11 / 230
第一章 クリスタル領で再会
11、異世界の小部屋2
しおりを挟む
トーマス医師がもう一人の部下、セオについて口を開く。ジャックの時より明らかに声は低く、状況が芳しくないことを物語っている。
「セオ様は、まず腕に負った怪我が原因で高熱にうなされておりました。こちらはすでにエリオット様の浄化魔法で治癒しており、命に別状はありません。じきに目を覚ますでしょう。しかし、両足の腿が折れており……私では手の施しようがありません。このままですと歩くこともできなくなります」
その言葉にリアムが目を見開き、布団を握りしめる。相当ショックだったのだろう。オリビアがエリオットの顔を覗くと、事前に事情を聞いていたであろう彼は俯いていた。今度は心配でリアムに視線を移した。
「……残念だ。セオは、優秀な部下だったんだ」
布団を固く握りしめながら、リアムがポツリとそう言った。なるべく表情には出さないようにしているが、彼が心底悔しそうだとオリビアは思った。
「すまない……。少し疲れたようだ。しばらく休ませてもらってもいいだろうか」
「も、もちろんです! また後ほどお伺いします。さ、みんな行くぞ!」
リアムの申し出に、エリオットがみんなを引き連れ部屋を出ていく。
「オリビア! 早く来ないか!」
「すぐに追いかけますわ」
エリオットに促されたが、オリビアはすぐには椅子から立ち上がらず、部屋の中でリアムとふたりきりになった。リアムの表情を窺いながら話し始める。
「リアム様。セオ様のこと、私にお任せいただけないでしょうか?」
予想外の言葉に、リアムは驚きの表情を隠せないようだった。
「失礼だが、あなたに何ができると? 医師すらお手上げだというのに……」
「今は詳しくはお話しできませんが、心当たりがあります。万が一うまくいかなくても、今より悪くなることはないでしょう」
リアムの簡単に信じることはできないと言いたそうな、怪訝そうな視線に対し、オリビアは薄紫色の瞳の真剣な眼差しを返す。
信頼に値すると思ったのか、リアムが小さく頷いた。
「……わかった。オリビア嬢、セオを頼みます」
「はい!」
リアムの承諾の言葉に元気よく返事をして、オリビアは彼の部屋を後にした。
>>続く
「セオ様は、まず腕に負った怪我が原因で高熱にうなされておりました。こちらはすでにエリオット様の浄化魔法で治癒しており、命に別状はありません。じきに目を覚ますでしょう。しかし、両足の腿が折れており……私では手の施しようがありません。このままですと歩くこともできなくなります」
その言葉にリアムが目を見開き、布団を握りしめる。相当ショックだったのだろう。オリビアがエリオットの顔を覗くと、事前に事情を聞いていたであろう彼は俯いていた。今度は心配でリアムに視線を移した。
「……残念だ。セオは、優秀な部下だったんだ」
布団を固く握りしめながら、リアムがポツリとそう言った。なるべく表情には出さないようにしているが、彼が心底悔しそうだとオリビアは思った。
「すまない……。少し疲れたようだ。しばらく休ませてもらってもいいだろうか」
「も、もちろんです! また後ほどお伺いします。さ、みんな行くぞ!」
リアムの申し出に、エリオットがみんなを引き連れ部屋を出ていく。
「オリビア! 早く来ないか!」
「すぐに追いかけますわ」
エリオットに促されたが、オリビアはすぐには椅子から立ち上がらず、部屋の中でリアムとふたりきりになった。リアムの表情を窺いながら話し始める。
「リアム様。セオ様のこと、私にお任せいただけないでしょうか?」
予想外の言葉に、リアムは驚きの表情を隠せないようだった。
「失礼だが、あなたに何ができると? 医師すらお手上げだというのに……」
「今は詳しくはお話しできませんが、心当たりがあります。万が一うまくいかなくても、今より悪くなることはないでしょう」
リアムの簡単に信じることはできないと言いたそうな、怪訝そうな視線に対し、オリビアは薄紫色の瞳の真剣な眼差しを返す。
信頼に値すると思ったのか、リアムが小さく頷いた。
「……わかった。オリビア嬢、セオを頼みます」
「はい!」
リアムの承諾の言葉に元気よく返事をして、オリビアは彼の部屋を後にした。
>>続く
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
65
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる