Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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1 病室

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 穂高は、頭がおかしくなったとしか思えない笹部をよく見ようと身体を起こそうとしたがうまくいかない。支えなしに上半身を起こそうとしたが、普段何気なくしていた動きが今の自分にはハードルが高いことを実感。両肘をベットについて身体をあげようとしたが、全力でも背中がわずかにベットから離れただけですぐに諦めるしかなかった。
 笹部はそれを察し、立ち上がってベットの手すりに引っかけられていたコントローラーを取ると上半身が起きるように調整した。笹部が上昇スイッチを押すとベットが上がる。ベット脇に立ち上がった笹部に、穂高がゆっくり自分に向かってくる姿にも嬉しくてニヤニヤしてしまう。腰を屈め、愛する番に文字どおり吸い込まれて顔を近付ける。
 うわぁ、戸惑いと不安で揺れる瞳が可愛い過ぎる、キュッと下唇を噛んでる姿も可愛い過ぎる。あぁ、これが俺のものだなんて嬉しすぎるっっ
 そのまま笹部はキスをするつもりだったが、穂高の力が入っていない右手でペチッと頬を叩かれ渋々諦めた。
「ちーちゃん、酷いなぁ」
「なっ、なんなんだ!意味がわからないっ!お前、今、俺にっっ」
 穂高は混乱した頭で、思ったままに口走る。笹部は、そんなパニックを起こす穂高も可愛くて仕方ない。ベットと背中の間に腕を滑らせ、この腕に抱き締めたくて指先がムズムズしていた。
「ちーちゃん、落ち着いてよ~」
「落ち着けるかっっ。ここには、お前しかいないのか?俺の親は??」
「あ"ーーー、昨日ちーちゃんのおにーちゃんは来たな。親は来てない、一回も」
 笹部は言いにくそうにガリガリと頭をかく。来てないことに対してではなく、穂高の兄から預かっている二人からの伝言が穂高を傷付けるとわかっているからだ。
 仕事が忙しい二人だから期待はしていなかったが。息子が病院に運び込まれても一度も顔を出さないのかと、穂高は落胆の色を隠せない。
 笹部は、気まずさにふとベット脇のワゴンに目を向けて言わなくてはいけないことを漸く思い出した。
「あのさ、ちーちゃんにも誰にも黙ってたんだけど、俺、自分が好きなαやβをΩに変えられてさ。相手が俺に好意を持ってる前提は必要なんだけど、食べ物をお互いに渡して食べたら成立するんだよ」
「ん、あ・・・はぁぁ?」
 家族に思いを巡らせていた時に、突然飛んでもない打ち明け話を聞かされた穂高は先程より大きく口を開けたまま固まった。
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