未来の殺戮王は愛に溺れる

三日月

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信心する神に選ばれ弄ばれています

3 不思議な従者

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ザキムは、神官の部屋の前で迷った末にノックせず、わざと乱暴に扉を開けた。

「従者はいるか」

窓から朝陽が射し込んだ部屋は、隻眼老眼のザキムでも確認しやすい。
部屋の手前にある従者用ベットをまず見たが、寝た形跡がない。
部屋全体を見渡せば、窓際に腰掛けた青年がザキムの顔を見て懐古の眼差しを向けてくる。
何処かで出会っていたか?
ルクアでは珍しい褐色の肌をもつ青年。
神事で城中動き回っていたから、すれ違うくらいはしていたかもしれないが・・・
ザキムが記憶を遡っている間に、従者は眼差しを笑みで打ち消し近づいてきた。

「おりますよ」

神殿の従者にしては、やけに厚みのある体つきで身長も高い。
180cmのザキムと並んでも遜色がなかった。
ザキムの中で、神官と従者といえばよぼよぼの老人と少年の組合わせが定型。
こんなゴツい従者もいるのか。
しかも、この従者、自然体なくせに動きに隙も無駄もない。
頭でっかちな神殿関係者だと過小評価するのはヤバイかもしれん。
だいたい、反応がおかしい。
急に兵士が入ってきたら、まずは神官に何があったのかと身構えるか、切羽詰まって何事かと聞いてくる。
さすがに理由を知れば取り乱すか?

「王子の命により、神官従者を捕縛し処刑する」
「・・・はぁ、俺かよ」

ストンとまた一段階肩の力を抜いた従者に、告げたザキムの方が言葉を失った。
おいおいおいっ、処刑の意味わかってんのかよ?!
だいたい、王族側の軍が神殿側の従者を処刑するなんて内戦開始の引き金になんだぞ?
こいつら世代には、傾国の危機感がないのかっ

「どうぞ?」

しかも、両手を縛れと差し出してくる。
例え理由を聞かれても、アルスの「従者の首をはねてこい」では答えようがなかったが・・・もっと、こぉ、なんかあるだろう?!
逃げるとか、逃げるとか、逃げるとかっ
早朝で、警備も手薄。
お前が逃げた後に、部屋には居なかったと城内を探して時間稼ぎもしてやれるっ
それを口に出すわけには行かず、ザキムは掌から手の甲まで緻密な紋様が書き込まれた手首に捕縛用のロープを巻く。
従順過ぎる態度に疑問しかわいてこない。
手首を縛られても従者は笑顔のまま。
思わず、私語は許されない関係なのに尋ねてしまう。

「お前、自殺願望でもあったのか?」
「あー、どうかなぁ?
まぁ、全部から解放されるんだし、明日のこと考えるより楽とは思うけどね」

拘束された腕を上げ、頭の後ろで両手を組む従者。
なんてことはない動作だったのだが、至近距離で見ていたザキムの心臓はバクッと不意打ちで高鳴った。
目のやり場に困り、視線をさ迷わせる。
特別女っぽいわけでもないし、美人というわけでもないのに所作の流れに含みを感じる。
この服のせいか?
胸元が開いた膝丈白地のシャツ。
袖口は絞られているが、そこから肩口までスリットが入っているため腕に螺旋を描く刺青が見え隠れしている。
腰まで伸びるスリットの隙間からは、刺青が見えるが下着の線は見えない。

「おい、下はどこにあるんだ?」

神殿の従者は、このシャツに足首まで隠れるダボッとしたパンツ姿。
どこかにあるはずだと探したザキムは、従者のベット脇にあった椅子の背にそれを見つけた。
手が不自由な従者に代わり、自然と幼かった弟達にしてやったように身を屈め、足を通しやすいように口を広げる。

「へ?
兵士さんが、わざわざ履かせてくれんの?
こんなことされたの、初めてだよ」

ニヤニヤ笑いながら片足を上げる従者。
そこには、手と同じく爪先から足の付け根目がけて螺旋を描く刺青が走っていた。
ザキムの目は無意識にその先を辿ってしまい、白地のシャツに映える艶かしい肌の迫力に慌てて目を逸らした。
ザキムに比べれば細いが、部下を見習わせたいくらいに鍛えられた足。
なのに、下っ腹が熱く疼いてしまった自分の節操のなさに目眩。
目に焼き付いた残像が離れない。
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