未来の殺戮王は愛に溺れる

三日月

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信心する神に選ばれ弄ばれています

2 頭痛の種

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ザキムは戦争で亡くなった両親に代わり、家族の食いぶちを稼ぐために無償の士官学校から軍隊へ入隊。
武勲を立てようと懸命に働いたが、左目を負傷し前線から離れている間に敵国と不可侵協定が締結。
復帰すると、仕事内容が生死を賭けた戦から王族や国境の警護へ激変。
あのとき、片目でもやれるならとしがみつかずさっさと辞めとけば良かったなぁ。
ザキムは、徹夜明けにピーチクパーチク報告、と言うか感想をダラダラ喋る部下を椅子に座り眺めていた。
同期の野郎共はさっさと軍に見切りをつけ開業や転職。
二十年後の今は、孫までいるヤツもいる。
それなのに、俺は不出来な部下のレベルの低い報告を連続12回も聞かされ、帰ったところで隙間風が吹く独身宿舎。
警備隊隊長を任されていても、年の離れた部下に気を使って風呂の時間も自由に決められない。
くたびれてんな、俺。
今度の休みは姪っこの顔を見に行こう。

「わーった、わーった。
ごくろーさん」
「隊長っ、あしらわないでくださいよっ
あっちの大臣ときたら、神事の結果がおかしいだの、いつやり直すんだだの、グチグチグチグチ一晩中張り付いて文句垂れてきたんすよ!
神事は神殿管轄だから、俺に言われても困るって何度も何度も言ってんのにっ
何様のつもりなんすかねっ、あいつら」

血走った目でザキムにグチるひょっこ兵士。
やってることは、その大臣様と変わらねーじゃねぇか。
ザキムはボリボリと短く刈り上げた頭を掻いた。
この一年でめっきり白髪が増えたが、白黒の比率が逆転する日は近そうだ。
腕がたつと目をかけてきた若者は、選択の儀に招待されたことがどれ程ルクアにとって重要な来賓を示すかもわからないらしい。

「はぁー、もぉ、わかったからとっとと休んでこい。
神事の結果は正式に神殿通じて発表されてるし、今日か明日にはお帰りになる」

と、思いたい。
ザキムは、あっさり帰国するとは思っていなかったがその場を締めたくて願望を述べた。
選択の儀のために、足りない人材をやりくりした来賓警護。
この一年の打ち合わせですっかりタメ口のメイド長も、来賓の部屋割や食事の時間に気を使って準備していた。
選択の儀が終われば、努力も報われ清々しい気持ちで祝えると思っていたんだが。

「なーんで、神官になるかなぁ」

納得しない他国が神官の命を狙って開戦するとか。
元々戦思考のザキムは最悪の事態を考えてしまう。
軍所属という肩書き欲しさに人は集まっても、兵士には数より質が必要だ。
使える人材は一握りで、使えると思っていた人材も文武両道とはいかなかった。
ルクアの軍隊は、戦争終結で安易に士官学校の予算を縮小した悪政のツケが徐々に現れ始めていた。

ドンドンドン

痛む頭を押さえていたザキム。
扉を連打されて更に痛みが酷くなる。
予定の報告は全部受けた後だ。
嫌な予感しかしない。
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