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前日譚(黒曜&雅)
所有の印
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床に乱暴に放られても、力が戻らない俺。
大男は、無表情で床に倒れた俺を見下ろし溜息をついた。
勝手に人を襲っといて。
なんで溜息つかれなくちゃなんねーんだよ!
ギリギリ歯軋りくらいは出来たので、俺は歯軋りしながら睨みつける。
俺の睨みは迫力があるって言われてるのに、全然きかねぇ。
スルーされてるのが伝わってくる。
コイツ、ほんとになんなんだよ!
全く俺の睨みも歯軋りも意に介さず。
大男は、無造作に俺の右腕を身体ごと持ち上げ。
傷口にその舌を近づける。
「や、やめっ、イッッテーっつーの!!」
片腕を無理な方向で持ち上げられて。
傷口に遠慮なしに舌を這わされて。
俺が悲鳴を上げても、無視。
「ヒャッ、あ、やめ、アァッ、んっ」
そのまま、掌から出ていた血を指の先に至るまで舐め取られ。
妙な声が上がってしまった。
なんだ、コレ、ヤバイ。
顔が熱い、絶対俺の顔赤くなってる!!
「これ以上は、もう取れんな」
俺の反応も無視、かよ。
ようやく腕を離され、気付く。
腕と掌の傷、治ってる。
ざっくり開いた傷口も、細かな傷も、綺麗に皮膚で塞がっていた。
ありえない、よな。
同じくらいざっくり切ったやつらが、病院で何針も縫われているの、見たことあるし。
こんなにあっさり傷口が塞がるなんて、どう考えてもおかしい。
怪我をしたことがない俺にも、これが異常すぎることくらいわかる。
フラフラする身体で、なんとか近くの棚に頼りながら立ち上がる。
なんなんだ、コイツ。
「お前、一体・・・」
バンッ
言い終わらないうちに、気付いたら俺は壁に叩きつけられていた。
背中がしなるほどの衝撃に、息が止まる。
何が起こったのか、何されたのか、全然見えなかった。
受け身をとる暇もない。
「貴様ごときに、お前呼ばわりされるとは、な」
ずりずりと、床に座りこんだ俺を見下ろす大男は。
無表情だけど、静かに怒っているのは伝わってきた。
俺、殺されるのか・・・?
再び、命の危険。
脅しとか、そんなものは口にしないけど。
喉元に刃物をつきたてられてるみたいな、冷たい恐怖。
目を離したら、ぶっ刺されそう。
今までの喧嘩の数々が、このやり取りに比べたらおままごとにさえならない。
「だ、だって、名前知らねーし・・・」
言い訳がましく、震える声で弁明してしまう。
大男は、俺を見下して沈黙。
な、なんなんだよっ
無言、こえーんだよ!
「・・・貴様の首に、その血が我の所有だと印をつけた。
我は貴様の主、主様と呼ぶのを許そう」
はぁ??
俺が、コイツの所有ってなんだよ。
主様って、何時代だよ。
さっき噛まれた首筋を、手で触ってみる。
窪んでいる、牙の跡がそうなのか?
「印は貴様ごときには感じられん。
もちろん、他の鬼にもな。
特異な血を気付かれても面倒だ」
「他のってことは、おま・・・主様は、鬼なのか?」
思わずお前と言いかけ、睨まれ、身がすくむ。
「そう言われていた。
喰われたくなければ、明日はもっとまともな言葉を覚えて来い」
主、様は。
そのあと、俺はまるで居ないものだと決めたみたいで。
壁に寄りかかり、窓から外を眺めた姿勢で動かなくなった。
ショーウインドウのマネキンみたいだ。
とりあえず、今日はもう、いいってことだよな。
俺は、掃除前より散らかった物置の床を縫いながらその場から離れた。
全然意味はなさそうだけど、他のヤツが巻き込まれるのを防ぐために扉鍵をかける。
そこで、やっと身体の緊張が解けた。
ずりずりと扉に背を預けて座り込む。
なんだよ、コレ。
どうなってんだよ。
今日から、春休みで。
俺、楽しみにしてたのに。
毎日あんな主様、相手にしなきゃなんねぇのかよっ
大男は、無表情で床に倒れた俺を見下ろし溜息をついた。
勝手に人を襲っといて。
なんで溜息つかれなくちゃなんねーんだよ!
ギリギリ歯軋りくらいは出来たので、俺は歯軋りしながら睨みつける。
俺の睨みは迫力があるって言われてるのに、全然きかねぇ。
スルーされてるのが伝わってくる。
コイツ、ほんとになんなんだよ!
全く俺の睨みも歯軋りも意に介さず。
大男は、無造作に俺の右腕を身体ごと持ち上げ。
傷口にその舌を近づける。
「や、やめっ、イッッテーっつーの!!」
片腕を無理な方向で持ち上げられて。
傷口に遠慮なしに舌を這わされて。
俺が悲鳴を上げても、無視。
「ヒャッ、あ、やめ、アァッ、んっ」
そのまま、掌から出ていた血を指の先に至るまで舐め取られ。
妙な声が上がってしまった。
なんだ、コレ、ヤバイ。
顔が熱い、絶対俺の顔赤くなってる!!
「これ以上は、もう取れんな」
俺の反応も無視、かよ。
ようやく腕を離され、気付く。
腕と掌の傷、治ってる。
ざっくり開いた傷口も、細かな傷も、綺麗に皮膚で塞がっていた。
ありえない、よな。
同じくらいざっくり切ったやつらが、病院で何針も縫われているの、見たことあるし。
こんなにあっさり傷口が塞がるなんて、どう考えてもおかしい。
怪我をしたことがない俺にも、これが異常すぎることくらいわかる。
フラフラする身体で、なんとか近くの棚に頼りながら立ち上がる。
なんなんだ、コイツ。
「お前、一体・・・」
バンッ
言い終わらないうちに、気付いたら俺は壁に叩きつけられていた。
背中がしなるほどの衝撃に、息が止まる。
何が起こったのか、何されたのか、全然見えなかった。
受け身をとる暇もない。
「貴様ごときに、お前呼ばわりされるとは、な」
ずりずりと、床に座りこんだ俺を見下ろす大男は。
無表情だけど、静かに怒っているのは伝わってきた。
俺、殺されるのか・・・?
再び、命の危険。
脅しとか、そんなものは口にしないけど。
喉元に刃物をつきたてられてるみたいな、冷たい恐怖。
目を離したら、ぶっ刺されそう。
今までの喧嘩の数々が、このやり取りに比べたらおままごとにさえならない。
「だ、だって、名前知らねーし・・・」
言い訳がましく、震える声で弁明してしまう。
大男は、俺を見下して沈黙。
な、なんなんだよっ
無言、こえーんだよ!
「・・・貴様の首に、その血が我の所有だと印をつけた。
我は貴様の主、主様と呼ぶのを許そう」
はぁ??
俺が、コイツの所有ってなんだよ。
主様って、何時代だよ。
さっき噛まれた首筋を、手で触ってみる。
窪んでいる、牙の跡がそうなのか?
「印は貴様ごときには感じられん。
もちろん、他の鬼にもな。
特異な血を気付かれても面倒だ」
「他のってことは、おま・・・主様は、鬼なのか?」
思わずお前と言いかけ、睨まれ、身がすくむ。
「そう言われていた。
喰われたくなければ、明日はもっとまともな言葉を覚えて来い」
主、様は。
そのあと、俺はまるで居ないものだと決めたみたいで。
壁に寄りかかり、窓から外を眺めた姿勢で動かなくなった。
ショーウインドウのマネキンみたいだ。
とりあえず、今日はもう、いいってことだよな。
俺は、掃除前より散らかった物置の床を縫いながらその場から離れた。
全然意味はなさそうだけど、他のヤツが巻き込まれるのを防ぐために扉鍵をかける。
そこで、やっと身体の緊張が解けた。
ずりずりと扉に背を預けて座り込む。
なんだよ、コレ。
どうなってんだよ。
今日から、春休みで。
俺、楽しみにしてたのに。
毎日あんな主様、相手にしなきゃなんねぇのかよっ
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