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3章
コハクの店へ
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放課後。
佐倉くんと一緒にコハクの店へ向かった私だったけど、
「あれ? ない」
店が建っていた所にお店がない。
ただの空き地で、ネコ一匹いない。
「佐倉くん、場所まちがえたっけ?」
「ううん。合ってるよ」
「でも……何もないよ」
「いや。そろそろ現れるんじゃないかな」
佐倉くんが空を見上げた。
あれ? さっきまで晴れてたのに、いつのまにか空が薄暗くなって黒い雲でいっぱい。
そう言えば、風も強くなってきた。夕立でもくるのかな?
「降ってきそうだな」
その声が合図みたいに、ぽつ、ぽつと雨が降ってきた。
「あとは、コハクが店の営業をしたいかどうかかな?」
コハクの気分次第かぁ。なんて気まぐれな店だろ。
そう思った時、急に目の前がもくもくと霧に包まれた。
あっという間に空き地が霧で見えなくなる。
「佐倉くん、これって……」
「うん。もうすぐ現れるよ。見てて」
佐倉くんの言う通り、オレンジの三角屋根が見えてきて、コハクの店が現れた。
「わっ、本当に出てきた!」
今日は看板が少し曲がってるけど、前と一緒だ!
「じゃ、入ろうか」
佐倉くんは迷いなく、店の方へ歩いていく。
「あ、待って」
あわてて追いかけて、ドアを開けようとした佐倉くんの袖を、とっさに引っ張る。
「あの、本当に大丈夫? 出られなくなっちゃわない? 私、この前出るのに苦労したんだ。ゲームさせられたり、ドアを隠されたり」
「心配しなくて、大丈夫。コハクがそんなことをするのは、新規の客だけだから」
佐倉くんが笑って、ドアノブをまわす。
ほんとかなぁ。また、ドアを隠されたらどうするの?
ドアを開けると、前と同じようにみかんみたいな香りがした。
ちがうのは、店内の明るさ。
前は薄暗かったけど、今日はぴかぴかに明るい。
「いらっしゃいませ~。あれ? 凪じゃないか。また来たのか。お前、ヒマだなぁ」
カウンター前でランプを磨いているコハクは、ニヤッと口元を上げた。
「……ん?」
コハクがじいっと私を見て、ヒゲをピンとたてる。
「おやおや、この前のゲーム三十五連敗さんじゃないか」
がくっとこけそうになって、あわてて態勢を整えた。
「変な名前つけないで! 私は春名れいんっていう名前があるの!」
「れいんか。へー。お前たち、つきあってたのか」
「つ、つきあ? ちがーーう!」
全力で否定すると、コハクが大きくまばたきした。
「そう言えば、お前、あの時どうやってドアを復活させたんだ?」
「ドア? あぁ……コハクにもらった箱が教えてくれたの」
「箱が? あの絶対開かない頑固な箱か?」
「それがね。開いたんだよ。ほら」
手提げ袋の中から、タクトの箱を出して、ぱかっと開いてみる。
「おぉっ、ほんとだ? しかも、これ……」
コハクがビー玉みたいな目をきらりとさせて、じろじろ見る。
「これは、タクトの箱じゃないか!」
コハクが驚いて後ろにひっくり返りそうになった。
「お前なぁ。タクトはこの店にはないって、あれだけ言ってたじゃないか!」
佐倉くんがバンッとカウンターをたたく。
「おれがどれだけ苦労して、いろんな所に探しに出たと思ってるんだ? まさかこんな近くにあるなんてな!」
佐倉くんが恨みがましく言って、コハクにつかみかかる。
「きゃきゃきゃ、灯台下暗しとはこのことだな」
コハクが佐倉くんの手を払いながら、大笑いを始めた。
「ってことは、れいんがタクトに選ばれたってことか」
「そーいうことみたいだな」
コハクと佐倉くんがじいっと私を見てくる。
「え? 選ばれた……って、何?」
そう言えば、佐倉くんも公園で言ってたよね。(春名さんはタクトに選ばれた)って。
キョトンとしていると、コハクが毛むくじゃらの手を私の肩にポンと置いた。
「タクトは主人を選ぶんだ。だからそのタクトは、れいんしか使えない」
私しか使えない……?
佐倉くんと一緒にコハクの店へ向かった私だったけど、
「あれ? ない」
店が建っていた所にお店がない。
ただの空き地で、ネコ一匹いない。
「佐倉くん、場所まちがえたっけ?」
「ううん。合ってるよ」
「でも……何もないよ」
「いや。そろそろ現れるんじゃないかな」
佐倉くんが空を見上げた。
あれ? さっきまで晴れてたのに、いつのまにか空が薄暗くなって黒い雲でいっぱい。
そう言えば、風も強くなってきた。夕立でもくるのかな?
「降ってきそうだな」
その声が合図みたいに、ぽつ、ぽつと雨が降ってきた。
「あとは、コハクが店の営業をしたいかどうかかな?」
コハクの気分次第かぁ。なんて気まぐれな店だろ。
そう思った時、急に目の前がもくもくと霧に包まれた。
あっという間に空き地が霧で見えなくなる。
「佐倉くん、これって……」
「うん。もうすぐ現れるよ。見てて」
佐倉くんの言う通り、オレンジの三角屋根が見えてきて、コハクの店が現れた。
「わっ、本当に出てきた!」
今日は看板が少し曲がってるけど、前と一緒だ!
「じゃ、入ろうか」
佐倉くんは迷いなく、店の方へ歩いていく。
「あ、待って」
あわてて追いかけて、ドアを開けようとした佐倉くんの袖を、とっさに引っ張る。
「あの、本当に大丈夫? 出られなくなっちゃわない? 私、この前出るのに苦労したんだ。ゲームさせられたり、ドアを隠されたり」
「心配しなくて、大丈夫。コハクがそんなことをするのは、新規の客だけだから」
佐倉くんが笑って、ドアノブをまわす。
ほんとかなぁ。また、ドアを隠されたらどうするの?
ドアを開けると、前と同じようにみかんみたいな香りがした。
ちがうのは、店内の明るさ。
前は薄暗かったけど、今日はぴかぴかに明るい。
「いらっしゃいませ~。あれ? 凪じゃないか。また来たのか。お前、ヒマだなぁ」
カウンター前でランプを磨いているコハクは、ニヤッと口元を上げた。
「……ん?」
コハクがじいっと私を見て、ヒゲをピンとたてる。
「おやおや、この前のゲーム三十五連敗さんじゃないか」
がくっとこけそうになって、あわてて態勢を整えた。
「変な名前つけないで! 私は春名れいんっていう名前があるの!」
「れいんか。へー。お前たち、つきあってたのか」
「つ、つきあ? ちがーーう!」
全力で否定すると、コハクが大きくまばたきした。
「そう言えば、お前、あの時どうやってドアを復活させたんだ?」
「ドア? あぁ……コハクにもらった箱が教えてくれたの」
「箱が? あの絶対開かない頑固な箱か?」
「それがね。開いたんだよ。ほら」
手提げ袋の中から、タクトの箱を出して、ぱかっと開いてみる。
「おぉっ、ほんとだ? しかも、これ……」
コハクがビー玉みたいな目をきらりとさせて、じろじろ見る。
「これは、タクトの箱じゃないか!」
コハクが驚いて後ろにひっくり返りそうになった。
「お前なぁ。タクトはこの店にはないって、あれだけ言ってたじゃないか!」
佐倉くんがバンッとカウンターをたたく。
「おれがどれだけ苦労して、いろんな所に探しに出たと思ってるんだ? まさかこんな近くにあるなんてな!」
佐倉くんが恨みがましく言って、コハクにつかみかかる。
「きゃきゃきゃ、灯台下暗しとはこのことだな」
コハクが佐倉くんの手を払いながら、大笑いを始めた。
「ってことは、れいんがタクトに選ばれたってことか」
「そーいうことみたいだな」
コハクと佐倉くんがじいっと私を見てくる。
「え? 選ばれた……って、何?」
そう言えば、佐倉くんも公園で言ってたよね。(春名さんはタクトに選ばれた)って。
キョトンとしていると、コハクが毛むくじゃらの手を私の肩にポンと置いた。
「タクトは主人を選ぶんだ。だからそのタクトは、れいんしか使えない」
私しか使えない……?
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