タイム・ジャンプ!

森野ゆら

文字の大きさ
27 / 38

3 謎の少女あらわる

しおりを挟む
「こんばんは」

 その人影は可愛らしい声で近づいてきた。
 月明りを頼りに目をこらす。

 見たこともない高校生くらいの女の子。
 大きな三角の襟、両側にポケットがある白い奇抜なデザインのワンピース。
 胸には、五角形のエメラルド色したペンダントが下がってる。
 ひざ下まである白のブーツを履いていて、どこかのファッションショーから飛び出してきたみたい。
 腰まである金色の長い髪が冷たい風にたなびき、宝石みたいな紫の大きな瞳が私にじっと向けられている。

「ナンバー3の会員、三条和都様。最近頻繁に時間移動されていますので警告に参りました……って、あれ?」

 女の子は私の顔をじっと見つめた後、目を点にした。

「……? あなたは……和都さまではないですね」

 私の姿を確認したあと、女の子は困り顔。
 この人、だれ? お兄ちゃんの知り合い?

「あの……私は三条和都の妹で未央です」

 答えると、女の子はガバッと頭を下げた。

「失礼いたしました! 未央さま。暗くてよく見えなかったもので……うわ、どうしよう」

 女の子は口を両手で覆いながら、うろたえた様子でブツブツ言ったあと、

「まあ、あとで記憶を消せばいっか……」

 と、なんだか恐ろし気なことをつぶやいて、にっこり笑った。

「あの、あなたはだれ?」

 きくと、女の子はピシッと姿勢を正した。

「申し遅れました。私は時間移動協会のライカと申します。会員様の管理とサポートの仕事をしております」

 そう言って、ライカさんという女の子は恭しくお辞儀をした。
 時間移動協会? なにそれ?
 お兄ちゃん、変なグループに入ってるの?
 とまどう私にかまわず、ライカさんは探るような目を向けてきた。

「それで、和都さまはどちらにいらっしゃいますか?」

「あの、お兄ちゃんは風邪で寝込んでいて……」

「あら! そうなんですか。おかしいな。この間から時間移動した通知が頻繁に来るのですが……」

 ギクッ!

 私は思わず冷や汗をかきながら、時間移動機がついている右手をサッと後ろにまわした。
 後ろ手で時間移動機を外して、ライカさんが小屋の方を見たすきにポケットに入れる。

「ええっと~。お兄ちゃんはその時間ナントカっていう所の会員なんですか?」

 ごまかすように言うと、ライカさんは「はい」とうなずいた。

「今の時点で時間移動協会の会員は五名。和都さまは三番目の会員です」

「えっ。五人しかいないの?」

「はい。時間移動の手段を持った方は、今のところ五名しかいらっしゃいません」

「その時間移動協会ってなんですか?」

「時間移動の手段を持った方のサポートをする協会、と言えば聞こえはいいですが、簡単に言うと監視ですね。会員の方々が不正利用しないように」

「監視……」

「はい。もし時間移動を自由にして、過去や未来に取り返しのつかないほど手を加えてしまったら、歴史もこれからの未来も、今流れている現在も、ぐちゃぐちゃになってしまいます。それは絶対にあってはならないことです」

 厳しい顔つきでライカさんは言ったあと、ポケットを探った。

「少ししゃべりすぎましたね。じゃ、そういうことで。今からあなたの記憶を消します」

 にっこり笑って、ライカさんが近づいてきた。
 手に持っているのは、裁縫セットに入ってるものより二まわりほど太い針!

「そ、それなに?」

「この針に記憶が消える薬が入ってます。今からあなたの腕に刺しますね。そしたら私との記憶が消えますので。大丈夫ですよ。ちょっとだけチクッとするだけですから。この時代の注射みたいなものです」

 ぎゃっ、痛そう! 
 そんな予防接種受ける時のお医者さんみたいなこと言われても!
 しかも、記憶を消す?

「ちょ、ちょっと待って! 記憶を消すって、私の?」

「そうです。他に誰かいますか?」

 ライカさんがかわいく笑う。そのかわいさがかえってコワイ。

「私、絶対人にしゃべらないから、大丈夫だよ」

 後ずさりしながら言うと、ライカさんも一歩二歩と距離をつめてきた。

「と、言われましても、会員様以外に知られてはいけない秘密事項を話してしまったので」

「私、お兄ちゃんの妹だよっ。家族会員サービスとかないのっ?」

「ありません。ご本人様だけです。では」

 サッとライカさんが針をかまえた。

「ままま、待って! お菓子あるんだっ! お茶でもして話しよっ? 話せばわかるよっ。小屋にお兄ちゃんが隠してるお菓子があるのっ」

 両手をブンブン振りながら待ったをかけると、ライカさんの動きがぴたっと止まった。

「お菓子……この時代のお菓子……興味ありますね……」

 ライカさんは少し考えながら、針を持っている手を下げた。

「駅前の有名なお店の限定商品があるよ! すっごくおいしいの! ごちそうするから、ちょっと小屋の方に来て」

 手招きすると、ライカさんは針をしまっておとなしくついてくる。
 よ、よかった。とりあえず大丈夫そう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

はるのものがたり

柏木みのり
児童書・童話
春樹(はるき)が突然逝ってしまって一ヶ月。いつも自分を守ってくれていた最愛の兄を亡くした中学二年生の春花(はるか)と親友を亡くした中学三年生の俊(しゅん)は、隣の世界から春樹に来た招待状を受け取る。頼り切っていた兄がいなくなり少しずつ変わっていく春花とそれを見守る俊。学校の日常と『お隣』での様々な出来事の中、二人は気持ちを寄せ合い、春樹を失った悲しみを乗り越えようとする。 「9日間」「春の音が聴こえる」「魔法使いたちへ」と関連してくる物語。 (also @ なろう)

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

こちら第二編集部!

月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、 いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。 生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。 そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。 第一編集部が発行している「パンダ通信」 第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」 片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、 主に女生徒たちから絶大な支持をえている。 片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには 熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。 編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。 この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。 それは―― 廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。 これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、 取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

処理中です...