未来の殺戮王は愛に溺れる

三日月

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信心する神に選ばれ弄ばれています

4 従者の過去

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何か話していた方が、気が紛れるかもしれん。
ザキムは、従者に感じた劣情を仕事に振り回され禁欲していたせいだと思い込んだ。
それに、内容に兵士の配置や経路を匂わせれば流石に姿を眩ませるだろう。
ザキムは捕縛したロープの端を持ち廊下へ出た。
警備責任者が逃亡を手伝おうとしているのだから、王子の気ままな処刑は今回も回避できるだろう。

「俺の名前は、ザキム。
この城の警備隊隊長だ」
「俺は、レオン」

緩い自己紹介から二人の会話は始まった。
ザキムは、レオンが経路を覚えやすいようにわざとゆっくり処刑場へ向かう。

「その肌は、異国から来たのか?」
「あー、これ?
半分だけで、生まれも育ちもルクアだ」

戦利品として連れ帰られたレオンの母親は、物静かな女性だった。
自由を奪われた彼女は、正妻から嫌がらせを受ける内に異国のルルド神に助けを求めすがった。
この掌の聖痕を見るなり、館に火を付け自分を逃がした母親は、恐らくこの世には居ないだろう。

「その刺青、綺麗だな。
そっちの風習か?」
「あー、まあ」

レオンは、言葉を濁す。
幼い足で三日三晩歩き通したレオンは、ツィードのいる神殿へ足を引きずり空きっ腹を抱えてなんとかたどり着いた。
ルルドは、ツィードを守れと示しても直接助けの手を差し伸べたり、やり方までは教えてくれない。
レオンの珍しい肌のお陰で、奴隷市場から逃げてきたという出鱈目はすんなり信じられ、その日の内に年老いた神官から身体を蹂躙され心を殺された。
聖痕を信じてもらえず、消してしまえと迫られ刺青で隠すからと懇願。
褐色の肌に黒の刺青は、予想外に好色な神官に気に入られ増え続けた。
誉められると、鼻息荒く「素晴らしい」と舐め回されたことを思い出して気分が悪くなる。
ツィードを狙う神官の気を引くために、自分から誘った回数は数える気にもならない。
全てはツィードを守ることが優先。
自分を取り戻すとしたら、死ぬときしか赦されないんじゃないか?
レオンは、「あそこに兵士がいる」「この階段は、途中で封鎖されている」と情報を混ぜてくるザキムの思惑には当の昔に気付いていた。
殺戮王の誕生を引き延ばしていた未来の将軍。
直接会えるとは思っていなかったが、ずっと人が良くて優しすぎる。
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