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第一章 クリスタル領で再会

11、異世界の小部屋2

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 トーマス医師がもう一人の部下、セオについて口を開く。ジャックの時より明らかに声は低く、状況がかんばしくないことを物語っている。

「セオ様は、まず腕に負った怪我が原因で高熱にうなされておりました。こちらはすでにエリオット様の浄化魔法で治癒しており、命に別状はありません。じきに目を覚ますでしょう。しかし、両足の腿が折れており……私では手の施しようがありません。このままですと歩くこともできなくなります」

 その言葉にリアムが目を見開き、布団を握りしめる。相当ショックだったのだろう。オリビアがエリオットの顔を覗くと、事前に事情を聞いていたであろう彼はうつむいていた。今度は心配でリアムに視線を移した。

「……残念だ。セオは、優秀な部下だったんだ」

 布団を固く握りしめながら、リアムがポツリとそう言った。なるべく表情には出さないようにしているが、彼が心底悔しそうだとオリビアは思った。

「すまない……。少し疲れたようだ。しばらく休ませてもらってもいいだろうか」

「も、もちろんです! また後ほどお伺いします。さ、みんな行くぞ!」

 リアムの申し出に、エリオットがみんなを引き連れ部屋を出ていく。

「オリビア! 早く来ないか!」

「すぐに追いかけますわ」

 エリオットに促されたが、オリビアはすぐには椅子から立ち上がらず、部屋の中でリアムとふたりきりになった。リアムの表情をうかがいながら話し始める。

「リアム様。セオ様のこと、私にお任せいただけないでしょうか?」

 予想外の言葉に、リアムは驚きの表情を隠せないようだった。

「失礼だが、あなたに何ができると? 医師すらお手上げだというのに……」

「今は詳しくはお話しできませんが、心当たりがあります。万が一うまくいかなくても、今より悪くなることはないでしょう」

 リアムの簡単に信じることはできないと言いたそうな、怪訝けげんそうな視線に対し、オリビアは薄紫色の瞳の真剣な眼差しを返す。

 信頼に値すると思ったのか、リアムが小さく頷いた。

「……わかった。オリビア嬢、セオを頼みます」

「はい!」

 リアムの承諾の言葉に元気よく返事をして、オリビアは彼の部屋を後にした。

>>続く
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