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第二章公爵として
戦争の爪痕
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狼王国と獅子王国からそれぞれ5千人づつ集められた兵士たちがエラクレスの城に集結していた。
遂に今日が王都への出発日だ。
「馬車も悪くないな…。」
エラクレスは祖父チャロースが手配した芸術家が設計した馬車の試し乗りをしていた。彼は馬に跨りたかったが、
「ネリーキア貴族は品位を保つため馬車に乗るのが常識でございます。」
…と御者を務めるフィリクの説得もあって馬車に乗ることにした。
「まあ、フィリクの言うことに一理あるしな。今回は獣王としてよばれたのではなく、あくまでも公爵として呼ばれたからな。」
しかし…と続ける。
「なんでこんなにゴテゴテに装飾したのやらこれじゃあ国王専用馬車よりも凄いぞ!」
「別に良いではないか…今回のことで間違いなく貴族どもの反感を買うわけじゃ。それならせいぜいこちらの豊かさを誇示するに限る。」
と一緒に乗っていたチャロースが宥める。
「陛下♪獣王に相応しい素晴らしい馬車ですね♪」
「臣も乗せていただけるのでしょうか?」
エカとメリアは大はしゃぎしている。
「ああ、一人で乗っても暇だから一緒に乗ろう。」
「「ありがたき幸せ♪!」」
(明るめの青い髪に蒼い瞳をしたエカ、燃えるような赤い髪に蒼い瞳をしたメリア。ああ!二人共かわいい!)
「///はう///」
「///へ、陛下!どういたしました///」
エラクレスをいきなり二人に抱きついた。
「いや、二人共可愛くてつい…。」
「「///へ、へいか~///」」
二人は照れた。
「夜はもっとかわいい。」
ボン!
「「///へ!へいか!///」」
音が出そうなくらい顔を紅くしてもっと照れた。
「エラクレス様、申し訳ございませんが…そろそろお時間です。」
忠実なフィリクが出発の時を告げた。
「わかった。」
エラクレスは二人を離して外に出た。
そのまま空を飛んで自分にいくつか強化魔法を付ける。これから演説が始まる。
身体強化で全身を強化して大声が出るようにして、空間魔法を使って所々に声のワープポイントを設置して声が遠くまで聞こえるようにした。
「皆!よく聞け!」
最初に『威嚇Ⅱ』を使って言う。
「余が誇り高き諸君らの偉大なる獣王ベルナドット1世だ!これからネリーキア王国の王都に向う!今回諸君に集まって貰ったのはその道中で雄々しき姿を示し!我らの獣王国の威信を高めることにある!決して無様な姿を見せてはならない!獣王国の威信を汚す者は末代までの恥として語り継がれるだろう!さあ!誇り高き獣人の戦士よ!進め!」
そこまで言い切るとエラクレスは狼人に変身した。黒い髪は銀に。蒼い瞳は灰色になっている。
狼人にとって伝説的な存在『銀狼』である。
『銀狼』は狼人の間で古くからまだ人間が居なかった時代に神の王を食い殺し、その後神の王の子供に殺されたが、やがて狼人になって復活すると信じられている宗教的にとても大事な存在である。
「ワオーーン!!」
そして遠吠えをした。
「「「ワオーーン!!!」」」
狼人の戦士達もそれに応えた。
次は『金獅子』になった。金獅子は特に宗教的に大事とかはない。
「グオオオ!」
エラクレスは雄叫びをあげた。
「「「グオオオ!!!」」」
エラクレスの雄叫びに獅子人の戦士達は応えた。
こうして総兵力1万の戦士達が王都への行軍を開始した。
この獣人の戦士は馬に乗っているため兵科的には騎兵となるが、その姿は派手、派手の極みとも言える姿であった。
狼人は絹製の紺碧の服、獅子人も絹製の真紅の服をそれぞれ着込みその上に贅の極みを尽くした鋼鉄の甲冑を纏い、鞍にはフサフサで美しい羽飾りをつけていた。更に長大な『コピア』と言う槍を持っていた。
「なるほどな、これは憧れるな~。ファンも多いわけだ。」
彼らは地球では『フサリア』と呼ばれている騎兵の姿をしていた。もちろん、発案者はエラクレスであり、彼の趣味である。【騎兵もこいつにとっては着せ替え人形か…by戦神アメーナ】
「きれ~い。」
「カッコいい!」
「エラクレス様は芸術の才能もお持ちでしたか…。」
「国家財産を遥かに超えておる…。」
上から『フサリア』を見たときのエカ、メリア、フィリク、チャロースの感想である。
だが、開始してすぐに問題が起きた。
それは道を塞いでいた大岩を示威行為の一環として剣で真っ二つにしたすぐ後だった。
「なんだ、これは…。」
「まるで、ここが戦場だったみたい…。」
「死屍累々ですね…。」
そこには血が染み込んだ土の風景が広がっていた。
慌てたエラクレスは…
「召喚魔法!ゴブキン!」
すぐに南軍団総指揮官ゴブキンを呼び出した。
「何があった?!」
エラクレスはゴブキンが挨拶しようとするのを止めて単刀直入に聞いた。
「ノース辺境伯エリオットなどとほざく羽虫がおおよそ五千ほどの兵数を率いて主君の領地に向かって来たので風竜空戦隊の方にも協力していただき迎撃し、全滅させました。」
ゴブキンはあたかも当然のように応えた。今回の戦いで人を大量に食べたため流暢に人語を話すようになった。
それはさておき、何故これほどの戦闘がエラクレスに伝わっていないかと言うと、まず戦いが終わって間もないから報告が届いていないのである。また、エラクレスはいちいち迎撃を許可するのが面倒くさかったためゴブキンに一任していたからである。
「報告が遅れ申し訳ございません。」
ゴブキンは最後を謝罪で締めくくった。
「そうか…風竜空戦隊もか…。」
『風竜空戦隊』とはエラクレスによって飼いならされた風竜千頭で編成された空戦隊である。普段は風竜の性質上高い山脈の上で生活しているが、エラクレスから『ゴブキンから援軍要請が来たら援護せよ。』と命令を受けている。その強さは前回参照。
「で、全滅ってことはノース辺境伯エリオットも…」
「はい、打ち取りました。加えて捕虜の話ではその二人の息子も戦死したようです。」
「まじか。」
(ノース辺境伯家…大丈夫か?断絶とかしないか?それと聞き捨てならない言葉があったぞ?)
「捕虜もいたんだ?」
「この捕虜はゴブリンにとっては正に命の源です。」
「命のみなもと…あっ…(察し)」
(彼女達はこれからの人生は悲惨そのものだな…。まあ、これがこの世界の常識だろうな。あんまり根本からひっくり返そうとすると怒られそうだ。触れないでおこう。)
「ゴブキン、悪いが部下を全員迷宮の中に行かせてくれ。たぶん、ノース辺境伯の領地を通るとき俺たちがゴブリンに襲われなかったかと聞かれるはずだ。まさか『ゴブリンは部下です。』とか言えるわけがない。まあ、言っても良いが評判が悪化しそうだから言いたくない。風竜空戦隊は…居なかったと言っておこう。」
「なるほど…。」
「そんなわけで俺はこの獣人の戦士達がお前たちを完膚無きまで叩き潰したことにするから。」
「承知しました。」
ゴブキンはすぐさま取り掛かった。
「よしっ!これで謎もわかったわけだし、行軍再開!」
エラクレス軍は血で塗装された道を通ってノース辺境伯領に到着した。
エラクレス領とノース辺境伯領の間の道は決して良くはなく、逆に悪いまでの状態であるが、エラクレスがリアルタイムで土魔法で舗装しているためとても通りやすくなっている。
<ノース辺境伯領の人々視点>
<村人視点>
村人達は今日もいつも通り畑仕事をしていた。だが、その心中は明るくない。
つい先程、血まみれでボロボロになった数人の冒険者が逃げてきたからである。
「おい、何があった?!」
村人は冒険者の一人に声をかけた。
「ご、ゴブリンだ!ゴブリンの大軍にやられた!」
「へ?領主様がゴブリンどもを一掃してくださると言ってたじゃないか。今朝、家臣様と一緒に行かれたじゃないか。」
「だから負けたんだよ!一掃するどころか一掃されたんだよ!あいつらを見ろ!」
冒険者は指をさした。
そこにはやはり血まみれでボロボロの冒険者が居た。
「おっと、こうしちゃいられねえ。俺も逃げる。じゃあな!」
そう言って冒険者は走り去った。
「…………。」
しばらく村人は情報が整理できず棒立ちしていた。義務教育がないこの時代、教育とは豪商か貴族だけのものだったため、平民の知能をとても低い。
30秒後、ようやくその危険さに気づいて叫びだした。
「大変だ!みんな逃げろー!ゴブリンが来るぞ!」
他の村人も冒険者を見て危機感を持っていたのかすぐに逃げ出そうとした。
「あるだけの食料を持っていこう。」
「寒いから布も。」
「木を拾って火をおこす用意をしないと…。」
「で、どこに逃げる?」
「取り敢えず領主様の館に行こう。きっとどうにかしてくださる。」
農民の頭で考えれる最良の答えだった。彼らは貴族を絶対視しており、まさか自分達の領主が魔物に敗れて死んだなど全く考えていなかった。
「「「そうだ!そうしよう!」」」
満場一致でその案は採用され実行された。
当然このような出来事は他の村々でも発生しており、大量の農民達が領主の館付近に雪崩込んだ。
一方で…
「あれ?ゴブキンには専守防衛を指示していたが、あいつ先制攻撃でもしたか?村に人が全くいないぞ?」
「本当ですね…。」
「血の跡も臭いもありますね…その可能性も高いです。」
「でもエカ、ゴブリンの臭いもしないよ?」
「スンスンスン…あっ!本当だ!」
「おい、これじゃあせっかく用意したフサリアが意味ないじゃないか…。」
いくら綺麗な物でもそれを見る人がいなければ意味がない。
エラクレスは落胆した。
「ああ!もうしょうがない!人がいるところまで進め!」
<残された者たち視点>
「た、大変です!お嬢様!ルイーズ様!」
ここはノース辺境伯の屋敷。普段は静かで騎士や兵士たちの訓練する音しか聞こえない場所であるが、今は大騒ぎしている。
「な~に~?」
慌てたメイドに対しておっとりとした声が応えた。彼女はルイーズ。ノース辺境伯エリオットの末子で9歳。茶髪に緑色の目をしているのが特徴。
母は難産の影響で早くに亡くなってしまったが、エリオットからは物凄く溺愛されておりそのせいなのか貴族としては珍しく婚約者もまだいない。
「領主様が…お父上が…兄上が…亡くなりました。」
「なくなった?」
ルイーズは聞き返した。あくまでも噂であって、死体とか物的証拠がある訳では無いが騎士が一人も戻らず、ゴブリンに殺された(厳密には風竜だが)となれば、死体は残らないため、死んだ可能性がとても高い。
「もう、会えないのです…。」
「もう、あえないの…?」
「そうです…ルイーズ様…。」
「…………」
「もう、会えな…」
ルイーズは気づいた…気づいてしまった。
「イヤーーーーーーーーー!!!」
ルイーズが好きだった花を持ってきてくれた父はもういない。
「ルイーズ様!」
「イヤ!」
ルイーズに本を読んでくれた父はもういない。
「イヤ!」
ルイーズに優しく文字を教えてくれた父はもういない。
「イヤ!」
ルイーズを一緒に馬に乗せてくれた父はもういない。
「イヤ!」
ルイーズに…
「いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ルイーズ様…」
メイドにはただ抱きしめる事しか出来なかった。
<ある冒険者視点>
「おい!カネだせよ!」
「命がけで戦ったんだからよ!」
「仲間もたくさん死んだ!」
「契約は守れ!」
「冒険者ギルドに訴えるぞ!」
「「「そうだ!そうだー!」」」
ノース辺境伯の屋敷の前には運良く生き延びた。冒険者100人が報酬を求めてデモを行っていた。
「おらっ!執事とか、いるんだろ!?」
「カネ出せや!カネ!」
今にも暴動になりそうだった。屋敷の警備のために残された騎士や兵士も居たが、それが30人程度…防げそうにはない。
「どうしましょう…。」
「うむ…仕方ない…。騎士が激減した今…暴動でも起されたらかなわんし、冒険者ギルドから敵視されるのもまずい…。払うしかない…。」
留守を預かっていた執事は金庫の鍵を開けて冒険者達に配った。
幸か不幸か多くの冒険者が死に、チームごと壊滅した冒険者も多かったため払う金額は想定より少なかった。
だが…
「これだけの難民をどうすれば良いのか…。」
執事はゴブリンの襲撃を恐れて逃れてきた農民達の大群を見て……
ため息をはいた。
「な、何だあれは!?」
しばらく思案していると集まった農民達が騒がしくなった。
(今度はなんだ…)
執事は再びため息をはいた。
【お気に入り登録してくださった方、ありがとうございます。まだの方はぜひとも登録してください。作者のモチベーションがグアーーと上がります。】
遂に今日が王都への出発日だ。
「馬車も悪くないな…。」
エラクレスは祖父チャロースが手配した芸術家が設計した馬車の試し乗りをしていた。彼は馬に跨りたかったが、
「ネリーキア貴族は品位を保つため馬車に乗るのが常識でございます。」
…と御者を務めるフィリクの説得もあって馬車に乗ることにした。
「まあ、フィリクの言うことに一理あるしな。今回は獣王としてよばれたのではなく、あくまでも公爵として呼ばれたからな。」
しかし…と続ける。
「なんでこんなにゴテゴテに装飾したのやらこれじゃあ国王専用馬車よりも凄いぞ!」
「別に良いではないか…今回のことで間違いなく貴族どもの反感を買うわけじゃ。それならせいぜいこちらの豊かさを誇示するに限る。」
と一緒に乗っていたチャロースが宥める。
「陛下♪獣王に相応しい素晴らしい馬車ですね♪」
「臣も乗せていただけるのでしょうか?」
エカとメリアは大はしゃぎしている。
「ああ、一人で乗っても暇だから一緒に乗ろう。」
「「ありがたき幸せ♪!」」
(明るめの青い髪に蒼い瞳をしたエカ、燃えるような赤い髪に蒼い瞳をしたメリア。ああ!二人共かわいい!)
「///はう///」
「///へ、陛下!どういたしました///」
エラクレスをいきなり二人に抱きついた。
「いや、二人共可愛くてつい…。」
「「///へ、へいか~///」」
二人は照れた。
「夜はもっとかわいい。」
ボン!
「「///へ!へいか!///」」
音が出そうなくらい顔を紅くしてもっと照れた。
「エラクレス様、申し訳ございませんが…そろそろお時間です。」
忠実なフィリクが出発の時を告げた。
「わかった。」
エラクレスは二人を離して外に出た。
そのまま空を飛んで自分にいくつか強化魔法を付ける。これから演説が始まる。
身体強化で全身を強化して大声が出るようにして、空間魔法を使って所々に声のワープポイントを設置して声が遠くまで聞こえるようにした。
「皆!よく聞け!」
最初に『威嚇Ⅱ』を使って言う。
「余が誇り高き諸君らの偉大なる獣王ベルナドット1世だ!これからネリーキア王国の王都に向う!今回諸君に集まって貰ったのはその道中で雄々しき姿を示し!我らの獣王国の威信を高めることにある!決して無様な姿を見せてはならない!獣王国の威信を汚す者は末代までの恥として語り継がれるだろう!さあ!誇り高き獣人の戦士よ!進め!」
そこまで言い切るとエラクレスは狼人に変身した。黒い髪は銀に。蒼い瞳は灰色になっている。
狼人にとって伝説的な存在『銀狼』である。
『銀狼』は狼人の間で古くからまだ人間が居なかった時代に神の王を食い殺し、その後神の王の子供に殺されたが、やがて狼人になって復活すると信じられている宗教的にとても大事な存在である。
「ワオーーン!!」
そして遠吠えをした。
「「「ワオーーン!!!」」」
狼人の戦士達もそれに応えた。
次は『金獅子』になった。金獅子は特に宗教的に大事とかはない。
「グオオオ!」
エラクレスは雄叫びをあげた。
「「「グオオオ!!!」」」
エラクレスの雄叫びに獅子人の戦士達は応えた。
こうして総兵力1万の戦士達が王都への行軍を開始した。
この獣人の戦士は馬に乗っているため兵科的には騎兵となるが、その姿は派手、派手の極みとも言える姿であった。
狼人は絹製の紺碧の服、獅子人も絹製の真紅の服をそれぞれ着込みその上に贅の極みを尽くした鋼鉄の甲冑を纏い、鞍にはフサフサで美しい羽飾りをつけていた。更に長大な『コピア』と言う槍を持っていた。
「なるほどな、これは憧れるな~。ファンも多いわけだ。」
彼らは地球では『フサリア』と呼ばれている騎兵の姿をしていた。もちろん、発案者はエラクレスであり、彼の趣味である。【騎兵もこいつにとっては着せ替え人形か…by戦神アメーナ】
「きれ~い。」
「カッコいい!」
「エラクレス様は芸術の才能もお持ちでしたか…。」
「国家財産を遥かに超えておる…。」
上から『フサリア』を見たときのエカ、メリア、フィリク、チャロースの感想である。
だが、開始してすぐに問題が起きた。
それは道を塞いでいた大岩を示威行為の一環として剣で真っ二つにしたすぐ後だった。
「なんだ、これは…。」
「まるで、ここが戦場だったみたい…。」
「死屍累々ですね…。」
そこには血が染み込んだ土の風景が広がっていた。
慌てたエラクレスは…
「召喚魔法!ゴブキン!」
すぐに南軍団総指揮官ゴブキンを呼び出した。
「何があった?!」
エラクレスはゴブキンが挨拶しようとするのを止めて単刀直入に聞いた。
「ノース辺境伯エリオットなどとほざく羽虫がおおよそ五千ほどの兵数を率いて主君の領地に向かって来たので風竜空戦隊の方にも協力していただき迎撃し、全滅させました。」
ゴブキンはあたかも当然のように応えた。今回の戦いで人を大量に食べたため流暢に人語を話すようになった。
それはさておき、何故これほどの戦闘がエラクレスに伝わっていないかと言うと、まず戦いが終わって間もないから報告が届いていないのである。また、エラクレスはいちいち迎撃を許可するのが面倒くさかったためゴブキンに一任していたからである。
「報告が遅れ申し訳ございません。」
ゴブキンは最後を謝罪で締めくくった。
「そうか…風竜空戦隊もか…。」
『風竜空戦隊』とはエラクレスによって飼いならされた風竜千頭で編成された空戦隊である。普段は風竜の性質上高い山脈の上で生活しているが、エラクレスから『ゴブキンから援軍要請が来たら援護せよ。』と命令を受けている。その強さは前回参照。
「で、全滅ってことはノース辺境伯エリオットも…」
「はい、打ち取りました。加えて捕虜の話ではその二人の息子も戦死したようです。」
「まじか。」
(ノース辺境伯家…大丈夫か?断絶とかしないか?それと聞き捨てならない言葉があったぞ?)
「捕虜もいたんだ?」
「この捕虜はゴブリンにとっては正に命の源です。」
「命のみなもと…あっ…(察し)」
(彼女達はこれからの人生は悲惨そのものだな…。まあ、これがこの世界の常識だろうな。あんまり根本からひっくり返そうとすると怒られそうだ。触れないでおこう。)
「ゴブキン、悪いが部下を全員迷宮の中に行かせてくれ。たぶん、ノース辺境伯の領地を通るとき俺たちがゴブリンに襲われなかったかと聞かれるはずだ。まさか『ゴブリンは部下です。』とか言えるわけがない。まあ、言っても良いが評判が悪化しそうだから言いたくない。風竜空戦隊は…居なかったと言っておこう。」
「なるほど…。」
「そんなわけで俺はこの獣人の戦士達がお前たちを完膚無きまで叩き潰したことにするから。」
「承知しました。」
ゴブキンはすぐさま取り掛かった。
「よしっ!これで謎もわかったわけだし、行軍再開!」
エラクレス軍は血で塗装された道を通ってノース辺境伯領に到着した。
エラクレス領とノース辺境伯領の間の道は決して良くはなく、逆に悪いまでの状態であるが、エラクレスがリアルタイムで土魔法で舗装しているためとても通りやすくなっている。
<ノース辺境伯領の人々視点>
<村人視点>
村人達は今日もいつも通り畑仕事をしていた。だが、その心中は明るくない。
つい先程、血まみれでボロボロになった数人の冒険者が逃げてきたからである。
「おい、何があった?!」
村人は冒険者の一人に声をかけた。
「ご、ゴブリンだ!ゴブリンの大軍にやられた!」
「へ?領主様がゴブリンどもを一掃してくださると言ってたじゃないか。今朝、家臣様と一緒に行かれたじゃないか。」
「だから負けたんだよ!一掃するどころか一掃されたんだよ!あいつらを見ろ!」
冒険者は指をさした。
そこにはやはり血まみれでボロボロの冒険者が居た。
「おっと、こうしちゃいられねえ。俺も逃げる。じゃあな!」
そう言って冒険者は走り去った。
「…………。」
しばらく村人は情報が整理できず棒立ちしていた。義務教育がないこの時代、教育とは豪商か貴族だけのものだったため、平民の知能をとても低い。
30秒後、ようやくその危険さに気づいて叫びだした。
「大変だ!みんな逃げろー!ゴブリンが来るぞ!」
他の村人も冒険者を見て危機感を持っていたのかすぐに逃げ出そうとした。
「あるだけの食料を持っていこう。」
「寒いから布も。」
「木を拾って火をおこす用意をしないと…。」
「で、どこに逃げる?」
「取り敢えず領主様の館に行こう。きっとどうにかしてくださる。」
農民の頭で考えれる最良の答えだった。彼らは貴族を絶対視しており、まさか自分達の領主が魔物に敗れて死んだなど全く考えていなかった。
「「「そうだ!そうしよう!」」」
満場一致でその案は採用され実行された。
当然このような出来事は他の村々でも発生しており、大量の農民達が領主の館付近に雪崩込んだ。
一方で…
「あれ?ゴブキンには専守防衛を指示していたが、あいつ先制攻撃でもしたか?村に人が全くいないぞ?」
「本当ですね…。」
「血の跡も臭いもありますね…その可能性も高いです。」
「でもエカ、ゴブリンの臭いもしないよ?」
「スンスンスン…あっ!本当だ!」
「おい、これじゃあせっかく用意したフサリアが意味ないじゃないか…。」
いくら綺麗な物でもそれを見る人がいなければ意味がない。
エラクレスは落胆した。
「ああ!もうしょうがない!人がいるところまで進め!」
<残された者たち視点>
「た、大変です!お嬢様!ルイーズ様!」
ここはノース辺境伯の屋敷。普段は静かで騎士や兵士たちの訓練する音しか聞こえない場所であるが、今は大騒ぎしている。
「な~に~?」
慌てたメイドに対しておっとりとした声が応えた。彼女はルイーズ。ノース辺境伯エリオットの末子で9歳。茶髪に緑色の目をしているのが特徴。
母は難産の影響で早くに亡くなってしまったが、エリオットからは物凄く溺愛されておりそのせいなのか貴族としては珍しく婚約者もまだいない。
「領主様が…お父上が…兄上が…亡くなりました。」
「なくなった?」
ルイーズは聞き返した。あくまでも噂であって、死体とか物的証拠がある訳では無いが騎士が一人も戻らず、ゴブリンに殺された(厳密には風竜だが)となれば、死体は残らないため、死んだ可能性がとても高い。
「もう、会えないのです…。」
「もう、あえないの…?」
「そうです…ルイーズ様…。」
「…………」
「もう、会えな…」
ルイーズは気づいた…気づいてしまった。
「イヤーーーーーーーーー!!!」
ルイーズが好きだった花を持ってきてくれた父はもういない。
「ルイーズ様!」
「イヤ!」
ルイーズに本を読んでくれた父はもういない。
「イヤ!」
ルイーズに優しく文字を教えてくれた父はもういない。
「イヤ!」
ルイーズを一緒に馬に乗せてくれた父はもういない。
「イヤ!」
ルイーズに…
「いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ルイーズ様…」
メイドにはただ抱きしめる事しか出来なかった。
<ある冒険者視点>
「おい!カネだせよ!」
「命がけで戦ったんだからよ!」
「仲間もたくさん死んだ!」
「契約は守れ!」
「冒険者ギルドに訴えるぞ!」
「「「そうだ!そうだー!」」」
ノース辺境伯の屋敷の前には運良く生き延びた。冒険者100人が報酬を求めてデモを行っていた。
「おらっ!執事とか、いるんだろ!?」
「カネ出せや!カネ!」
今にも暴動になりそうだった。屋敷の警備のために残された騎士や兵士も居たが、それが30人程度…防げそうにはない。
「どうしましょう…。」
「うむ…仕方ない…。騎士が激減した今…暴動でも起されたらかなわんし、冒険者ギルドから敵視されるのもまずい…。払うしかない…。」
留守を預かっていた執事は金庫の鍵を開けて冒険者達に配った。
幸か不幸か多くの冒険者が死に、チームごと壊滅した冒険者も多かったため払う金額は想定より少なかった。
だが…
「これだけの難民をどうすれば良いのか…。」
執事はゴブリンの襲撃を恐れて逃れてきた農民達の大群を見て……
ため息をはいた。
「な、何だあれは!?」
しばらく思案していると集まった農民達が騒がしくなった。
(今度はなんだ…)
執事は再びため息をはいた。
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だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
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