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3章
心をゆさぶる歌声
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「いただきまーす」
向かいに座ってるまりんの明るい声。
今日の晩ごはんはハンバーグ。
いつもなら、ハンバーグだからウキウキしてるはずなのに、そんな気分になれない。
ハンバーグのひとかけらを口にいれてる間も、今日あったことが頭をかけめぐる。
「どうしたの? れいん。調子悪いの?」
イスに座ったお母さんがきいてきた。
「ううん。大丈夫。ちょっと考えごと」
お母さんは「そう?」って言って、ソースをハンバーグにかけた。
「ねぇ、れいん。次の日曜、ベリーベリーのクレープ食べに行かない? 新商品が出たんだって!」
まりんが箸を止めて、前にのりだしてきた。
「ベリーベリー……あ、そうだ。すっごく安くなるチケットもらったんだ」
「え? ほんと! じゃあ、行こ……」
「再来週の日曜のコンクールまでダメよ。風邪ひいたら困るし」
まりんの声をさえぎるように、お母さんがぴしゃりと言った。
「あ……そっか」
まりんがイスに座り直して、残念そうに肩を落とす。
「コンクール、れいんも見に行くでしょ? その日はお友達と遊ぶ約束しないでね」
「……うーん。考えとく」
適当に返事をすると、お母さんが「考えとくじゃないでしょ」って怒ってる。
さっさとごはんを食べた後、すぐに二階へかけあがって部屋に入った。
コンクールかぁ。あまり、見に行きたくないなぁ。
きっと会場に行ったら、いろいろ考えちゃう。
また、まりんが金賞をとったら、ますます、まりんと私の格差が広がっちゃうなとか。
まりんがすごくなればなるほど、私ってば才能ない普通の子だなとか。
……私ってば、ずっとまりんと比べられて生きていくのかな。
あー、ダメダメ。どんどん深みにはまっちゃう。
どさっとベッドに寝転んで、はあーっと息をはいた。
次に浮かんできたのは、傘をさす佐倉くんの陰った横顔。
今日の悲しい話を聞いたら、もうどうしたらいいのか分かんないよ。
あー。なんかモヤモヤするなぁ。どうして、こんなことになったんだろう。
恨みがましく、机の上のタクトをにらむ。
ねぇ。私を選ぶなんて、どうかしてるよ。私、オトダマなんてかけらも持ってないよ。
音楽への情熱=オトダマなら……
きっと、まりんはすごいオトダマを持ってるんだろうな。
まりんは、いくらほめられても気をゆるませたりせず、毎日毎日、練習を頑張ってる。
才能があって、努力も惜しまない。何の才能もない私は一生かかってもかなわない。
ごろんと寝返りをうったら、手にタブレットが当たった。
そういえば、メイちゃんにおススメされた「RAN」
どんな動画だろう?
メイちゃんがあれだけ推してるってことは、きっと歌が上手なんだろうな。
むくっと起きて、タブレットを手にとった。
「えーっと、RANっと……」
検索窓にキーワードを入れたら、動画がいくつか出てきた。
あ、これかな?
猫のイラストとRANって書いてある動画をタップする。
かわいい猫のお面をかぶった小柄な子。耳元には、小さな白い花のイヤリング。
ギターを膝にのせて、こっちへ向かって手を振ってる。
この子が「RAN」かぁ。
(こんにちは! RANです。みなさんお元気ですか? 暑くなってきましたね)
画面の一番下に、字が流れてきた。
(今日は新曲をお披露目します! 曲名は「夕空と星」です)
あれ? RANって子、全然しゃべらない。全部文字で出てくる。
歌う時はどうするんだろ?
まさか、歌も口パクで歌詞が流れるだけとか?
いや、さすがにそれはないか。
(それでは、新曲、きいてください)
画面の下にポップな文字が流れたあと、RANの手がギターの弦に触れた。
和音が響いて、RANが一つ息を吸う。
「風が頬をなでる~オレンジの帰り道~」
急に耳に入ってきた歌声に、どきんと心臓が鳴る。
うわぁ。きれいな声!
メイちゃんが言うように、とってもきれいな澄んだ声!
RANがギターを弾くたび、耳元の白い花飾りがリズムに揺れる。
お面で表情は分からないけど、まっすぐな歌声と、軽やかにギターの音を奏でる手。
じわじわと胸の奥が熱くなってきて、さっきまでのジメジメした考えが消えていく。
こういう時、音楽ってすごいなって思う。
音楽は好きじゃない。
だって、自分がやるとすっごく下手で、うまい人みたいにいい音を出せないし。
だけど、こういうのをきくと心がゆさぶられる。
音のひとつひとつ、声の繊細な高低感。
心の中に染みてくる、音たち。
こんな音を出せるなんて、本当にうらやましい……
RANが歌い終わって、ぺこりと頭を下げた。
ぱちぱちぱち……私は一人で拍手!
RANの歌声をもっとききたくて、すぐに他の動画をタップした。
向かいに座ってるまりんの明るい声。
今日の晩ごはんはハンバーグ。
いつもなら、ハンバーグだからウキウキしてるはずなのに、そんな気分になれない。
ハンバーグのひとかけらを口にいれてる間も、今日あったことが頭をかけめぐる。
「どうしたの? れいん。調子悪いの?」
イスに座ったお母さんがきいてきた。
「ううん。大丈夫。ちょっと考えごと」
お母さんは「そう?」って言って、ソースをハンバーグにかけた。
「ねぇ、れいん。次の日曜、ベリーベリーのクレープ食べに行かない? 新商品が出たんだって!」
まりんが箸を止めて、前にのりだしてきた。
「ベリーベリー……あ、そうだ。すっごく安くなるチケットもらったんだ」
「え? ほんと! じゃあ、行こ……」
「再来週の日曜のコンクールまでダメよ。風邪ひいたら困るし」
まりんの声をさえぎるように、お母さんがぴしゃりと言った。
「あ……そっか」
まりんがイスに座り直して、残念そうに肩を落とす。
「コンクール、れいんも見に行くでしょ? その日はお友達と遊ぶ約束しないでね」
「……うーん。考えとく」
適当に返事をすると、お母さんが「考えとくじゃないでしょ」って怒ってる。
さっさとごはんを食べた後、すぐに二階へかけあがって部屋に入った。
コンクールかぁ。あまり、見に行きたくないなぁ。
きっと会場に行ったら、いろいろ考えちゃう。
また、まりんが金賞をとったら、ますます、まりんと私の格差が広がっちゃうなとか。
まりんがすごくなればなるほど、私ってば才能ない普通の子だなとか。
……私ってば、ずっとまりんと比べられて生きていくのかな。
あー、ダメダメ。どんどん深みにはまっちゃう。
どさっとベッドに寝転んで、はあーっと息をはいた。
次に浮かんできたのは、傘をさす佐倉くんの陰った横顔。
今日の悲しい話を聞いたら、もうどうしたらいいのか分かんないよ。
あー。なんかモヤモヤするなぁ。どうして、こんなことになったんだろう。
恨みがましく、机の上のタクトをにらむ。
ねぇ。私を選ぶなんて、どうかしてるよ。私、オトダマなんてかけらも持ってないよ。
音楽への情熱=オトダマなら……
きっと、まりんはすごいオトダマを持ってるんだろうな。
まりんは、いくらほめられても気をゆるませたりせず、毎日毎日、練習を頑張ってる。
才能があって、努力も惜しまない。何の才能もない私は一生かかってもかなわない。
ごろんと寝返りをうったら、手にタブレットが当たった。
そういえば、メイちゃんにおススメされた「RAN」
どんな動画だろう?
メイちゃんがあれだけ推してるってことは、きっと歌が上手なんだろうな。
むくっと起きて、タブレットを手にとった。
「えーっと、RANっと……」
検索窓にキーワードを入れたら、動画がいくつか出てきた。
あ、これかな?
猫のイラストとRANって書いてある動画をタップする。
かわいい猫のお面をかぶった小柄な子。耳元には、小さな白い花のイヤリング。
ギターを膝にのせて、こっちへ向かって手を振ってる。
この子が「RAN」かぁ。
(こんにちは! RANです。みなさんお元気ですか? 暑くなってきましたね)
画面の一番下に、字が流れてきた。
(今日は新曲をお披露目します! 曲名は「夕空と星」です)
あれ? RANって子、全然しゃべらない。全部文字で出てくる。
歌う時はどうするんだろ?
まさか、歌も口パクで歌詞が流れるだけとか?
いや、さすがにそれはないか。
(それでは、新曲、きいてください)
画面の下にポップな文字が流れたあと、RANの手がギターの弦に触れた。
和音が響いて、RANが一つ息を吸う。
「風が頬をなでる~オレンジの帰り道~」
急に耳に入ってきた歌声に、どきんと心臓が鳴る。
うわぁ。きれいな声!
メイちゃんが言うように、とってもきれいな澄んだ声!
RANがギターを弾くたび、耳元の白い花飾りがリズムに揺れる。
お面で表情は分からないけど、まっすぐな歌声と、軽やかにギターの音を奏でる手。
じわじわと胸の奥が熱くなってきて、さっきまでのジメジメした考えが消えていく。
こういう時、音楽ってすごいなって思う。
音楽は好きじゃない。
だって、自分がやるとすっごく下手で、うまい人みたいにいい音を出せないし。
だけど、こういうのをきくと心がゆさぶられる。
音のひとつひとつ、声の繊細な高低感。
心の中に染みてくる、音たち。
こんな音を出せるなんて、本当にうらやましい……
RANが歌い終わって、ぺこりと頭を下げた。
ぱちぱちぱち……私は一人で拍手!
RANの歌声をもっとききたくて、すぐに他の動画をタップした。
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