Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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6 会議室

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 統括理事長から聞かされたのは、荒唐無稽としか言い表しようのない話だった。他の誰かが話したならば、間違いなく相手を気遣い即病院まで付き添っただろう。真剣な眼差しで語る統括理事長に鬼気迫るものを感じ、言い出せはしなかったが。
 (御三家が実在して、穂高君が変異種Ωになっていて、それを変えたのが笹部君で、しかも病院に運ばれて休んでいる間に結婚までしていて、今後は番になる予定とかっ)どれも真実味にかけた与太話。豆村は、それをてんこ盛りで一度に押し付けられ理解が追いつかなかった。消化不良というより、食卓に並べられただけでギブアップするハイカロリーメニューだ。
 一通り話し終えた統括理事長には、ぽかんと口を開いて呆けてしまった豆村に顔をしかめられ「やはり、関係者以外に理解させるのは時間がかかるか・・・」とボヤかれてしまった。けれど、それは仕方がないことだと思う。
 豆村は、目の前の扉をなかなか開ける勇気が振り絞れず、僅かでも冷静さを取り戻すため思考をわざと他へ移していく。そもそも御三家は、この国を統一した伝説の始祖神に仕えていたとされる謎の一族。この国の神社の本殿には、必ず厳重に施錠された扉の向こうに始祖神の像と三体の御三家像が祀られているレベルなのだ。豆村も、この学園に就職するために何度も近所の神社や総本社の御珠神社に足を運んでいた。
 遠い昔の伝説、神話だと思っていたものが、実はどこかでその子孫とすれ違っていてもおかしくない状況だなんて。そして、御三家が今も機能して自分宛に指示が出されるなんて。すんなり信じられるものでは無い。なにせ、御三家は名前も謎、恐らく始祖神を支えまつりごとに実際携わっていた一族なのだろうと憶測はありつつも存在は謎に包まれていた。始祖神に附随する形で人々の(αの)信仰対象という、豆村にとっては神話級、なんとも抽象的な存在なのだ。
 それでも信じるしかないのだなと悟れたのは、忠孝仁義な統括理事長の態度だった。豆村が託されたことを強制命令とはせず、豆村が納得するまで説明してくれた。言葉の端々、ピンと指先まで伸ばして語るその姿から、豆村は御三家への畏怖の念を強く感じた。尊敬する総括理事長の姿が、コレは事実なのだと雄弁に物語っていた。
 あの日、他言無用と牙に誓いをたててから退出したのは3時間後だったかな。保健室に戻ってから、事の重大さが身に沁みてブルブル震えが止まらなかった。
 (そう、今みたいに・・・)
 カタカタ手の中で箱の中身が音をたて続ける。豆村が託されたのは、笹部と笹部、いや鋼と千里への今後の注意事項説明と卒業までのフォロー全般。しかも、絶対に失敗は許されない難題で、責任は自分ばかりか統括理事長にもかかっている。
 豆村は、今までΩを避けて生きてきた。幼い頃より、Ωは理性的なα性を狂わせるので警戒しなさいと両親から強く言い含められてきたからだ。それなのに、特に厳命されているのが、今までと変わらない態度で千里に接すこと、なんて。上手くできる自信がまるで無い。
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