Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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7 寮-Ⅱ

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 千里が勉強、鋼が昼寝で時間を潰していると、開けていた窓の外から風に乗って話し声が聞こえてくる。どうやら授業を終えた一部の生徒が帰ってきたらしい。千里は手を止め、机上の片付けを始めた。
「んん?ちーちゃん、どっか行くの?」
 気配を察した鋼が、のそのそ二段ベッドの下段から出てくる。くはぁ~と欠伸をしながら、ちっとも休もうとしない千里に呆れていた。千里が頑張り屋さんなのは知っていたが、ここには自分達しかいない。もっと気を抜いて過ごしたら良いのに。って言うか、ごろんと一緒に寝たいし触りたいしなどと邪なことまで考えていた。父親から、突然自分が迫ったりなどすれば相手を自殺に追い込むことになるぞと厳しく厳しくかなり厳しく言われたので我慢はする、うん、我慢できる範囲で頑張るつもりではいる。
「休んでいた間のことを聞きに、一度学校へ戻って教師に確認しようと思う。明日の教科準備の確認もしたいしな」
「そんなこと、わざわざちーちゃんが行かなくても漆戸がくるって。ほらほら、それにさ。豆からも普段通りの生活してても良いけど、今までなら考えられない危険もそこには絡んでくるから、あんまり動き回らないほうが良いって言われてたし」
「そんな言い方だったか?」
 明らかに鋼が豆村養護教諭の話を都合の良いように解釈してまとめているが、あながち間違いではないので千里も否定しきれない。酷使した目を労るため、眼鏡を外して目元の簡単なマッサージ。目を閉じたまま首や肩を回して身体をほぐす。
 入院中、熱さえ下がれば健康体と変わらなかったのだが、万一のことを考えて医師からベッドで横になっているよう言われていた。律儀な千里は、言いつけを守りトイレ以外はベッドで寝て過ごしていたのだ。一週間とはいえ、寝てばかりだった身体が訛っている気がしてならない。千里は、夕飯まで素振りでもしようかと机に立てかけていた竹刀に手を伸ばした。
「ちーちゃん、今度はそんなの持ってどこに行くつもり?」
「中庭だ。漆戸もすぐには来ないだろう。お前はここで待っていれば良い」
「いやいや、そんなわけにはいかないしぃ。ちーちゃんは、一人でいちゃだめって言われてるでしょ?」
 鋼は、入院中からずっと千里に張り付いている。確かに以前から共に行動することは多く、当たり前のように横にいる存在ではいたがいい加減鬱陶しい。
「中庭なら、他の生徒もいるから一人じゃない。それに、だ。私は、お前と離れて考えたいことがあるんだ」
 手に馴染んだ竹刀の切っ先を、鋼に向けて構える。全ての元凶、お前が悪い。
「ダメダメ、いくらちーちゃんのお願いでもそれはダメ。離れてる間に何かあったらどーすんの?」
「ここは、見知った人間しか入れない場所だ。何が起こるって言うんだ?大体、私に何か良からぬことをしようとするならお前だろうが」
 ブンッと一振りした竹刀が宙を切る。手加減無しで狙った頭に軽々避けられ、千里は益々不機嫌になっていた。
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