ミュージック・れいん

森野ゆら

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4章

音楽のテスト

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「じゃ、いくよ。さん、はい」

 音楽担当の並木先生がピアノで伴奏を弾き始めて、私はすうっと息を吸い込んだ。

「みなみにひ~ろがる山野のもとで~」

 音楽室に私の上ずった歌声が響いて、何となく恥ずかしい。
 今日は校歌のテスト。
 今度、オープンスクールがあって、学校紹介の時に五年生が歌うことになったんだって。
 だから、急きょ、校歌のテストが行われることになって、みんなびっくり!

「はい、オッケー! 元気よく歌えました」

 並木先生がにっこり笑って、指でマルを作った。
 ほっとして席に戻ると、となりに座ってるメイちゃんがパチパチと拍手してくれた。

「れいん、上手じゃん! ちゃんと音程取れてたよ」

「ほんと? 高いところが声、出なかったけど。あーあ。RANみたいに上手に歌えたらいいのになぁ」

 何気なく言うと、メイちゃんがピクリと反応した。

「れいん、RANの動画みたの?」

「うん。きのう、なんだか気になって。メイちゃんのおススメなだけあって、すっごく良かったよ」

「そうでしょ? 絶対れいんが好きだと思った」

 メイちゃんがうれしそうにふふっと笑った。
 そうそう。私、あの動画をみてからすっかりRANのファンになっちゃった。
 他にアップしてた歌もすごく良かったんだよね。
 歌詞も素敵だし、RANの紡ぐメロディにすぐ心をつかまれちゃった。

「あ、次、すずが歌う番だね」

 メイちゃんの声に前を見ると、ピアノのそばには直立不動のすずちゃん。
 並木先生が鍵盤の手を動かして、校歌の前奏が始まった。
 すずちゃんの顔は真っ青。

「あちゃー。すず、ガチガチに緊張しちゃってる」

「すずちゃん、人前に出るの苦手だもんね」

 すずちゃんは、口をパクパク動かすだけで、声が全然聞こえない。
 並木先生が仕方なく、途中で止めた。

「うーん。もう少し大きな声で頑張れる? 音程はあってるから自信もって!」

「……む、無理です……」

 すずちゃんは今にも泣きそうな顔。

「そっか。うん。じゃあいいよ」

 並木先生がすずちゃんの肩を優しくポンとなでた。
 ひととおり歌ったすずちゃんがフラフラしながら、こっちへ戻ってくる。

「すずちゃん、おつかれさま!」

「き、ききき、緊張した……終わったぁ」

 すずちゃんは全身の力が抜けたように、イスにもたれた。

「むむむ無理……みんな見てる前とか無理……」

「うんうん。すずちゃん、がんばったね」

 すずちゃんの背中をさすると、少しずつ顔色がよくなってきた。

「……情けないなぁ。私、人前でも大丈夫になりたいよ」

 すずちゃんはきゅっとくちびるをかんで、涙目。

「うーん。でも、大勢の前で緊張するのは普通だよ。私だってドキドキしたもん。メイちゃんは?」

「私もそりゃ、ドキドキするよ。でもね、そうも言ってられなくて」

 頬をかりかりっとかくメイちゃん。ん? なんだなんだ?
 私とすずちゃんがじっと見ると、メイちゃん、ちょっと照れくさそうに笑った。

「実はね……ソロパート任されたんだ!」

「ええっ!」

 私とすずちゃんは、同時に声をあげた。

「……ソロパートって何?」

 きくと、メイちゃんがずるっとイスからすべり落ちそうになった。

「曲の途中でね、私一人でメロディーを吹く部分があるの」

「一人で? すごーい!」

「そそそそ、それって、すっごく目立つね……」

 すずちゃんがブルブルと体を震わせる。

「うん。でも……ずっとやりたかったんだ。憧れだったの。結構、難しい曲なんだけど、一年前にやった時よりは、上手になったっていう手ごたえはあるから、頑張る!」

 メイちゃんがぐっとガッツポーズを作った。
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