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第三章反逆王子
凱旋
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ビース都では獣王ベルナドット1世の凱旋式が執り行われることによって普段の数倍の賑わいを見せていた。
「獣王陛下ばんざーい!」
「勝利、勝利だー!」
「飲むぞ、飲むぞ!」
「うちの女に指揮られて喜ぶザコ亭主は武功をあげたのかしら?駄目なら今度こそ…」
数々の歓声(一部例外)にエラクレスは騎乗し金獅子の状態で右手を振って応える。
左手には鎖が握られており、その鎖は体の自由を奪われ、ボロ服を着せられたバルデグントの首輪に繋がっている。
「なかなか良い演出だよな?」
「そうですね♪民に力強い王を印象付けられるでしょう♪」
「獅子人も忠誠を強めるでしょう。」
「あ!ズルい!陛下!狼人は、常に完全なる忠誠心を持っております!」
などと他愛もない会話をしながら街中を歩き回って最後に勝利宣言をして凱旋式を終わった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「よっと、着いたぞ。ここがこれからお前達が働く場所だ。」
エラクレスは久しぶりにエラクレス城に来ていた。
理由は今回の戦争で農奴身分に落した者達を案内するためだ。
「って…言っても今頃は一面雪景色だな。」
(雪に埋もれる農場と家屋。そして向こうに見える港町も風情があって良いな。)
「た、高あ~い。陛下、とても素敵ですね!」
…とはしゃぐのは精神が健全化したバルデグントだ。あの後それっぽい薬を飲ませて魔法を使ったら多少は回復して、実は仲間達は農奴として生きていけることを伝えたら涙腺が崩壊したのもも精神は復活した。
『じゅ…獣王陛下の御恩は…い、一生忘れません!この身……どうぞお好きにしてください!』
…と復活バルデグントは言ったが…
(俺が侵略しなければ無かった話なのに感謝されるって…変なことだな。)
…とエラクレスは思っていた。
「お~い。フィリク~。居るか?」
そう言いながらノック無しにドアを開ける。
「お待ちしておりました。」
フィリクはいつも通りピシッと音が出るほど直立していた。
「で、農奴を連れてきた。外で待たせているが…ざっと3000人だな。『俺の大農場計画』もそろそろ終わりそうだな。」
「はい、暇さえあれば至るところから奴隷を買い集めていらしましたから土地も大分埋まりました。これだけの人数を入れますと……あと3割ほどでしょうか?」
「そうか、そんじゃ後は任せた。乾燥寒冷地帯から連れてきたから農作業未経験者が多いが…」
「はい、お任せください。万が一反乱が起きたとしましても守備軍と共に鎮圧します。」
守備軍というのは配下の魔物や直轄地の若者、狼王国、獅子王国、虎・豹王国の兵士達で編成された軍のことだ。
(はっきり言って珍しい魔物を配下にしたり、ゴブリンとかは勝手に増えたり、派遣される兵士は各王に一任していたりするから、俺でも詳しくは把握してない。)
「頑張れよ。」
そう言ってエラクレスは出口に歩を進める。
(次は……一応母上に無事に戻ったと報告しに行くか。心配してくれていそうだし。)
…と考えていたその時、窓の外が暗くなった。
ギシギシ…
窓ガラスが軋むような音が鳴る。
「今、開けます。」
フィリクは特に驚いたような様子はなく窓に向かう。
(風竜空戦隊…と、ゴブリン?)
エラクレスは探知魔法で察する。
「どうも、ご苦労。」
フィリクは何かを受け取ったようだ。
「ギ!」
「グウ!」
…とゴブリンと風竜の返事らしき声がした。
「エラクレス様、南軍団総司令官のゴブキンから伝令書が届きました。」
「見せろ。」
「はっ!」
エラクレスは伝令書を受け取った。
「………………………………。ハハハッ。アーハッハッハッハー!」
しばらく黙々と手紙に目を通していたエラクレスは突然狂ったように笑い始めた。
「クークックック……ウヒャヒャ!ウッヒャヒャヒャヒャヒヤ!カーカッカッカー。グフフフフッ…フフフフフフフ…ダーハッハハッハー!ウハハハハッ!」
「エ…エラクレス様……流石に品というものが……」
笑いが止まらないエラクレスにフィリクは少し顔をしかめて苦言を呈す。
(そんなに嬉しい知らせなどがこの世に存在するのだろうか?)
同時にフィリクはそう思った。
「あー苦しっ!グフフ…笑い死ぬ!ヌアッハー!ほらっ!お前も読め、笑うぜ…ククッ…」
エラクレスはフィリクに手紙を投げ渡すと再び笑い出した。
「…………………(ブルブル)」
フィリクは肩を震わせた。
「エラクレス様!これは………」
フィリクは恐る恐る顔を自らの主君に向けた。彼にとってはとても笑えるようなことではなかった。しかし、主君は笑っている。
(このような方では無かった筈……やはり、あの夜からか…。)
フィリクはまだ記憶に新しい昨年の年末行事を思い出した。ネリーキア王国との差に気圧されたものだ。
(あまり…そちら側の…いや、それは後だ。)
寄り道をしそうになった思考をもとに戻す。
「フェンネ殿下はどうなさるおつもりでしょうか?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
<時は遡る>
「ぬわっ!」
スッテン
「「「殿下!!!」」」
氷に滑って倒れる少年を周囲の者達が取り囲む。
「お怪我は……」
「クソ……エラクレスめ………クソう……。俺は……次の王…ネリーキア王なんだぞ!やがてフェンネ3世になる男だぞ!」
少年はそれに反応を示さず、ここには居ないエラクレスに悪態をつく。
少年こそ、反逆者エラクレスの捕縛という武功を欲して遠路はるばる……それも真冬にやって来たネリーキア王国第一王子フェンネだ。
現在彼の提案による奇襲作戦を実行中である。
海に張った氷の上を通るため連れてきた兵士はほとんどノース辺境伯領に置いてきており、百名程の騎士らだけである。当然、氷が割れないようにするため軽装であり、鎧というより防寒具が多めに見える。
「殿下…今からでも遅くはありませぬ。一度屋敷へ戻り、春に再び万全を期すとしましょう。この有り様では宰相とて陰謀の手駒を動かせますまい。」
氷上に出て約1日…同行していた第5騎士団長は撤退を進言する。彼にも立場があり、ここでフェンネにくたばってもらうわけにはいかないのだ。
(辛い……辛い……辛い……何が辛いって、こんなに寒いのに熱々の酒とスープを飲めないのがとても辛い。)
ここは氷上。大事なことだからもう一度言う。ここは氷上なのだ。火を起して真下の氷が溶けて100人仲良く強制寒中水泳なんて終わってる。
元々極寒であることに加えて除雪しながらの行軍……息抜きもない。騎士達の士気は……否、この際士気だけならまだマシだ。
団長が危惧しているのは……
『正気度』
いつ、誰かが正気を失って狂人と化して同士討ちが起きてもおかしくない。団長も許されるならば大声で叫びたいと思っているのを強靭な精神で耐えている。
「………いち……」
「はっ!?」
フェンネは答えたが、小さすぎて聞き取れなかった。
「んがいち……」
再び繰り返すが、やはり小さい。
「万が一にも!ラント奴に手柄を奪われてしまうかも知れん!それだけは絶対に避けねばならん!あの賤民は高貴な血筋を引くこのフェンネによって裁かれるべきなのだ!無責任な事を言うな!」
フェンネは吠えた。
「これ以上不満を口にする者は叩き斬る!」
「「「……………。」」」
団長は天を仰いだ。
「さあ!進め!完遂まで近いぞ!」
「…………ははっ!」
生真面目な団長は従うより他なかった。団長は指示すぐにを飛ばす。
(長居は危険だ。撤退できないならもう突き抜けるしかない。アメーナ神よ…我らを守り給え…)
集まっていた騎士達も荷物と武器を持ち直し行軍を再開。
棒を前に出して安全を確認し…
邪魔な雪を除き…
日の光も届かぬ極寒の中を…
神や思い人の名を呟きながら…
身を震わせながらだだ歩く…
そうして進むこと数時間……
「見よ!明かりだ!」
先頭を歩いていた騎士が言った。
「本当か?!」
ブツブツブツブツ、飽きもせず呪文やお経のようにずっーーーーーーと仇敵エラクレスを罵っていたフェンネが先頭に向けて雪の中を駆け出した。疲れ果てていた騎士達の目にも生気が宿る。
「はあ…はあ……どこ…だ…?」
「あ、あそこです!」
息切れするフェンネに騎士は光の方向を示す。
ポツ、ポツ、ポツ、と確かに日の光とは違う光が見えた。
「やっと…やっとだな…」
そう言ってフェンネは一度目を閉じて…
大きく見開いて…
「エラクレス!覚悟は良いか!?今頃貴様は必死になって獣もどき共に泣きついているのだろう!実力も血筋もないくせにちょっと上手く立ち回れたからと言って、さも全てが自分の力のように王都で調子に乗った良い罰だ!やはり神は見ている!貴様のような王家の血筋を穢した下賤な者がのさばっているのを決して許しはしないのだ!エラクレス!今、貴様に高貴な正義の鉄槌を下してやる!そしてせめてもの慈悲だ!王家の恥たる貴様のことは消し去ってやる!ありがたかろう!誰からも笑いものにされることはないのだからな!感謝するが良い!」
今まで胸に秘めていたエラクレスへの思いをありったけの大声で叫んだ。彼にとってここまで大きな声を出したことは無かった。
「剣を抜け!戦闘態勢!」
団長の凛とした声で指示が出るが、それを待たず騎士達は我先に明かりへ向けて駆け出していた。
騎士という存在であることの性か、この過酷な所からいち早く脱したいという思いからか、どちらかは知らないがとにかく騎士達は我武者羅に走った。
そしてそれを団長は静かに見ていた。
(ようやくこの地獄から開放される……私は……やり遂げたのだ……。)
あと…少し…
もう少し……
途中で滑って転ぶ騎士も現れたが、気に掛ける者などいない。戦功、戦利品は早い者勝ちだ。
「カカレ…。」
「獣王陛下ばんざーい!」
「勝利、勝利だー!」
「飲むぞ、飲むぞ!」
「うちの女に指揮られて喜ぶザコ亭主は武功をあげたのかしら?駄目なら今度こそ…」
数々の歓声(一部例外)にエラクレスは騎乗し金獅子の状態で右手を振って応える。
左手には鎖が握られており、その鎖は体の自由を奪われ、ボロ服を着せられたバルデグントの首輪に繋がっている。
「なかなか良い演出だよな?」
「そうですね♪民に力強い王を印象付けられるでしょう♪」
「獅子人も忠誠を強めるでしょう。」
「あ!ズルい!陛下!狼人は、常に完全なる忠誠心を持っております!」
などと他愛もない会話をしながら街中を歩き回って最後に勝利宣言をして凱旋式を終わった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「よっと、着いたぞ。ここがこれからお前達が働く場所だ。」
エラクレスは久しぶりにエラクレス城に来ていた。
理由は今回の戦争で農奴身分に落した者達を案内するためだ。
「って…言っても今頃は一面雪景色だな。」
(雪に埋もれる農場と家屋。そして向こうに見える港町も風情があって良いな。)
「た、高あ~い。陛下、とても素敵ですね!」
…とはしゃぐのは精神が健全化したバルデグントだ。あの後それっぽい薬を飲ませて魔法を使ったら多少は回復して、実は仲間達は農奴として生きていけることを伝えたら涙腺が崩壊したのもも精神は復活した。
『じゅ…獣王陛下の御恩は…い、一生忘れません!この身……どうぞお好きにしてください!』
…と復活バルデグントは言ったが…
(俺が侵略しなければ無かった話なのに感謝されるって…変なことだな。)
…とエラクレスは思っていた。
「お~い。フィリク~。居るか?」
そう言いながらノック無しにドアを開ける。
「お待ちしておりました。」
フィリクはいつも通りピシッと音が出るほど直立していた。
「で、農奴を連れてきた。外で待たせているが…ざっと3000人だな。『俺の大農場計画』もそろそろ終わりそうだな。」
「はい、暇さえあれば至るところから奴隷を買い集めていらしましたから土地も大分埋まりました。これだけの人数を入れますと……あと3割ほどでしょうか?」
「そうか、そんじゃ後は任せた。乾燥寒冷地帯から連れてきたから農作業未経験者が多いが…」
「はい、お任せください。万が一反乱が起きたとしましても守備軍と共に鎮圧します。」
守備軍というのは配下の魔物や直轄地の若者、狼王国、獅子王国、虎・豹王国の兵士達で編成された軍のことだ。
(はっきり言って珍しい魔物を配下にしたり、ゴブリンとかは勝手に増えたり、派遣される兵士は各王に一任していたりするから、俺でも詳しくは把握してない。)
「頑張れよ。」
そう言ってエラクレスは出口に歩を進める。
(次は……一応母上に無事に戻ったと報告しに行くか。心配してくれていそうだし。)
…と考えていたその時、窓の外が暗くなった。
ギシギシ…
窓ガラスが軋むような音が鳴る。
「今、開けます。」
フィリクは特に驚いたような様子はなく窓に向かう。
(風竜空戦隊…と、ゴブリン?)
エラクレスは探知魔法で察する。
「どうも、ご苦労。」
フィリクは何かを受け取ったようだ。
「ギ!」
「グウ!」
…とゴブリンと風竜の返事らしき声がした。
「エラクレス様、南軍団総司令官のゴブキンから伝令書が届きました。」
「見せろ。」
「はっ!」
エラクレスは伝令書を受け取った。
「………………………………。ハハハッ。アーハッハッハッハー!」
しばらく黙々と手紙に目を通していたエラクレスは突然狂ったように笑い始めた。
「クークックック……ウヒャヒャ!ウッヒャヒャヒャヒャヒヤ!カーカッカッカー。グフフフフッ…フフフフフフフ…ダーハッハハッハー!ウハハハハッ!」
「エ…エラクレス様……流石に品というものが……」
笑いが止まらないエラクレスにフィリクは少し顔をしかめて苦言を呈す。
(そんなに嬉しい知らせなどがこの世に存在するのだろうか?)
同時にフィリクはそう思った。
「あー苦しっ!グフフ…笑い死ぬ!ヌアッハー!ほらっ!お前も読め、笑うぜ…ククッ…」
エラクレスはフィリクに手紙を投げ渡すと再び笑い出した。
「…………………(ブルブル)」
フィリクは肩を震わせた。
「エラクレス様!これは………」
フィリクは恐る恐る顔を自らの主君に向けた。彼にとってはとても笑えるようなことではなかった。しかし、主君は笑っている。
(このような方では無かった筈……やはり、あの夜からか…。)
フィリクはまだ記憶に新しい昨年の年末行事を思い出した。ネリーキア王国との差に気圧されたものだ。
(あまり…そちら側の…いや、それは後だ。)
寄り道をしそうになった思考をもとに戻す。
「フェンネ殿下はどうなさるおつもりでしょうか?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
<時は遡る>
「ぬわっ!」
スッテン
「「「殿下!!!」」」
氷に滑って倒れる少年を周囲の者達が取り囲む。
「お怪我は……」
「クソ……エラクレスめ………クソう……。俺は……次の王…ネリーキア王なんだぞ!やがてフェンネ3世になる男だぞ!」
少年はそれに反応を示さず、ここには居ないエラクレスに悪態をつく。
少年こそ、反逆者エラクレスの捕縛という武功を欲して遠路はるばる……それも真冬にやって来たネリーキア王国第一王子フェンネだ。
現在彼の提案による奇襲作戦を実行中である。
海に張った氷の上を通るため連れてきた兵士はほとんどノース辺境伯領に置いてきており、百名程の騎士らだけである。当然、氷が割れないようにするため軽装であり、鎧というより防寒具が多めに見える。
「殿下…今からでも遅くはありませぬ。一度屋敷へ戻り、春に再び万全を期すとしましょう。この有り様では宰相とて陰謀の手駒を動かせますまい。」
氷上に出て約1日…同行していた第5騎士団長は撤退を進言する。彼にも立場があり、ここでフェンネにくたばってもらうわけにはいかないのだ。
(辛い……辛い……辛い……何が辛いって、こんなに寒いのに熱々の酒とスープを飲めないのがとても辛い。)
ここは氷上。大事なことだからもう一度言う。ここは氷上なのだ。火を起して真下の氷が溶けて100人仲良く強制寒中水泳なんて終わってる。
元々極寒であることに加えて除雪しながらの行軍……息抜きもない。騎士達の士気は……否、この際士気だけならまだマシだ。
団長が危惧しているのは……
『正気度』
いつ、誰かが正気を失って狂人と化して同士討ちが起きてもおかしくない。団長も許されるならば大声で叫びたいと思っているのを強靭な精神で耐えている。
「………いち……」
「はっ!?」
フェンネは答えたが、小さすぎて聞き取れなかった。
「んがいち……」
再び繰り返すが、やはり小さい。
「万が一にも!ラント奴に手柄を奪われてしまうかも知れん!それだけは絶対に避けねばならん!あの賤民は高貴な血筋を引くこのフェンネによって裁かれるべきなのだ!無責任な事を言うな!」
フェンネは吠えた。
「これ以上不満を口にする者は叩き斬る!」
「「「……………。」」」
団長は天を仰いだ。
「さあ!進め!完遂まで近いぞ!」
「…………ははっ!」
生真面目な団長は従うより他なかった。団長は指示すぐにを飛ばす。
(長居は危険だ。撤退できないならもう突き抜けるしかない。アメーナ神よ…我らを守り給え…)
集まっていた騎士達も荷物と武器を持ち直し行軍を再開。
棒を前に出して安全を確認し…
邪魔な雪を除き…
日の光も届かぬ極寒の中を…
神や思い人の名を呟きながら…
身を震わせながらだだ歩く…
そうして進むこと数時間……
「見よ!明かりだ!」
先頭を歩いていた騎士が言った。
「本当か?!」
ブツブツブツブツ、飽きもせず呪文やお経のようにずっーーーーーーと仇敵エラクレスを罵っていたフェンネが先頭に向けて雪の中を駆け出した。疲れ果てていた騎士達の目にも生気が宿る。
「はあ…はあ……どこ…だ…?」
「あ、あそこです!」
息切れするフェンネに騎士は光の方向を示す。
ポツ、ポツ、ポツ、と確かに日の光とは違う光が見えた。
「やっと…やっとだな…」
そう言ってフェンネは一度目を閉じて…
大きく見開いて…
「エラクレス!覚悟は良いか!?今頃貴様は必死になって獣もどき共に泣きついているのだろう!実力も血筋もないくせにちょっと上手く立ち回れたからと言って、さも全てが自分の力のように王都で調子に乗った良い罰だ!やはり神は見ている!貴様のような王家の血筋を穢した下賤な者がのさばっているのを決して許しはしないのだ!エラクレス!今、貴様に高貴な正義の鉄槌を下してやる!そしてせめてもの慈悲だ!王家の恥たる貴様のことは消し去ってやる!ありがたかろう!誰からも笑いものにされることはないのだからな!感謝するが良い!」
今まで胸に秘めていたエラクレスへの思いをありったけの大声で叫んだ。彼にとってここまで大きな声を出したことは無かった。
「剣を抜け!戦闘態勢!」
団長の凛とした声で指示が出るが、それを待たず騎士達は我先に明かりへ向けて駆け出していた。
騎士という存在であることの性か、この過酷な所からいち早く脱したいという思いからか、どちらかは知らないがとにかく騎士達は我武者羅に走った。
そしてそれを団長は静かに見ていた。
(ようやくこの地獄から開放される……私は……やり遂げたのだ……。)
あと…少し…
もう少し……
途中で滑って転ぶ騎士も現れたが、気に掛ける者などいない。戦功、戦利品は早い者勝ちだ。
「カカレ…。」
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