死神の鎮魂歌

田華一真

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第一話 ⑥

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「それじゃあ、今日はこれで」

鳥栖はありがとうございました、と礼をして去っていった。

「いやぁ~、もっと聞いてたかったなぁ」

余程気に入ったのか川田は呟いていた。

すると、大切な事を思い出した拓也はハッとした顔をした。その場で思わず大声を上げた。

「あっ!歌声聞いてない!!」

歌?あのギターテクニックがあれば十分だろうと、川田はポカンとした顔で拓也を見た。

川田の反応で拓也は渉脱退について伝えていない事に気づく。浮かない顔をすると実はですね…と、恐る恐る話始めた。



事実を知った川田は、表情を歪めて激昂した。

「えぇ!?お前そう言うことは早く言いなさいよ!次のライブ会場だって抑えたんだぞ!?」

「あぁぁ!すみません、言いづらくて…」

もう一度来てもらうしかないだろ、ライブ会場にキャンセルの電話をいれなければ、まったくお前は…と川田は小言をぶちくさと呟く。仕方なく鳥栖と会場へ連絡を取り始めた。

その横で拓也は残ったバンドメンバー二人への連絡を取り始めた。

川田だけでなく、 残るメンバーにまで渉脱退の件を伝えていなかったからだ。

鳥栖に会いたい気持ちが勝り一目散に69に来てしまった。結果二人への連絡を後回しにしてしまったのだ。



和樹と尚人。この二人が残されたエレメントメンバーである。

高校時代からの友人でドラムを務める尚人。ベースを担当する幼馴染の和樹。二人は拓也にとって数少ない友人だ。

尚人はメンバーの中で一番の女好きで本業は夜の仕事に就いていた。

普段は、夜の歌舞伎町に繰り出しホストとして活躍している。

かなり売れているらしい。その証拠に普段から羽振りが良かった。



和樹はIT会社に勤務する営業マン。尚人とは真逆の人生を歩んでいた。

24歳で結婚。子供も授かるものの妻の不倫により離婚。

順風満帆だった人生は音を立てて崩れ落ちた。

それでも、女遊びなどに耽ることもなく真面目で誠実な性格が変わる事はなかった。仕事でも堅実な働きぶりに会社から高く評価されていた。

まさに謹厳実直きんげんじっちょくな男である。



そんな二人の共通点は、大の酒好きであるという事。

時間を見つけては行きつけのBARに集まり酒を呑んだ。時間を忘れ朝まで飲み明かすこともしばしば。

拓也はバンドの事で話したいがあるので打ち合わせしようと二人にメールを打った。

即座に返って来た和樹の答えは、夜8時にいつもの所に集合、の一言。

予想通りの返信メールだった。
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