43 / 230
第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様
44、Aクラス2
しおりを挟む
教室に入った途端、すでに登校していたクラスメイトたちの刺すような視線がオリビアを襲った。
ほとんどの生徒が昨日のオリビアとレオンのダンスを見ていたのだろう。なるべく身を小さくしてジョージの影に隠れてみるが、その効果は薄いようだった。
「あ、あの方、殿下の……」
「ああ、一緒にダンスしてた……」
何名かの生徒の声に、オリビアは血の気が引いた。ダンスしていたのは事実なので仕方ないが、「殿下の」の続きの言葉次第では、学院での生活に大きく影響する。
目標は目立たず平和に。なのに初日から大失敗だ。
なんとか王子と関わらないよう気を配り、クラスメイトたちに忘れてもらうしかないとオリビアは考えた。
「ジョージ、みんなの死角を探すのよ!」
オリビアが小声でジョージに指示を出すと彼は「へいへい」と面倒そうに教室内を見渡した。そして、教卓の前の席を指差した。
「あそこっすね。みんな教卓付近は避けて後ろに座ってますし、教師からも近すぎて死角になる」
「なるほど。確かにそうね」
オリビアとジョージは教卓の前に並んで着席した。
相変わらず教室内の視線はオリビアに集中していて煩わしくて仕方がなかったが、誰も近づいてくる様子はなかった。
この国の第三王子であるレオンとの関係がわからない以上、周りも下手に絡むことができないようだ。
ひとまず危害を加えられることはなさそうだとオリビアは安堵し、息を吐いた。
隣に着席したジョージは昨日のパーティーで知り合ったであろう女子生徒たちと目配せをして、笑顔で手を振っていた。
女好きもここまで貫けば大したものだ。オリビアは学院を卒業したら王都で女性を対象とした娼館でも開こうかと考えた。スタッフ第一号はこの男だ。
「お嬢様、俺ちょっとあっちの女子たちと交流してきていいっすか?」
ジョージが何の遠慮も悪びれる様子もなく遠くにいる女子生徒のグループし視線を送っていた。一気にオリビアの顔は険しくなる。
「はあ? いいわけないでしょ。今日くらい我慢してくれなければ去勢するわよ」
オリビアは隣を睨みつけ目立たないよう小声で、けれど怒りは伝わるよう低い声でジョージを脅した。
ジョージが「恐い恐い」と肩をすくめ開いていた足を閉じたが、眉と口角が上がっているその表情は主人を小バカにしているようだった。
「行っておいでよ、ヘマタイト君。ここは任せて」
突然、人気のなかったはずの背後から誰かがオリビアの護衛の名を呼んだ。
聞き覚えのある声だった。艶があり堂々としていて、さらには知性も感じさせるような、この教室内できっと一番身分の高い人間の声。
昨日聞いたばかりのその声に、オリビアは口の周りの空気をそっと揺らす程度の小さな声で「終わった……」と呟き、肩を落とした。
>>続く
ほとんどの生徒が昨日のオリビアとレオンのダンスを見ていたのだろう。なるべく身を小さくしてジョージの影に隠れてみるが、その効果は薄いようだった。
「あ、あの方、殿下の……」
「ああ、一緒にダンスしてた……」
何名かの生徒の声に、オリビアは血の気が引いた。ダンスしていたのは事実なので仕方ないが、「殿下の」の続きの言葉次第では、学院での生活に大きく影響する。
目標は目立たず平和に。なのに初日から大失敗だ。
なんとか王子と関わらないよう気を配り、クラスメイトたちに忘れてもらうしかないとオリビアは考えた。
「ジョージ、みんなの死角を探すのよ!」
オリビアが小声でジョージに指示を出すと彼は「へいへい」と面倒そうに教室内を見渡した。そして、教卓の前の席を指差した。
「あそこっすね。みんな教卓付近は避けて後ろに座ってますし、教師からも近すぎて死角になる」
「なるほど。確かにそうね」
オリビアとジョージは教卓の前に並んで着席した。
相変わらず教室内の視線はオリビアに集中していて煩わしくて仕方がなかったが、誰も近づいてくる様子はなかった。
この国の第三王子であるレオンとの関係がわからない以上、周りも下手に絡むことができないようだ。
ひとまず危害を加えられることはなさそうだとオリビアは安堵し、息を吐いた。
隣に着席したジョージは昨日のパーティーで知り合ったであろう女子生徒たちと目配せをして、笑顔で手を振っていた。
女好きもここまで貫けば大したものだ。オリビアは学院を卒業したら王都で女性を対象とした娼館でも開こうかと考えた。スタッフ第一号はこの男だ。
「お嬢様、俺ちょっとあっちの女子たちと交流してきていいっすか?」
ジョージが何の遠慮も悪びれる様子もなく遠くにいる女子生徒のグループし視線を送っていた。一気にオリビアの顔は険しくなる。
「はあ? いいわけないでしょ。今日くらい我慢してくれなければ去勢するわよ」
オリビアは隣を睨みつけ目立たないよう小声で、けれど怒りは伝わるよう低い声でジョージを脅した。
ジョージが「恐い恐い」と肩をすくめ開いていた足を閉じたが、眉と口角が上がっているその表情は主人を小バカにしているようだった。
「行っておいでよ、ヘマタイト君。ここは任せて」
突然、人気のなかったはずの背後から誰かがオリビアの護衛の名を呼んだ。
聞き覚えのある声だった。艶があり堂々としていて、さらには知性も感じさせるような、この教室内できっと一番身分の高い人間の声。
昨日聞いたばかりのその声に、オリビアは口の周りの空気をそっと揺らす程度の小さな声で「終わった……」と呟き、肩を落とした。
>>続く
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
65
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる