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番外編
嵐に舞う雪 12
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翌日からの変化は、俺にとっては概ね嬉しいものだった。
雪さん一人では出ることが出来ないアングラから、久しぶりに逃げ出そうと走り始めたのだ。白い兎が巣穴の中を走りまわるように。
俺が来れない時間も、雪さんは一生懸命出口を探して客用出入口の近くまでは行ったらしい。その度に、スタッフから強制連行。萩野の血が入った人間には、雪さんの無駄が多すぎる動きなんて通じない。
傷付けないようにお願いしていたから、布団で簀巻きにされて床に寝かされていた。
結局どこにも行けない、自分の力が通じないとわかってからは、今度は俺から逃げ始めた。散歩前にいつも行方をくらませるのだ。あと、散歩中にも何度か逃げようとしたな。決して外れない番避けにGPS機能がついていることも知らずに。
それもこれも、漸く俺を捕食者として雪さんが認識した結果が招いたこと。今も威嚇が続いているのは、自分がΩで、俺から狙われている事実を意識してのことと思えば微笑ましい。
「・・・てめぇ、聞いてるのか?」
黙って雪さんの口から流れる罵詈雑言を、いつものように元気だなぁと眺めていたら、雪さんは片眉をあげて睨んでくる。
「聞いてはいるけど、現状は変わらない。
逃げずにこの場所で待っていたのは雪さんだ」
事実を述べれば気に入らず、雪さんがまたわめきだす。「てめぇ」「貴様」「おめぇ」・・・未だに名前を呼んでもくれない。
雪さん一人では出ることが出来ないアングラから、久しぶりに逃げ出そうと走り始めたのだ。白い兎が巣穴の中を走りまわるように。
俺が来れない時間も、雪さんは一生懸命出口を探して客用出入口の近くまでは行ったらしい。その度に、スタッフから強制連行。萩野の血が入った人間には、雪さんの無駄が多すぎる動きなんて通じない。
傷付けないようにお願いしていたから、布団で簀巻きにされて床に寝かされていた。
結局どこにも行けない、自分の力が通じないとわかってからは、今度は俺から逃げ始めた。散歩前にいつも行方をくらませるのだ。あと、散歩中にも何度か逃げようとしたな。決して外れない番避けにGPS機能がついていることも知らずに。
それもこれも、漸く俺を捕食者として雪さんが認識した結果が招いたこと。今も威嚇が続いているのは、自分がΩで、俺から狙われている事実を意識してのことと思えば微笑ましい。
「・・・てめぇ、聞いてるのか?」
黙って雪さんの口から流れる罵詈雑言を、いつものように元気だなぁと眺めていたら、雪さんは片眉をあげて睨んでくる。
「聞いてはいるけど、現状は変わらない。
逃げずにこの場所で待っていたのは雪さんだ」
事実を述べれば気に入らず、雪さんがまたわめきだす。「てめぇ」「貴様」「おめぇ」・・・未だに名前を呼んでもくれない。
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