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第一章 クリスタル領で再会

25、空気が読める男、ジョージ2

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 一方、オリビアの護衛ジョージは、この会話を聞きながら別な方向に考えを巡らせていた。そして、リアムの言葉に、その考えが間違っていないことを確信する。

「……それで彼の注文も熟知しているんだ」

「はい。ジョージは特に大の甘党ですの。それに気に入ったらそればかりなので。リタは甘いものは得意ではないので軽食が多いですね」

「そういえば昔から、随分と仲が良かったな。君たちは」

「ええ、そうなんです。私たちずっと……」

「お待たせいたしました!」

 オリビアが話しかけたところに、アーノルドが注文の飲み物やデザートを持って現れた。

 おそらく最悪のタイミングだと、ジョージだけが気づく。

「アレキサンドライト公! 私とお嬢様は……」

「ジョージ! どうしたの? 温かいうちにいただきましょう。さあ、リアム様、召し上がってください」

「ああ、いただきます……」

 リアムの視線は、パンケーキではなく自分に向けられているとジョージは感じた。先ほどよりも目が据わっている。自分も最悪のタイミングで話が途切れてしまった。全てはこの鈍感な主人のせいだと、ジョージはオリビアを一瞥いちべつした。

 しかし、その行動もまた、リアムにとっては火に油を注ぐ行為だったようだ。おそらく無意識に彼の目と眉が近寄った。

「リアム様……。お口に合いませんか?」

 オリビアが心配そうにリアムを覗き込んだ。彼女にとってこの店は夢の国だが、リアムに悪趣味な店に料理まで不味いと思われていたらと不安で仕方なかったからだろう。ジョージは冷めた目でその光景を眺めていた。

「すまない、少し考え事をしていて。料理も飲み物もとても美味しい。実は私も結構な甘党なんだ」

「よかった! それを聞いて安心しましたわ。田舎では受け入れられていても、王都の方のお口に合うか心配でしたから……」

 安堵の笑顔を見せるオリビアに、リアムの表情も若干明るくなった。ジョージも内心ほっとして胸を撫で下ろしていた。このままいい雰囲気で自分のことは忘れてほしいと心から願った。

「この味ならきっと王都でも人気店になるさ。騎士団の連中が入り浸りそうだ」

「まあ嬉しい。学院に入学してから、本格的に王都への進出も考えてみようかしら」

 貴族学院の話題で、リアムは完全に広場にいた時の機嫌の良さに戻っていた。ジョージにはそれが不安だった。たぶん、彼は重大な勘違いをしている。

 しかし、それを自分から話すことは立場上難しい。どうしたものかと考えていると、リアムがさらに話を続けた。その声色は明るく、ジョージはさらに複雑な気持ちになった。

「貴族学院入学まで一ヶ月を切っているのか。私も基本的には王都での勤務だから、あちらで会えるのも楽しみだ。その時は私の気に入った店を案内させてほしい」

「はい。楽しみにしていますわ。三人でも話していましたの。王都の人気店を研究しよう、と」

「三人? ……連れて行くのはリタだけでは?」

>>続く
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