ヘタレαにつかまりまして

三日月

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20 桜宮 side 倭人

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その日から。

夜、俺の頬には雨が降る。
酷く悲しく優しい雨。


「ヤマぁ・・・」


ぽたぽたと、声を殺して名前を呼ぶ雨。
それが桜宮の流す涙と声だとわかっているから、俺は寝たふりを続ける。

寂しい、悲しいと番に訴えているものなのに。
甘く耳障りのいい響きに聞こえてしまう、不思議な声には、昼間の凛とした雰囲気を感じない。
俺の知る桜宮とは、全然違う夜の顔。

四月から記憶を無くした俺の目だけだったら。

昼間の桜宮しか知らなければ。

俺の恥ずかしいフェロモンが無かったら。

桜宮が番であることに気付けもしなかっただろう。
かといって、桜宮が番である事実が目の前にあっても、どうしていいかわからない。

桜宮が俺の前で泣いたのは、あの一回だけ。
泣き止むまで、父さんに支えられ動けなかったあの一回だけ。


一生に一人きり。
番のΩを大切にし続ける。


そう、誓っていたのに。
俺が一番桜宮を泣かせている。
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