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8章
4 あの時そばにいてくれたのは
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「行ってきまーす」
玄関を出ると、熱気がこもった風が吹いてきた。
雲一つない、いい天気。
今日も暑くなりそうだなぁ。
先週、期末テストが終わって、たくさんテストが返ってきた。
目も当てられないテストたちは、鍵付き引き出しに押し込めて封印して。
あとは夏休みを待つだけ。ウキウキするなぁ♪
スキップしながら道へ出たら、電柱の所で瑞希が立ってた。
「おはよ」
私に気づいた瑞希が手を挙げる。
「あれ? 瑞希。なんか約束してたっけ?」
「……いや、してない。まぁ、その……む、むつ子さん家の花壇を見てたんだよ」
「そーなんだ。きれいだよねぇ」
私も花壇のゆれる花たちにに目をやった。
白い花はぐらじおらす? だっけ。あ、ラベンダーもきれい。
いつも朝はバタバタしてるから、こんなじっくり見るのは久しぶりかも。
そう思って花たちを見ていると、瑞希がけほんと咳払いした。
「……おばさんから聞いたか?」
「何を?」
「むつ子さん家、次に住む人が決まったって」
「え……」
瑞希の言葉に一瞬時が止まる。
次に……住む人……
「そっか。そうなんだ……」
自分の声がちがう人の声みたいに聞こえた。
もう「むつ子さん家」じゃなくなっちゃうんだ。
いつも一緒に見上げてた玄関横の木。一緒に座って話した縁側。本読んでくれた畳のにおいがする和室。
急に思い出してきて、じわじわと熱いものが胸にこみあげてくる。
「新しく住む人、どんな人かなぁ? 仲良くなれたらいいね」
普通に言ったつもりなのに、どうしてか声が震える。
分かってたのに。
いつかはちがう人が住むことになるって。
なのに、なんでだろ。私、すごく動揺してる。
頭にぽすんと瑞希の手がのった。
あったかい大きな手。
あれ? また、懐かしいような感覚がほわっと包み込んできた。
前にもあった。こわくて不安で仕方なかったあの時。こうして、頭をなでてくれて……
……思い出した!
そうだ。一年生の時、林にあったスパイラルに吸い込まれて、その先の世界で泣いてたら……
「……大丈夫だよ」
そう言って、お兄ちゃんがずっと手を握って、ついててくれたんだ。
その後、泣き疲れてウトウトして……気がついたら元の林に戻ってて……
……あ。
ドキッとして瑞希の顔をじっと見る。
「……もしかして、小1の私がスパイラルに吸い込まれた先で手を握っててくれたのって……瑞希だった?」
瑞希は一瞬、目を大きくしてふわりと笑った。
玄関を出ると、熱気がこもった風が吹いてきた。
雲一つない、いい天気。
今日も暑くなりそうだなぁ。
先週、期末テストが終わって、たくさんテストが返ってきた。
目も当てられないテストたちは、鍵付き引き出しに押し込めて封印して。
あとは夏休みを待つだけ。ウキウキするなぁ♪
スキップしながら道へ出たら、電柱の所で瑞希が立ってた。
「おはよ」
私に気づいた瑞希が手を挙げる。
「あれ? 瑞希。なんか約束してたっけ?」
「……いや、してない。まぁ、その……む、むつ子さん家の花壇を見てたんだよ」
「そーなんだ。きれいだよねぇ」
私も花壇のゆれる花たちにに目をやった。
白い花はぐらじおらす? だっけ。あ、ラベンダーもきれい。
いつも朝はバタバタしてるから、こんなじっくり見るのは久しぶりかも。
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「……おばさんから聞いたか?」
「何を?」
「むつ子さん家、次に住む人が決まったって」
「え……」
瑞希の言葉に一瞬時が止まる。
次に……住む人……
「そっか。そうなんだ……」
自分の声がちがう人の声みたいに聞こえた。
もう「むつ子さん家」じゃなくなっちゃうんだ。
いつも一緒に見上げてた玄関横の木。一緒に座って話した縁側。本読んでくれた畳のにおいがする和室。
急に思い出してきて、じわじわと熱いものが胸にこみあげてくる。
「新しく住む人、どんな人かなぁ? 仲良くなれたらいいね」
普通に言ったつもりなのに、どうしてか声が震える。
分かってたのに。
いつかはちがう人が住むことになるって。
なのに、なんでだろ。私、すごく動揺してる。
頭にぽすんと瑞希の手がのった。
あったかい大きな手。
あれ? また、懐かしいような感覚がほわっと包み込んできた。
前にもあった。こわくて不安で仕方なかったあの時。こうして、頭をなでてくれて……
……思い出した!
そうだ。一年生の時、林にあったスパイラルに吸い込まれて、その先の世界で泣いてたら……
「……大丈夫だよ」
そう言って、お兄ちゃんがずっと手を握って、ついててくれたんだ。
その後、泣き疲れてウトウトして……気がついたら元の林に戻ってて……
……あ。
ドキッとして瑞希の顔をじっと見る。
「……もしかして、小1の私がスパイラルに吸い込まれた先で手を握っててくれたのって……瑞希だった?」
瑞希は一瞬、目を大きくしてふわりと笑った。
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