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第二章 使用人を懐柔せよ!
第11話 未知との遭遇?
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書斎を出たアリスはまず寝室に戻ることにした。
仕事がある場所に使用人あり。毎日綺麗にベッドメイクされている寝室は、きっと一定時間使用人が滞在しなければいけないだろう。
「……いない、か」
一足遅かったようだ。
アリスが寝室のドアを両手で勢いよく開けたところ、目の前には今日も美しくセッティングされたベッドやキャンドルが並んでいた。人の気配はない。
「だったら次は——」
アリスは次の場所に向かった。
「失礼します!」
おかしい。ここならきっといると思ったのに。
アリスは無人の厨房を見渡してため息を吐いた。こちらも少しタイミングが悪かったようだ。食器を拭いたと思われるふきんが湿っている。
「こうなったら、徹底的に探すしかないわね」
アリスは覚悟を決め、屋敷内を駆けずり回った。それでも使用人はひとりも見つからず、庭で庭師を探そうにも人っこひとり見当たらなかった。
「はあ~。どうなっているの? なんで誰も見つからないのよ。この家の使用人、みんな忍者か何かなのかしら?」
最後に辿り着いたのは中庭だった。大きな噴水がある前庭とは違い敷地は狭く、いくつかの花壇とベンチが一つあるだけだった。ベンチの上にはちょうど木の枝葉が覆うよに伸びており、日陰になって心地よい。
「気持ちいい~」
アリスはベンチに腰掛け深呼吸した。風が通り抜け走り回って火照った身体の熱を冷ます。木の枝葉がさわさわと揺れる音は耳触りがよかった。
目を閉じ、しばし自然を視覚以外で感じる——。
「なんだか贅沢ね。あたたかな太陽、涼しい風が吹く木陰、花の香り、そして赤ちゃんが泣く声……」
アリスは「え?」と自分の言葉に驚きながらパチっと目を開いた。周囲を見渡すが、誰もいない。
「……聞こえる。間違いない、これは子供……乳児の声よ」
耳を澄ますと、遠くから子供の甲高い泣き声が聞こえた。アリスは立ち上がり、声の聞こえる方角に歩き始める。中庭を抜け、小道を通り、さらに歩みを進めると、そこには小さな木造の小屋があった。
「あの小屋から聞こえる」
恐る恐るアリスは小屋に近づいた。窓があったのでまずはそこから室内を覗く。中にはソファとテーブル、そして木製のベビーベッドがあった。大人の姿はない。
「お邪魔しまーす。誰か、いませんか?」
ドアが開いたのでアリスは小屋の中に入った。子供の泣き声は止むことなく響いている。すぐにベッドに駆け寄ると、そこには一歳に満たないであろう乳児が一人寝転んで泣き続けていた。
「ええ、どうしよう! この子は一体誰なの?」
アリスは状況が全く飲み込めず困惑しつつも、その小さな命に手を差し伸べた。
>>続く
仕事がある場所に使用人あり。毎日綺麗にベッドメイクされている寝室は、きっと一定時間使用人が滞在しなければいけないだろう。
「……いない、か」
一足遅かったようだ。
アリスが寝室のドアを両手で勢いよく開けたところ、目の前には今日も美しくセッティングされたベッドやキャンドルが並んでいた。人の気配はない。
「だったら次は——」
アリスは次の場所に向かった。
「失礼します!」
おかしい。ここならきっといると思ったのに。
アリスは無人の厨房を見渡してため息を吐いた。こちらも少しタイミングが悪かったようだ。食器を拭いたと思われるふきんが湿っている。
「こうなったら、徹底的に探すしかないわね」
アリスは覚悟を決め、屋敷内を駆けずり回った。それでも使用人はひとりも見つからず、庭で庭師を探そうにも人っこひとり見当たらなかった。
「はあ~。どうなっているの? なんで誰も見つからないのよ。この家の使用人、みんな忍者か何かなのかしら?」
最後に辿り着いたのは中庭だった。大きな噴水がある前庭とは違い敷地は狭く、いくつかの花壇とベンチが一つあるだけだった。ベンチの上にはちょうど木の枝葉が覆うよに伸びており、日陰になって心地よい。
「気持ちいい~」
アリスはベンチに腰掛け深呼吸した。風が通り抜け走り回って火照った身体の熱を冷ます。木の枝葉がさわさわと揺れる音は耳触りがよかった。
目を閉じ、しばし自然を視覚以外で感じる——。
「なんだか贅沢ね。あたたかな太陽、涼しい風が吹く木陰、花の香り、そして赤ちゃんが泣く声……」
アリスは「え?」と自分の言葉に驚きながらパチっと目を開いた。周囲を見渡すが、誰もいない。
「……聞こえる。間違いない、これは子供……乳児の声よ」
耳を澄ますと、遠くから子供の甲高い泣き声が聞こえた。アリスは立ち上がり、声の聞こえる方角に歩き始める。中庭を抜け、小道を通り、さらに歩みを進めると、そこには小さな木造の小屋があった。
「あの小屋から聞こえる」
恐る恐るアリスは小屋に近づいた。窓があったのでまずはそこから室内を覗く。中にはソファとテーブル、そして木製のベビーベッドがあった。大人の姿はない。
「お邪魔しまーす。誰か、いませんか?」
ドアが開いたのでアリスは小屋の中に入った。子供の泣き声は止むことなく響いている。すぐにベッドに駆け寄ると、そこには一歳に満たないであろう乳児が一人寝転んで泣き続けていた。
「ええ、どうしよう! この子は一体誰なの?」
アリスは状況が全く飲み込めず困惑しつつも、その小さな命に手を差し伸べた。
>>続く
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