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第一章 クリスタル領で再会
10、異世界の小部屋1
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「ここはクリスタル家の屋敷です。よかった! 目が覚めて……」
「君が、助けてくれたんだな」
「運んだのは他の者ですわ」
目を覚ましたリアムの言葉に、オリビアは少し眉を下げ、微笑み謙遜すると、彼は小さく首を横に振り手を握り返した。
「オリビア嬢。あなたが私の名を呼んで、こうして手を握っていてくれたから目覚めることができたんだ。心から感謝します」
その言葉と握り返された手の感覚で、オリビアはいまだに自分がリアムの手を握っていることに気づく。途端に恥ずかしくなって慌てて手を離した。
「失礼いたしました! 一瞬反応があったので、目を覚ましていただこうと必死になってつい……」
オリビアが離した手は、リアムによってもう一度掴まれ、握り直された。
「……本当に感謝している。ありがとう、オリビア嬢」
「い、いえ。私は何も……」
「オリビア嬢……」
もう一言、リアムが何かを言いかけたその時、部屋のドアが音を立てて勢いよく開いた。驚いたのかリアムが握っていた手の力を緩める。すかさずオリビアはベッドから自分の膝の上に手を引いた。
「リアム様!」
エリオットがトーマス医師と共に入室する。後ろにはリタが控えている。
「エリオット……。久しいな。再会がこんな形になって、迷惑をかけてすまない」
「そんなこと仰らないでください! ご無事で何よりです。部下の方達も怪我はひどいですが、命に別状はないですよ」
久しぶりに再会した友人が目を覚まし、安堵からか涙ぐんでいるエリオット。その表情は父、ジョセフによく似ていた。
「ありがとう。……ところで、部下たちの様子は?」
「あ、それについてはトーマス医師から……」
リアムが部下たちの様子を窺う。怪我がひどいという言葉が気になってるようで、眉間に皺が寄り少し険しい表情になった。医師に説明を促すエリオットも、声が澱む。
トーマス医師が説明を始める。彼もまた、その表情は険しい。
オリビアはその様子から話の内容があまり良いものではないことを予感した。
「はい。まずはジャック様ですが、大きな怪我は回復魔法で治っておりましたので問題ありません。血が足りていないことと、疲労で現在も起き上がるのは難しいですが、これももう二、三日の療養で回復する見込みです。現在は意識が戻り、会話も可能な状態です。落ちた体力が戻れば、騎士団へも復帰が可能です」
「そうか……。よかった」
リアムが安堵の息を漏らしながら、言葉を噛み締める。オリビアも話を聞きながら心底良かったと少し肩の力を抜いた。
「ただ、セオ様は……」
>>続く
「君が、助けてくれたんだな」
「運んだのは他の者ですわ」
目を覚ましたリアムの言葉に、オリビアは少し眉を下げ、微笑み謙遜すると、彼は小さく首を横に振り手を握り返した。
「オリビア嬢。あなたが私の名を呼んで、こうして手を握っていてくれたから目覚めることができたんだ。心から感謝します」
その言葉と握り返された手の感覚で、オリビアはいまだに自分がリアムの手を握っていることに気づく。途端に恥ずかしくなって慌てて手を離した。
「失礼いたしました! 一瞬反応があったので、目を覚ましていただこうと必死になってつい……」
オリビアが離した手は、リアムによってもう一度掴まれ、握り直された。
「……本当に感謝している。ありがとう、オリビア嬢」
「い、いえ。私は何も……」
「オリビア嬢……」
もう一言、リアムが何かを言いかけたその時、部屋のドアが音を立てて勢いよく開いた。驚いたのかリアムが握っていた手の力を緩める。すかさずオリビアはベッドから自分の膝の上に手を引いた。
「リアム様!」
エリオットがトーマス医師と共に入室する。後ろにはリタが控えている。
「エリオット……。久しいな。再会がこんな形になって、迷惑をかけてすまない」
「そんなこと仰らないでください! ご無事で何よりです。部下の方達も怪我はひどいですが、命に別状はないですよ」
久しぶりに再会した友人が目を覚まし、安堵からか涙ぐんでいるエリオット。その表情は父、ジョセフによく似ていた。
「ありがとう。……ところで、部下たちの様子は?」
「あ、それについてはトーマス医師から……」
リアムが部下たちの様子を窺う。怪我がひどいという言葉が気になってるようで、眉間に皺が寄り少し険しい表情になった。医師に説明を促すエリオットも、声が澱む。
トーマス医師が説明を始める。彼もまた、その表情は険しい。
オリビアはその様子から話の内容があまり良いものではないことを予感した。
「はい。まずはジャック様ですが、大きな怪我は回復魔法で治っておりましたので問題ありません。血が足りていないことと、疲労で現在も起き上がるのは難しいですが、これももう二、三日の療養で回復する見込みです。現在は意識が戻り、会話も可能な状態です。落ちた体力が戻れば、騎士団へも復帰が可能です」
「そうか……。よかった」
リアムが安堵の息を漏らしながら、言葉を噛み締める。オリビアも話を聞きながら心底良かったと少し肩の力を抜いた。
「ただ、セオ様は……」
>>続く
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