ミュージック・れいん

森野ゆら

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1章

変な店主

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 ゆっくり振り向くと、二つのくりくりしたつぶらな瞳。
 顔じゅうもさもさの白い毛、丸みのある耳、ピンとしたヒゲ。
 首元には派手な色の貝がらネックレスをしていて、ストライプのシャツにズボンをはいてる。
 に、人間じゃない!

「ひええええっ! バカモノ! じゃなくて、バケモノ!」

「だ~れが、バカモノでバケモノだっ! ぼくはここの店主、コハクだ」

「店主?」

 私がまばたきすると、コハクという店主の大きな口元がニッと持ち上がった。

「あ、言うの忘れてた。いらっしゃいませ」

 もさもさの店主は急にかしこまると、ぺこっと頭を下げた。
 なんか、水族館で見たラッコに似てる。
 ラッコ……だけど、ちゃんとしっぽみたいな部分を床につけて、二本足で立ってる。
 着ぐるみかな? 中の人がいるのかも。
 じろじろ観察していると、コハクがフフンと鼻を鳴らした。

「それは北の国の商人から買いつけた、レインボーバブルトロピカルフラワー打楽器だ」

「レインボーバブルトロ……? 商品名、長っ」

「たたくと泡や虹の花が出てくる。お試しで使ってみるか?」

「泡? 虹の花? おもしろそう!」

 コハクにすすめられて、レインボー……なんとかを手のひらにのせた。
 うわ。羽みたいにすっごく軽い。そっとたたいてみたら、

「ぽん」

 はじけるような音とともに、虹色の花がふわっと出てきた。
 ぽん、ぽん、ぽん、ぽん……たたくたびに、花が出てくる。
 あっという間に床が花畑になっちゃった! しかも、すっごくいい香り!

「すごーい! きれい!」

「そうだろ? パーティーにぴったりだぞ! 今ならセール中だからあり得ないくらいお安く買えるぞ?」

「えっ?セールしてるの? うわぁ。友達の誕生日会で使いたいなぁ。いくら?」

 おこづかい、もらったところだし、千円までなら買えるかも。
 ワクワクしながら、ショルダーバッグから財布を取り出した。

「値札が裏側についてるから、見てみろ」

 コハクに言われて、商品をひっくり返すと、小さいシールが貼ってある。

「えーと……これ、0がいっぱいなんだけど……3000000?」

 数字を読み上げると、コハクがはきゃきゃきゃと笑い始めた。

「安いだろ? お買い得だろ?」

「どこがよ! ぼったくりじゃない!」

 あわてて商品をコハクに押し返す。
 他の品についてる値札も見ると、バカみたいに0がついてる。

「こんなの買えるワケないじゃない! 帰るよ!」

 あぶなかった……だまされるとこだった。くるっと踵を返して、ドアの方に向かった。

「……あれ?」

 さっきまであったドアがない。ちょっと待って。私、こっちから入ってきたよね?
 ドアを探してると、コハクが器用にぴょんぴょん跳ねて、こっちへやってきた。

「初めての客は何か買わないと、帰ることはできないのだ~」

「ええっ! なにそれ! 詐欺じゃん!」

「サギだと? 無礼なやつだな。この店はこういうきまりなのさ」

「なにそれ。ひどすぎる!」

 入口があったところをばんばんたたくけど、ただの壁だ。
 これ、どうなってるの? なんでドアが消えたのーーー?

「何か買ってくれたらいいだけのことだ」

 コハクが首元の毛をなでながら、しれっと言う。

「こんな高額商品ばかり、買えるわけないじゃない! 詐欺だよ! さーぎ!」

「まぁ、買えないなら仕方ない。もう一つ、入口を元に戻す方法があるぞ。知りたいか?」

「何?」

「ゲームでぼくに勝つこと!」

 コハクがいきなり、モフモフの体からゲーム機を出してきた。
 ウィーンと音が鳴って、上からモニターがおりてくる。

「な、なにこれ?」

 てられらりらー♪ ポップな音楽が鳴って、画面にミニカーが二台映し出された。
 えーと、これ、どっちが先にゴールするかっていうゲームだよね?

「きゃきゃきゃっ、勝負だ!」

 コハクがぴょんぴょん飛び上がった。
 そ、そんなぁ。ゲームで勝負だなんて……ふっ。
 私、ゲームはお母さんに怒られるくらいやってるんだよ。すっごく自信あるんだから!

「よしっ、やってやる! 圧倒的勝利でさっさと帰る!」

 腕まくりをすると、コハクがニヤッと笑った。

「ひゃっほっほーい♪ じゃ、これどーぞ」

 コントローラーを渡されて、私は画面の前に立った。
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