和ごころシンフォニー

森野ゆら

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7章

ドキドキの練習

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 箏の前に座って、箏柱を立てる。
 爪をはめてちらっと早玖の方を見た。
 早玖は音の微調整をしてる。
 これから本当に早玖と一緒に弾くんだ。
 そりゃあ、いつか一緒に弾きたいって思ってたけど、なんか……心の準備が……
 なんて、ドキドキしてたら早玖がこちらへやってきた。
 しまった。わたしが見てたの気づかれちゃったかな。

「なぁ、るり。学園長の前で弾いたものとはちがう曲にしないか?」

「えっ、どういうこと?」

 突然の提案に目をぱちぱちさせると、早玖が真面目な顔をした。

「さくらの曲、苦いイメージがついちゃってるだろ? だから、気分一新でちがう曲の方がいいと思うんだ」

「でも、他の曲、全然弾けないよ。今から一からって、間に合うかどうか分かんないし」

「じゃあさ、あの曲はどう?」

「あの曲?」

「曲名は知らないけどさ。留五郎さんと一緒に弾いた曲。るり、また丘で弾きたいって言ってただろ?」

「あ……」

 そうだ。あの曲なら、なんとなく覚えてる。

「でも、楽譜ないよ? あの時だって楽譜なしでなんとなく弾いてたし」

 言うと、早玖がにーーっと笑って、いつから持っていたのか、後ろから紙を出してきた。

「じゃーん」

 早玖の手には楽譜。しかも、じいちゃんのなつかしい字が見える。

「えっ、まさか楽譜? あの曲の?」

「うん。実は留五郎さん、作ってくれてたみたいなんだ。この小屋の一階に置いてあるタンスの引き出しに見つけた」

「ええっ。わたしも、そのタンスで見つけたんだよ。箏の爪と箏柱」

「うん。おれも見つけてたけど、たぶん、それはるりが見つけるだろうなと思って置いてた」

 早玖が弦にシャンと撥を軽く当てて、優しく笑った。

「おれ、練習してなくても、なんとなくなら弾けるよ? るりは?」

「わたしもなんとなく……調弦とるから、楽譜見せて」

 楽譜の端っこを見たら、あった。じいちゃんの字で一から巾までの音が書いてある。
 音を取ってから、楽譜をあらためて見る。
 うわぁ。何となく弾いてたあの曲がちゃんと楽譜になってる。
 感動しながら、一小節目から弾いてると、どんどん思い出してきた。
 時々、つまりながらも記憶をたどるように弾いてたら、早玖も一緒に三味線で弾いてきた。

「こんな感じだったよね?」

「うん。おれも思い出してきた」

 たどたどしくも最後まで弾いて、最後の音を弾き終わったら、早玖がわたしに向き直った。

「よしっ。いけるんじゃないか? この曲にしよう、るり」

「うん」

 答えたら、早玖がふわりとほほえんだ。
 どうしよう。うれしい。また、早玖とこの曲が弾けるなんて。
 ワクワクしてくるのが止められなくて、思わず箏の弦をなでた。
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