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信心する神に選ばれ弄ばれています
1 憐れな主に労りを
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宗教国家ルクアの王族は、唯一神ルルドの血を引く長子直系。
ルルドを祀る神殿と、その血を引く王族。
この二強関係の均衡がルクアの平和を永らく保っていた。
しかし、16年前の王子アルス誕生をきっかけに均衡は崩れた。
聖なる焔で災厄を払い、穢れた大地を再生させたルルドと同じ赤い髪と瞳をもつ王子。
ルクアの人種は黒髪黒目。
王と王妃も例に漏れず、歴代の王にも緋色の王は居なかった。
そのため、アルスは物心つくよりも早くルルドの生まれ変わりと周囲から注目され慕われていた。
年々高まる国民からの期待と崇拝。
ルルドよりもアルスを信仰対象とする国民まで現れ、神殿の地位を脅かす存在になっていた。
しかし、アルスが成人となった日。
ルルドより選択の儀で運命の相手と示されたのは、隣国から集められた姫君からではなく、神事を司っていた神官ツィード。
神殿と王族の関係が、再び変わろうとしていた。
翌朝、ツィードに用意されていた部屋の窓辺。
従者レオンは、一夜明けても帰ってこない主に待ちくたびれ窓辺に座り欠伸を静かに噛み殺した。
同性未経験のアルスと、性教育をまともに受けていないツィードの交わりの儀に指南役として途中まで同席したが。
一秒でも早くツィードに捩じ込もうとするアルスと、パニック状態の箱入り引きこもりのツィード。
二人のやりとりを思い出し、口角が自然と上がる。
レオンにとって、胸焼けしそうなくらい甘ったるい空気が流れていた。
「・・・まさか、あの調子でまだやってるとかじゃないだろうけど。
うん、まさかなぁ」
獣じゃないんだから。
そう続けようとしたが、何度も夢で対峙しているアルスの未来、殺戮王の姿が頭を過り鳥肌がたった。
いや、アイツは獣だったわ。
ツィードに出会わなかったもう一つのアルスの未来。
止まない飢餓を、人間を殺戮することで埋めようとしていた血まみれの神の子。
あれをツィードが引き受けているのなら、まだやっているかもなぁ。
レオンは、両掌にルルドから聖痕を刻まれて以降、常識や良心よりツィードを守ることを優先して生きてきた。
殺戮王の贄となるために、神殿に囲われ純粋培養されていた憐れな主を思うと欠片ほどしか残っていない良心も咎める。
レオンは、せめて帰ってきたらゆっくり寝かせて労ろうと思った。
まぁ、先客次第だけどね。
レオンは鋭い視線を人の気配がする扉に向ける。
もうツィードの命を狙ってこちらに来たのか?
意外に仕事が早いなとレオンは感心した。
男性であるツィードが運命の相手に定められたことで、長子直系の血筋が途絶える。
それを良しとしない輩が出るのは想定内だが、まさか平和ボケした王族派が翌朝に仕掛けてくるとは。
レオンは、服の袖に隠していたナイフを取りだすと、右掌に隠して相手の出方を待った。
ルルドを祀る神殿と、その血を引く王族。
この二強関係の均衡がルクアの平和を永らく保っていた。
しかし、16年前の王子アルス誕生をきっかけに均衡は崩れた。
聖なる焔で災厄を払い、穢れた大地を再生させたルルドと同じ赤い髪と瞳をもつ王子。
ルクアの人種は黒髪黒目。
王と王妃も例に漏れず、歴代の王にも緋色の王は居なかった。
そのため、アルスは物心つくよりも早くルルドの生まれ変わりと周囲から注目され慕われていた。
年々高まる国民からの期待と崇拝。
ルルドよりもアルスを信仰対象とする国民まで現れ、神殿の地位を脅かす存在になっていた。
しかし、アルスが成人となった日。
ルルドより選択の儀で運命の相手と示されたのは、隣国から集められた姫君からではなく、神事を司っていた神官ツィード。
神殿と王族の関係が、再び変わろうとしていた。
翌朝、ツィードに用意されていた部屋の窓辺。
従者レオンは、一夜明けても帰ってこない主に待ちくたびれ窓辺に座り欠伸を静かに噛み殺した。
同性未経験のアルスと、性教育をまともに受けていないツィードの交わりの儀に指南役として途中まで同席したが。
一秒でも早くツィードに捩じ込もうとするアルスと、パニック状態の箱入り引きこもりのツィード。
二人のやりとりを思い出し、口角が自然と上がる。
レオンにとって、胸焼けしそうなくらい甘ったるい空気が流れていた。
「・・・まさか、あの調子でまだやってるとかじゃないだろうけど。
うん、まさかなぁ」
獣じゃないんだから。
そう続けようとしたが、何度も夢で対峙しているアルスの未来、殺戮王の姿が頭を過り鳥肌がたった。
いや、アイツは獣だったわ。
ツィードに出会わなかったもう一つのアルスの未来。
止まない飢餓を、人間を殺戮することで埋めようとしていた血まみれの神の子。
あれをツィードが引き受けているのなら、まだやっているかもなぁ。
レオンは、両掌にルルドから聖痕を刻まれて以降、常識や良心よりツィードを守ることを優先して生きてきた。
殺戮王の贄となるために、神殿に囲われ純粋培養されていた憐れな主を思うと欠片ほどしか残っていない良心も咎める。
レオンは、せめて帰ってきたらゆっくり寝かせて労ろうと思った。
まぁ、先客次第だけどね。
レオンは鋭い視線を人の気配がする扉に向ける。
もうツィードの命を狙ってこちらに来たのか?
意外に仕事が早いなとレオンは感心した。
男性であるツィードが運命の相手に定められたことで、長子直系の血筋が途絶える。
それを良しとしない輩が出るのは想定内だが、まさか平和ボケした王族派が翌朝に仕掛けてくるとは。
レオンは、服の袖に隠していたナイフを取りだすと、右掌に隠して相手の出方を待った。
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