例えβに生まれても

三日月

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35 隔離の王子様

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「使用人として代々雇われてきた家に生まれながら、愚弟とは言え菊川家のαにフェロモンレイプなんて冗談にもならないわっ」


陽太様を押しのけた飛鳥様が、俺に向かって手を伸ばしてこられる。
花火模様がカラフルに彩られた爪が、殺傷能力が高い武器にしか見えないよ!

五本の爪に、引き裂かれるっ

その指はまるで一本一本が包丁みたいに大きく見えるくらいの迫力で、次の瞬間、喉を裂かれる未来の俺が視えたんだけどね。
それを止めたのは、飛鳥様の怒りに燃料を追加する嘲笑混じりの清人様だった。


「猪突猛進でα至上主義の固定観念に凝り固まったお前には、その程度のことしか推察できないのか」

「はぁ?!」


俺に届く直前で飛鳥様の手首を受け止め、力づくでその手を下ろさせようとする清人様。
風圧が俺の頬を撫でるくらいの速さがあったんだけど、間一髪で救われる。
両方の交差した腕がブルブル小刻みに震えていて。
睨みあいながら、言い合う余裕もないくらい拮抗した無言の二人のやりとり。
清人様の腕が、小さな幅で上に下に移動するけど、圧倒的な差はないようで。
俺の片方の手を握らせているままの清人様にとって、間にいる俺がとても邪魔だってわかってるんだけどね。
本当に、怖くて怖くて、一歩も足が動かない。
むしろ、清人様の手がなくなったら立てなくなると思う!


「だから、やめろって言ってるだろうがっ!!」


パーンッ

その戦いを止めたのは、陽太様。
サンダルのようなラフな足元が定着している陽太様には珍しく、履いていた革靴を両手に持って同時に二人の腕めがけての思いっきったフルスイング。
それでも、互いに牽制しあって力を抜こうとしない二人に、陽太様も怒髪天。


「てめーら、これ以上荒立てるなら、澪のフェロモンで制圧し、一週間なんにも食えなくしてやるぞ!!!
さっさと離れて、この部屋に籠ったどぎついフェロモンおさめねーかっ」


その一喝は、とても威力があったようで。
二人は同時に舌打ち。
目も合わせず、互いの腕を振り払うようにして離れた。
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