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8章
3 リゼとの別れ
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相変わらずの回転に目をつぶって耐えて、しばらくすると潮のにおいが鼻をかすめた。
目を開けたら、元いた水族館の敷地の端、堤防の壁の前に私たちは立っていた。
「おかえり」
リゼがふわりと笑って迎えてくれた。
「二人ともおつかれさま。無事に帰ってきてくれてよかったよ。……にしても」
リゼが私たちを交互に見て、眉間にしわをよせた。
「なんて顔してんだよ、二人とも。なにかあったのか?」
「えっ、顔?」
私と瑞希はお互い顔を見合わせる。
「わっ、瑞希!」
「ひ、ひなりこそ……」
瑞希は目が真っ赤で泣いた後のような顔。
……ってことは、私もそんな顔してるの?
「大丈夫か? なにかこわい目にあったとか?」
リゼが心配そうに言う。
「ううん。何もないよ」
あわてて言うと、瑞希も顔をゴシゴシふいた。
「大丈夫だ。それより……時間移動機の画面が消えたんだけど」
瑞希が申し訳なさそうに言って、時間移動機をリゼに渡した。
「あぁ、チャージ不足だな。大丈夫だよ。パワーパック持ってるから」
リゼがひょいと出してきたのは、四角い小さなカード。
時間移動機の中に入れると、薄くて今にも消えそうな画面が復活した。
ほーっ。良かった。壊れたんじゃなくて。
弁償しろって言われても、絶対ムリだもん。
「そう言えば、河本は?」
瑞希が辺りを見まわしながら、リゼにきいた。
ほんとだ。河本さんがいない。
「実は……時間警察が来てサイリを連れていった。人工的なスパイラルを作っていた疑いと、過去を変えた疑いで……」
「えっ……」
リゼの言葉にドクンと心臓が鳴る。
「だ、だって、河本さんはめちゃくちゃになった未来を変えるためにやったんだよ? 未来を助けたんだよ? なんで捕まっちゃうの?」
つめよる私に、リゼが困ったような顔をした。
「スパイラルを人工的に作るのは、厳格に禁止されてるからね。それに、過去を変えることはそれ以上に厳罰に値する……」
「そ、そんな……過去を変えたのは私だよ? さっき、一年前のスパイラルを消してきたのは私で……」
「サイリは全部自分がやったってうまく説明してたよ。だから……」
こみあげる気持ちをおさえきれなくて、うつむくリゼの両腕をつかんだ。
「ダメだよ、河本さんが全部悪くなるなんて! そんなの……」
きっと、河本さんは一大決心してこの時代に来たんだ。
なのに、犯罪者みたいにつかまっちゃうなんて。
「落ち着け、ひなり」
瑞希が私をリゼから引き離した。
「過去を変えた疑いで河本が連れていかれた……ってことは、未来がうまく変わったって証拠じゃないか?」
「え?」
「ひなりがスパイラルを消したのが、未来にちゃんと反映されたんだ」
瑞希が真っすぐに私を見つめて、力強く言う。
「うん。きっと、未来は救われてる。過去を変えることは厳重に禁止されてるけど……今回は特例だと思うよ」
リゼがそう言って、時間移動機にコンとふれた。
「じゃ、じゃあ、河本さんは大丈夫? 時間牢っていうのに入れられたりしない?」
「時間牢に入るどころか、表彰されるんじゃないか? 未来の世界を救ったんだから」
ははっと笑うリゼに、ほっとする。
そっか。それならいいけど……
「それから、サイリから伝言。『ありがとう』って。無表情で言ってて、なんかこわかったけど」
「河本さんが……」
瑞希と顔を見合わせる。
ありがとう……か。私こそ、ありがとうだよ。
偶然とは言え、河本さんが作ったスパイラルでむつ子さんにも会えたし……ね。
「あっ、私、河本さんに時間移動機のネジ、返してなかったんだけど……」
あわててポシェットから出すと、リゼが手を振った。
「それは、ひなりが持っててくれていいって。『出会ったしるし』にしてくれって」
「出会ったしるし……」
きらりと光るネジを見て、なんとも言えない気持ちになる。
もっと、河本さんと話したかったな。
同級生として、もっと普通の話もしたかった。
なんだかせつない気持ちになってたら、リゼがうーんと伸びをした。
「さぁて。ひと仕事終えたし、ぼくも元の時間に帰ろうかな」
「え、帰っちゃうの?」
「あぁ。サイリも捕まったし、もうしばらくこのエリアにはスパイラルは発生しないだろうしね。戻ってたっぷり報告書を書かなくちゃ」
うんざり顔を作りながら、リゼが苦笑いする。
「そっかぁ。リゼが帰っちゃうなんて、さみしくなるね……」
急に帰るって言われて、変な感じだ。
河本さんもいなくなっちゃったし、友達が突然いなくなるみたいな、ぽっかり穴が開いたような。
それに、もうリゼはこの時代に来ることはないのかな。
じゃあ、これから会うことはないのかも。
しゅんとしてると、急にリゼが私の両手を取った。
「そんなにさみしく思ってくれるなんてうれしいなぁ。じゃあさ……」
一呼吸おいて、リゼがじっと私を見つめてきた。
「ひなり、ぼくと一緒に未来に帰らない? 君のスパイラルを見つける能力ならこっちへ来ても大活躍できるよ」
「へっ? 未来に?」
突然の提案にぽかんと口を開けていると、
「それはできない」
瑞希が私とリゼの手をサッと引きはがした。
瑞希のまわりに漂うなんだか冷たい空気。
リゼが眉をあげて、手をパタパタ振った。
「あはは。冗談だよ」
「今のは冗談の顔じゃなかった」
瑞希が氷点下の瞳でリゼをにらむ。
「こわ~。瑞希がキレないうちにさっさと帰るよ。じゃあね、ひなり、瑞希」
「……うん。いろいろありがと」
「こちらこそだよ」
リゼがウィンクをして、時間移動機のボタンを押した。
まぶしい光でいっぱいになったかと思うと、リゼの姿が消えた。
目を開けたら、元いた水族館の敷地の端、堤防の壁の前に私たちは立っていた。
「おかえり」
リゼがふわりと笑って迎えてくれた。
「二人ともおつかれさま。無事に帰ってきてくれてよかったよ。……にしても」
リゼが私たちを交互に見て、眉間にしわをよせた。
「なんて顔してんだよ、二人とも。なにかあったのか?」
「えっ、顔?」
私と瑞希はお互い顔を見合わせる。
「わっ、瑞希!」
「ひ、ひなりこそ……」
瑞希は目が真っ赤で泣いた後のような顔。
……ってことは、私もそんな顔してるの?
「大丈夫か? なにかこわい目にあったとか?」
リゼが心配そうに言う。
「ううん。何もないよ」
あわてて言うと、瑞希も顔をゴシゴシふいた。
「大丈夫だ。それより……時間移動機の画面が消えたんだけど」
瑞希が申し訳なさそうに言って、時間移動機をリゼに渡した。
「あぁ、チャージ不足だな。大丈夫だよ。パワーパック持ってるから」
リゼがひょいと出してきたのは、四角い小さなカード。
時間移動機の中に入れると、薄くて今にも消えそうな画面が復活した。
ほーっ。良かった。壊れたんじゃなくて。
弁償しろって言われても、絶対ムリだもん。
「そう言えば、河本は?」
瑞希が辺りを見まわしながら、リゼにきいた。
ほんとだ。河本さんがいない。
「実は……時間警察が来てサイリを連れていった。人工的なスパイラルを作っていた疑いと、過去を変えた疑いで……」
「えっ……」
リゼの言葉にドクンと心臓が鳴る。
「だ、だって、河本さんはめちゃくちゃになった未来を変えるためにやったんだよ? 未来を助けたんだよ? なんで捕まっちゃうの?」
つめよる私に、リゼが困ったような顔をした。
「スパイラルを人工的に作るのは、厳格に禁止されてるからね。それに、過去を変えることはそれ以上に厳罰に値する……」
「そ、そんな……過去を変えたのは私だよ? さっき、一年前のスパイラルを消してきたのは私で……」
「サイリは全部自分がやったってうまく説明してたよ。だから……」
こみあげる気持ちをおさえきれなくて、うつむくリゼの両腕をつかんだ。
「ダメだよ、河本さんが全部悪くなるなんて! そんなの……」
きっと、河本さんは一大決心してこの時代に来たんだ。
なのに、犯罪者みたいにつかまっちゃうなんて。
「落ち着け、ひなり」
瑞希が私をリゼから引き離した。
「過去を変えた疑いで河本が連れていかれた……ってことは、未来がうまく変わったって証拠じゃないか?」
「え?」
「ひなりがスパイラルを消したのが、未来にちゃんと反映されたんだ」
瑞希が真っすぐに私を見つめて、力強く言う。
「うん。きっと、未来は救われてる。過去を変えることは厳重に禁止されてるけど……今回は特例だと思うよ」
リゼがそう言って、時間移動機にコンとふれた。
「じゃ、じゃあ、河本さんは大丈夫? 時間牢っていうのに入れられたりしない?」
「時間牢に入るどころか、表彰されるんじゃないか? 未来の世界を救ったんだから」
ははっと笑うリゼに、ほっとする。
そっか。それならいいけど……
「それから、サイリから伝言。『ありがとう』って。無表情で言ってて、なんかこわかったけど」
「河本さんが……」
瑞希と顔を見合わせる。
ありがとう……か。私こそ、ありがとうだよ。
偶然とは言え、河本さんが作ったスパイラルでむつ子さんにも会えたし……ね。
「あっ、私、河本さんに時間移動機のネジ、返してなかったんだけど……」
あわててポシェットから出すと、リゼが手を振った。
「それは、ひなりが持っててくれていいって。『出会ったしるし』にしてくれって」
「出会ったしるし……」
きらりと光るネジを見て、なんとも言えない気持ちになる。
もっと、河本さんと話したかったな。
同級生として、もっと普通の話もしたかった。
なんだかせつない気持ちになってたら、リゼがうーんと伸びをした。
「さぁて。ひと仕事終えたし、ぼくも元の時間に帰ろうかな」
「え、帰っちゃうの?」
「あぁ。サイリも捕まったし、もうしばらくこのエリアにはスパイラルは発生しないだろうしね。戻ってたっぷり報告書を書かなくちゃ」
うんざり顔を作りながら、リゼが苦笑いする。
「そっかぁ。リゼが帰っちゃうなんて、さみしくなるね……」
急に帰るって言われて、変な感じだ。
河本さんもいなくなっちゃったし、友達が突然いなくなるみたいな、ぽっかり穴が開いたような。
それに、もうリゼはこの時代に来ることはないのかな。
じゃあ、これから会うことはないのかも。
しゅんとしてると、急にリゼが私の両手を取った。
「そんなにさみしく思ってくれるなんてうれしいなぁ。じゃあさ……」
一呼吸おいて、リゼがじっと私を見つめてきた。
「ひなり、ぼくと一緒に未来に帰らない? 君のスパイラルを見つける能力ならこっちへ来ても大活躍できるよ」
「へっ? 未来に?」
突然の提案にぽかんと口を開けていると、
「それはできない」
瑞希が私とリゼの手をサッと引きはがした。
瑞希のまわりに漂うなんだか冷たい空気。
リゼが眉をあげて、手をパタパタ振った。
「あはは。冗談だよ」
「今のは冗談の顔じゃなかった」
瑞希が氷点下の瞳でリゼをにらむ。
「こわ~。瑞希がキレないうちにさっさと帰るよ。じゃあね、ひなり、瑞希」
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「こちらこそだよ」
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