を済ませた後。
ありがたくシャワーを浴びさせてもらい、ダリさんの服も貸してもらった。シャワーの仕組みは観察してもよく分からなかったから魔法なのか、元の世界と同じようなものなのかは不明だ。



そして、寝床の話になった。いつもだと、夫婦の部屋でシエルさんとダリさんは寝て、ジェシカは自室だったり両親のどちらかと寝たりまちまちらしい。
そんなジェシカは、嬉しいことに俺と寝たいと言ってくれたんだけど、俺に貸してくれた部屋の簡易ベッドは一人用。小さい子とだとしても、少し手狭だった。
だから、ダリさんは違うところで寝るよう説得してるんだけど、なかなかジェシカが折れない……。



「イオリ兄様は、じぇしかと寝るの、いや...?」

「えっっっ」


まずい、小さな子のお願いは断りづらすぎるっっ。
即効でイイヨ!と言ってしまいそうになった口をむぐっと力を入れて閉じ、俺は悩む。
どうすればいいんだ。




「……ジェシカ、イオリはこれからずっといるんだ。ただ、今日だけは一人で寝かせてやってくれないか?今日、イオリは大変なことを沢山経験したんだ」

「むん……」


むすっと、納得できない!の顔。
少しうつむいたジェシカは、しばらくして俺に近付いた。
それに合わせて膝を折る。
不満そうな顔もかわいい。


「ん?どうしたの?」

「...兄様は、ほんとうにずっといっしょなの?」

「……」


答えられなかった。
ダリさんたちはいいよと言ってくれるだろうけど、それを俺から伝えるのは違うと思う。現に、少し落ち着いたらこの家から一人暮らしに移ろうと思っていた。
『ずっと』なんて、例えこんな状況じゃなくても言いにくい言葉だ。それは、元の世界でも同じ。
小さな子に嘘をつくような感覚がして、思わず押し黙るが、そんな俺をジェシカは不安そうに見つめる。






「……大丈夫よジェシカ。例えイオリくんがこの家から出ようとしたら私が止めるから、安心して?」

「...!ほんとう、お母さん!?」


え、まじですか、シエルさん!?!?

思わず、知らない間にそばに居たシエルさんにギュルン!と振り向くとウインクされた。
ううん。美人だけどどことなく圧……。



「さ、分かったらさっさと寝ましょ。起きてもイオリくんはいるわ、安心してジェシカ」


シエルさんに背中を押されたジェシカ、むん…とした顔をしながらも「おやすみ」と手を振ってくれた。






「ちょっとベッドは小さいかもしれないが…おいおい準備していくから、しばらく我慢してくれ」

「うん。俺そんなに体でかい方じゃないし…」

「そうだよなぁ。ここで暮らすからには、むっきむきになってもらうけどな!」



えっっっっっ。
いたずらっ子のようなウインクを残してダリさんは部屋を出ていった。

むきむきになった俺…ダリさんの体に俺の顔だけ付けてみる。
……うん。違和感ありまくりだ。せめて、マッチョじゃなくて細マッチョめざそう……。



本当はこんな事考えてる余裕はなかった。
今も、心と体はふわふわとしていて、心許ない。
まだ受け入れられていないのだろうか。ここが異世界ということに。
どれだけ考えたってどうにもならないけれど、でも、ずっと頭が焦ってる。


「……」


心と体ともに疲れている俺は、ひとまず頭の中のごちゃごちゃを全部置いといて、ベッドにダイブした。

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