和ごころシンフォニー

森野ゆら

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7章

和の心って?

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「わぁ、これがお箏ですか。大きいですね」

 箏を畳に出すと、桜宮さんがキラキラした顔でじーっと見てきた。
 地下の茶の間に桜宮さんを連れていったら、男子三人はびっくり!
 でも、すぐに歓迎してくれた。
 桜宮さんは、月都くんが出してきた和菓子にすごく感動してた。
 すぐにみんなと仲良くなっておしゃべりをしてたんだけど、

「ほな、ちょっと行ってくるわ。桜宮さん、ゆっくりしてなー」

 って、ミドリくんは部屋をいそいそと出て行ってしまった。
 どうやら、華道をやってた子が協力したいって言ってくれたみたい。
 あと、断られてた手芸の活動してた子たちも考え直してくれたそうで、展示に協力してくれる子、ちょっとずつ増えてるんだって。
 だから最近、ミドリくんは走りまわってがんばってくれてるんだ。
 ミニ文化祭っていうポスターも作って、学園内のいろんな所に貼ってくれてるしね。
 早玖とわたしの準備が整ったところで、桜宮さんと月都くんにお客さんとして前に座ってもらった。
 やっぱり、見られてるっていう感覚も練習しとかなきゃね。

「じゃあ、弾いてみるね」

 言うと、桜宮さんが好奇心いっぱいの顔でうなずいた。
 うっ。ちょっと緊張するなぁ。

 そう思ったのがやっぱり音に出てしまったのか、最初の音を盛大にはずす。
 何とか持ち直したものの、早玖の旋律に気をとられて、リズムをまちがってしまった。
 相変わらず、余韻を残したあとの次の一音が早玖と合わない。
 最後まで弾いて、一礼をすると桜宮さんが拍手をしてくれた。

「あー、ごめん。全然ダメだった」

 箏の方へがっくりうなだれる。
 どうしてだろう。こんなに練習してるのに。
 早玖の音と合わせようとしてるのに、合わなくて、早玖が変に気をつかおうとしてるのも分かる。
 あー。なんか。昔の自分の方がうまかったような気がする。
 どうしよう。あともう少ししかないのに。

(和の心を大切にするなんて言うから、どんなすごい演奏をしてくれるのかと思ったら)

 学園長の冷ややかな声が頭の中でよみがえる。
 ダメだ。このままじゃ、また同じこと言われちゃうよ。

 でも。和の心を大切にするってなんだろう? 
 そもそも和の心って何?

「北川さん……大丈夫ですか?」

 わたしの頭上に、桜宮さんの心配そうな声がふってきた。

「うん。ごめん、大丈夫」

「わたしは良かったと思いますよ。北川さん、一生懸命弾いてたし」

「うん。でも……」

(一生懸命弾いたからって、認められると思った?)

 また、学園長の声が頭で響く。
 練習……もっと練習しなきゃ。
 一音もまちがえないように。早玖と音がばっちり合うように。
 そう思うのに、大きなため息が出てきた。
 どうしてかな? しんどくなってきちゃった。
 早玖と弾けるの、すごくワクワクしてたのに。
 弾けば弾くほど、重い気持ちになってくるなんて。
いや、こんなこと思ってる場合じゃない。練習しなきゃ!

「早玖、もう一回、弾こ……」

「なぁ、るり」

 早玖がじっと見つめてきた。

「るりは学園長の前で完璧な演奏をするために弾くのか?」

「え? 当たり前でしょ」

「……やっぱりそう思ってたか」

 早玖がはぁと深いため息をはく。

「え? わたし、なにかまちがってる?」

 きくと、早玖は三味線と撥をそっと畳の上に置いて正座した。

「るり、言ってたよな。『和の心を大切にする文化祭がしたい』って」

「い、言ったよ。だから、一音でもまちがわないように練習してるの」

 言い返すと、早玖が首を横に振った。

「だから、それがちがうって」

「ちがうって何よ! そんなの……」

 言いかけたところで、月都くんがわたしの肩をぽんと静かにたたいた。

「北川さん。完璧を目指さなくていいんじゃない? そうだろ? 早玖」

 月都くんが言うと、早玖がうなずいた。

「どういうこと? だって、まちがえたらダメだし」

「北川さん。ぼくは茶道のことまだまだで、お点前をまちがえることもあるよ。最初はなかなか覚えられなくてダメだなって思ってた。でも、利休七則の『茶は服のよきように点て』っていうのをおばあちゃんに教えてもらってね」

「な、何の話?」

「所作のまちがいよりも心をこめてお茶をたてることの方が大事だって思ったんだ」

「ええと、つまり、まちがえること、完璧にすることにとらわれるより、心をこめることが大事ってことですか?」

 桜宮さんが言うと、月都くんがうなずいた。
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