追放、転生、完璧王子は反逆者!!!

ぱふもふ

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第三章反逆王子

鞭打ちツアー②

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「来たぞー!あいつだ!」

「全獣人の敵だ!」

「もっと強くやれ!」

「かあちゃん、あれだあれ?」

「ああ、愛しの坊や。あれは坊やとかあちゃんと獣王陛下を襲おうとした悪い奴なのよ。」

「え?!かあちゃんを!?……びぇーん!しんじゃえ!しんじゃええー!わるいやつなんかしんじゃえー!」

ビース都の住民は今日この日、新年を迎えた時以来の盛り上がりを見せていた。民衆の興味はもちろん捕虜となったフェンネ達である。

バチッ!

バチッ!

バチッ!

「オラァ!ちゃんと進め!列を乱すな!」

今回は捕虜達を縛って一箇所に固定するのではなく、数珠つなぎに拘束するものの可動域広めの足枷をつけてビース都中を歩き回らせながら鞭打ちを行うという物だった。

(ふ~む。なかなか良い。)

エラクレスはその様子を追う形で馬車に乗って見ていた。

(昨日はいかにも刑罰って感じだったけど、これはお祭りだな。個人的にこっちのほうが戦争での勝利感を示せて好きだな。)

と、そこでジークリンデ、バルデグンドを抱き寄せた。

「お前たちの時もこうすれば良かったな。今からでも適当な余罪をでっち上げてやるか?」

…と悪い顔して囁いた。

「ひえん!…でも…それで御満足いただけるのなら…受け入れるのが奴隷…。」

「おおお、恐ろしや、恐ろしや…。明日は、否、今日は我が身…恐ろしや…。」

…と微妙に頬を紅潮させるジークリンデとハラハラと恐怖で涙を流すバルデグンド。

「冗談だ。」

((ほ…。))

「お前たちの痴態は俺だけのものだ。」

///ボン!///

「「///へいかあ~///」」

(あ~。やはり多数の女を屈服させてこその王だ。ハーレムに抵抗を持っていたことがバカみたいだ。もっと早く作れば良かった。え?こんなことして良いのかって?だって似たようなのを昨日も見たし。って…お?なんだ?馬車が止まった。)

「おい!おまえ!立たぬか!このグズめ!」

どうやら鞭に打たれながら歩くという過酷さに耐えかねて倒れ伏した捕虜がいるようだ。

(あーあーあーあー、何やってんだ。防御力を上げる魔法をかけてやったのに。回復させるか?)

…と魔法をかけようとしたが、急にエラクレスの中に妙案が浮かんだ。

(いや、一人くらい、いいや。)

そして冷たい顔をして馬車を出る。

「どうした?」

「じゅ…獣王陛下!申し訳ございません!すぐさま立たせますので…」

「良い。」

「は…!?」

エラクレスは倒れ伏した捕虜に手を向ける。

「…………あ、体が!」

ピクリとも動かなかった捕虜が動き出す。どうやら回復したようだ。

そして…

「やれ。」

即座にエラクレスは言った。

「恐れながら…どう言った…」

困惑する兵士にはっきりと伝える。

「打ち殺せ。」

「は…ははっ!」

捕虜の周りに鞭を持った複数人の兵士が集まった。

「ひいいいいいいい!!やめてくれ!」

捕虜は泣き叫んで助けを乞う。

バチッ
バチッ
バチッ

「いたい!歩く!歩きますから!どあうかあ!」

そう言って立とうとするも容赦なく連続して鞭が打たれてとても立てない。

バチッ
バチッ
バチッ
バチッ
バチッ
バチッ
バチッ
バチッ
バチッ
バチッ
バチッ
バチッ
バチッ
バチッ
バチッ
バチッ

さっき回復したばかりの新品の体が瞬く間にボロボロになっていく。

「ぐわあ!るああ!あぐ!ぎぎぎぎき!ががががががぎぎ!あががががあがっぐあががぎぎぎ…!ばぶぶぶぶべれれれれれれれれぐぐだびだりざずななな…。」

この凄惨な光景を見て獣人たちの盛り上がりは更に勢いを増した。

「いい気味だ!」

「ざまあみろ!我らに楯突くものは皆こうなるのだ!」

「侵略者に死を!獣王国万歳!」

「「「侵略者に死を!獣王国万歳!!!」」」

既に獅子王リチャードから軍の召集通達があったため、元々興奮状態だったのが更に高まっていた。

「ひいいい!」

「こんな…人がすることか?!」

「ああ…神よ…」

一方で同胞が無残に殺されていく様をじっくりと見せつけられたフェンネ等はすっかり心を恐怖で取り込まれた。

「あばばばば…」

ストン

フェンネ自身もすっかり腰を抜かしてしまった。

「死んだな。」

エラクレスはめった打ちにされた捕虜の死体に手を向ける。

すると、舗装された石畳の石の中に死体が沈み始めた。

(何のことはない。普通の土魔法だ。ちょっとばかしコツと魔力が必要だけど。)

死体が完全に沈むとエラクレスは馬車に乗った。

「行進再開!」

それを待って獅子王女であるメリアが凛とした声で指示を飛ばす。

「おらあ!立てコラァ!」

バシッ!

腰を抜かしたフェンネに兵士が鞭を地面叩きつけて威嚇する…が…

「ああ…ああ…」

必死に足を動かしても立てなかった。

「こんにゃろお!あいつみたいになりてえのか?!ああん?!」

それを聞き、記憶に新しいあの情景が鮮明に浮かび上がった。

「ひいいいいい!立ちます!立ちます!ある、歩きますううううう!」

涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら立とうと試みる。すると腰が抜けていたのが嘘のように気づいたら立っていた。

…と同時に…

ジョロジョロ

ボトッボトッボトッ…

「うわあ!きったね!」

フェンネは糞尿を漏らしてしまった。

「マジかよ!おもろ!どうやらケダモノはお前の方だったようだな。人目を憚らずにお漏らしなんてな。」

…と獣王は言ったとか言ってないとか。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

<同時期 ネリーキア城 王の間>

ネリーキア王フェンネ2世、第二王子ラント、第三王子シャルル、宰相ネルキン、ストラス辺境伯ジョシュア、そして各王子の母達、その他数人の貴族が集って一つのを見ていた。

さっきまではジョシュアがルイーズの辺境伯継承とその婚姻を支持するエカルム王国の貴族達の声明をフェンネ2世とネルキンに伝えていたが、急にこの幻影が現れて協議は打ち切られた。

そこに映っていたのは惨めにも囚われの身となり、敵の鞭に打たれ街中を歩き回らせられ恥を晒し続けるフェンネと騎士達の姿だった。

「なんなのだ…これは…。」

ラントは静かに何度目かの激怒した。必ず、かの邪智暴虐の賤民エラクレスを除かねばならぬと決意した。ラントは政治がわかる。策を廻らし、人を転がして暮らしてきた。したがって自身に対する邪悪に対しては人一倍に敏感であった。

「なんと言うことだ、奴らは王族に対する礼を知らぬ。」

一人の貴族が声を漏らした。

彼らの価値観において王族や貴族、聖職者は捕虜であっても丁重に扱い解放・身代金と交換するのが常であった。

今、王の間に映し出されているようなことは身代金が期待できない下級の兵士に憂さ晴らしに行うのであり、ましてや殴り殺すなどありえないことである。

「おのれ!ケダモノどもの分際で!王の血を辱めおって!キイイイイ!」

フェンネの母であり、現エカルム王の妹である『キャンディス』に至っては大勢の前で鞭で打たれ、歩き回された挙句の果てに糞尿を漏らすという辱めを受ける我が子の姿に屈辱に悶えるあまり失神してしまった。

ラントの母であり、ネルキンの娘である『コンスタンス』はまさかの事態に唖然としている。

(ち…父上!)

彼女は思わず縋るように父であり宰相であるネルキンに目を向ける。

(く…まさかこんな…あの小僧め…余計なことを…。)

彼は何年ぶりかの冷や汗をかいた。

彼は当初の策通り狼王を味方につけるため王都で狼人と関わりがある商人のツテを使って使者を派遣しようとしたが、北方の海は凍っていて船が通れず、山脈も雪で塞がれているという情報があったから派遣を見送っていた。

『(数人の使者程度が通れない道を武装した軍兵が通れるわけがなかろう、馬鹿めフェンネ。)』

勇み足で王都から出陣するフェンネ派の騎士団を見てそう馬鹿にしていた。

しかしこの幻影があるということはフェンネが攻め込んだ、あるいは狼人が攻め込んで来たか。

(寒さに強い獣人ならば山を越えることは可能かもしれぬ。否、そもそもあの賤民エラクレスはこうなることを予想して兵を伏せて待ち伏せていたのではないか?地の利は向こうにあるのじゃ。)

それが一番現実的だと思った。

だが、いずれにせよ策は失敗に終わったということだろう。

…と思ったがふと気になることがあった。

(じゃが、この幻影は本当なのかのう?)

彼は騎士団に密偵を潜らせたものの、王都とノース辺境伯領の距離は歩けば一ヶ月近くかかるため情報が全く入って来ないのである。直近の『現在ノース辺境伯領で立ち往生』が彼の持つ最新の情報だった。

しかも、これは所詮幻影魔法によって作られたものだ。これをフェイクと断定して狼王との友好を探る手も有りだ。

(ならば出来ることは詳しいことが分かるまでに諸侯に注意喚起を行い万が一に備えること…じゃな。)

考えがまとまったところでフェンネ2世に伝えようと歩み出たが、そこで幻影はエラクレスを映した。背後には狼王エカ、獅子王リチャード、虎王アドルフ達も映っている。

エラクレスは高台に登り拳を掲げると集まっていたビース都の民から大歓声があがる。彼の前にはフェンネら捕虜が体中をボロボロにされて膝をつかされていた。

「あと…何度この憎たらしい顔を見なくてはならないのか…。」

ラントが静かに怒りをたぎらせる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

歓声がひと息つくとエラクレスは『威嚇Ⅱ』を発動して語り始める。

「誇り高き獣神の民よ!余は神々の加護を受けこの地に君臨する諸君らの王である!」

そこで区切り、姿を狼人、獅子人、虎人、豹人の順に変えると再び大歓声があがる。

「先日の僭主討伐と言い、この度の侵略者の撃滅と言い勝利が続くのは神々の恩寵であること明白である。」

「「「オオー!!!」」」

…と兵士が雄叫びをあげると…

「「「オオオオオオオオオオ!!!」」」

…と民も返す。

「そうだ!」

エラクレスは『威嚇Ⅲ』を使って語気を強める。

「我らが領域は穢されたのだ!この者どもによって!」

…と言うと各所から「ぶっ殺せー」「やり返せー」など怒りの声が聞こえる。

「このまま何もせずに侵略を受け続けるのか!?果たしてそれで先祖の誇りが守られるか?!子々孫々の営みが安寧と確信できるのか?!」

(『威嚇Ⅴ』畳み掛ける。)

「否!断じて否!」

その一瞬、一言はエラクレスを慕う民たちにとってとても重く感じた。

(『威嚇Ⅱ』に戻す。)

「余はこの危機を打破するためにネリーキア王国に侵攻し、彼の地を平定すること以外に道はないと考えている!」

「「「オオー!!!」」」

「無論!誰であれネリーキア王国に組み、我らに抗する者共も粉砕する!」

そして思いっきり息を吸い込む。

(最後の仕上げに『威嚇Ⅴ』)

「皆!覚悟は良いかあああ!」

「「「獣王陛下万歳!!!」」」

「「「獣王陛下万歳!!!」」」

「「「獣王陛下万歳!!!」」」

「奴らに死をー!」

「「「奴らに死をー!!!」」」

「獣神よ、御照覧あれ!」

「「「獣神よ、御照覧あれ!!!」」」

そしてエラクレスが手を掲げると大歓声が巻き起こった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

今のを最後にスーッと幻影は消えた。

あまりに唐突な事で皆がポカンとして誰も言葉を発しなかった。

「………でどうするのじゃ?」

国王フェンネ2世が沈黙を破った。

「すぐに…諸侯に開戦を知らせ、軍の召集を行いましょう…。」

ラントは震えながら言った。そこに普段の薄気味悪さがない。

どうやらあまりの迫力に呑まれてしまったようだ。

だがそれに異を唱える者が居た。囚われのフェンネの母、キャンディスだ。

「否…なんとしても!フェンネを…フェンネを…取り戻すのじゃ!そちらが先じゃ!あの子はエカルム王家の血を継ぐ子じゃ!身代金の交渉じゃ!」

血相を変えてフェンネ2世に縋り付くキャンディス。

「この際…よそ者の血など、どうでもいい!国が滅ぶか残るかの事態なのだぞ!無様を晒した者のことなど後回しに決まっているだろ!」

ラントにしては珍しく顔真っ赤にしてブチ切れた。

「ななな、なんじゃとおおお?!臣下の血が混ざった痴れ者王子の分際でえええ!真の王家の者を見捨てると申すのかああああ?!」

高貴な生まれという誇りはどこ行ったのか。大いに乱れて怒り狂うキャンディス。

「いや、ラントのクソ野郎の言う通りだ。」


その声は突然だった。

全員が入り口を振り向く。

「き…貴様が…なぜここに…」

ラントが思わず声を漏らした。
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