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第一章 クリスタル領で再会

24、空気が読める男、ジョージ1

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「いらっしゃいマッスルー!」

 オリビアはこの異国の言葉の挨拶が大好きだった。思わず笑顔が溢れる。

 横目でリアムを覗くと彼の表情は若干固い。ジュエリトスでは聞いたこともない挨拶で出迎えられ、彼は圧倒されているようだった。

 店内はアーノルド同様、体格が良い男の給仕が数名おり、客も男性のみである。リタに言われて美しい顔の男を採用したが、女性客は筋肉の圧力に耐えきれず来店することはまずなかった。
 四人はオリビア専用席へ案内され、腰掛ける。

「まさか筆頭公爵家のアレキサンドライト公にご来店いただけるとは光栄です。お嬢様もそういうお年頃になったのですね」

 アーノルドがメニューをリアムに差し出し、嬉しそうに口角を上げ、白い歯を覗かせた。彼はオリビアが十歳の頃からクリスタル家で護衛をしていたが、昨年怪我で配置換えを余儀なくされた時、『バルク』のオープニングスタッフにスカウトした。

「リアム様はお兄様のご友人なの。今日はお兄様が来客で相手できないから私がご一緒しているのよ」

「そうでしたか。邪推じゃすいしてしまい申し訳ございません。後ほどご注文を伺いに参ります」

 軽く会釈し、アーノルドは他の客の席へ向かう。注文を聞いているようだった。

「リアム様、何か気になるメニューはありますでしょうか?」

「あ、ああ、この『プロテインドリンク』というのは聞いたことがないのだが……」

「こちらは、他国から取り寄せた素材で、肉や魚、豆などに含まれる筋肉を作るための栄養素、プロテインが豊富に含まれている飲み物です。味は甘味があって、ミルクティー味、バニラ味、ココア味から選べます。ご一緒にプロテインパンケーキもおすすめですよ」

「なるほど。ではココア味のドリンクとパンケーキをいただこう」

「ジョージはいつものパフェとバニラのドリンク?」

「はい」

「リタは?」

「コーヒーとサラダチキンサンドをいただきます」

「私はワッフルと紅茶にするわ」

 オリビアがそう言ってメニューを閉じた瞬間、アーノルドが注文を聞きにやってきた。店内の空気には敏感なようだ。彼は優秀な店員である。

「君たちはよく、一緒にこの店に来ているのか?」

 注文の品を待つ間、リアムが三人に問いかける。この店に来てから、彼は少し元気がなさそうだ。街に着いた直後のようなワクワクと胸躍らせている様子が見る影もない。

「ええ。最低でも二週に一度は来ています。街の店に入るときは、三人とも同じ客という立場で楽しむことにしていますの」

 やはり性癖丸出しのこの店内の様子に気を悪くしたのだろうか。オリビアは冷静に返事をしつつも心配で目が泳いだ。

>>続く
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