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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様

45、Aクラス3

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「やあ、オリビア嬢。昨日は楽しかったよ」

「レオン殿下……」

 オリビアに挨拶しながらレオンは隣の席に座った。彼の美しい金髪が揺れ、かきあげると同時に無敵の王子様スマイルをオリビアに向けた。教室内がざわついている。

「今日からよろしく」

 輝く金髪との相乗効果で彼の白い肌も輝いている。さらに優しく微笑むその姿からは後光が差しているようだった。
 クラスメイトたちは遠くから高名な美術品でも眺めているような、神を崇めるような恍惚の眼差しでレオンを見ていた。中にはため息を漏らす者もいる。
 オリビアだけが項垂れ、げんなりとした表情で「よろしくお願いいたします」と呟いた。


 午前中、授業など一日の流れや寮のルールなど施設の説明を受けてオリビアは疲れ果てていた。
 担任が説明しながらレオンの顔色を伺い、何を勘違いしたのか隣のオリビアにもお伺いを立ててくる。
 その様子を見たクラスメイトたちから「やっぱり……」と呟く声も聞こえた。

「ねえ、オリビア嬢。やっぱり……何だろうね?」

 同じく聞こえていたレオンが耳打ちをして微笑む。途端に後方の席がざわついたが、オリビアの表情筋がピクリとも動かなくなっていることには気づいていない様子だ。
 もう、ただただ耐えて昼休みになったら大急ぎでこの場を去ろう。
 そうしたら午後からは施設の案内になるのでこの異常な状況からも逃れられるはず。オリビアは椅子を少し後ろへ引き、席を立ちやすいように浅く腰掛けた。

 ——ジリリリリ!

 午前の授業が終わったことを知らせるベルが鳴った。

「それでは、これから昼休みです。各自自由に過ごすように」

 担任のジョン・トルマリンは全体に声をかけた後、レオンに小さく頭を下げ教室を出た。忖度そんたく丸出しである。

 オリビアはそれらを気にとめることなく席を立ち「ジョージ、行きましょう」と右隣に座る護衛を急かし制服の袖を引っ張った。が、遅かった。

「オリビア嬢、昼食に付き合ってくれないかい?」

 オリビアが振り返り、自席の左側を見ると、そこには護衛二人を従えたレオンが立っていた。オリビアの顔が悲壮感で塗りつぶされる。

「もちろんヘマタイト君も。気になる女子生徒がいるなら二、三人誘っても構わないよ」

「やった! ありがとうございます!」

 ジョージが早速気に入った女子生徒を誘うべく、嬉々とした表情で席を立った。観念したオリビアは社交辞令の笑みを浮かべレオンに軽く頭を下げた。

「レオン殿下、お気遣いいただきありがとうございます」

 世界一浅い外堀を埋められ、顔に笑顔を貼り付けながらオリビアは女好きの護衛を呪った。

(ジョージ……去勢確定だわ)


>>続く

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