未来の殺戮王は愛に溺れる

三日月

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信心する神に選ばれ弄ばれています

5 空っぽの従者

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「なーんで、ここに居るんだ!」 

用を足してくるからここで待っていろと言われ、大人しく従ったのに怒鳴られる。
理不尽だと思える状況だが、レオンはその荒い声に心地好ささえ感じていた。
部下達が駆け付けて来るのではないか。
一拍遅れ、自分の口を塞ぐザキムの姿が面白くてレオンはケラケラ笑ってしまった。

「なんで笑っている!
いや、それよりなんで逃げないんだ!」
「俺が逃げたら、ザキムが責任を取らされて処刑されるだろう。
俺より、あんたの方がこの国には必要だ」

レオンは拘束された両手で軽く彼の胸当てを叩いた。
軽いのに、重い。
胸がつかえる何かを預けられたような重みに、ザキムの身体がグラリと揺れた。

「お、お前だって、必要だろう。
それに、帰りを待っている人もいるんじゃないのか?」

神殿のジジイどもとか?
思い付いたのがそこしかなく、レオンは自嘲する。
俺を待つ人なんて、誰もいない。
肩をすくめたレオンに、ザキムは溜め息。

「俺のことは心配ない。
これまで何度も逃している節穴隊長だからな。
いいから、とっとと逃げろ」

ザキムがロープをほどこうと手を伸ばすと、レオンは猫のようにするりと避けて距離を置いた。
そして、笑う。

「いいの、いいの、俺のことは」

交わりの儀から抜けたとき、役目を終えた自分には何もないことに気付いてしまった。
空っぽで、スカスカ。
達成感より虚脱感が遥かに勝った。
消えなかった聖痕を見ても、一度開いた隙間は埋まらない。
動かないザキムに見切りをつけ、レオンはこちらに向かってきた兵士にわざと捕縛された両手を掲げて注意を引く。

「あれ、隊長、こんなとこでなにしてるんすか?
神殿の従者を縛ってどこ連れてくんです?
まさか、あの王子の気紛れ処刑じゃないっすよね?」

ザキムは、ヘラヘラ笑いながら歩いてきた部下を今すぐ気絶させてやろうかと思ったが、その背後から追加で二人も顔を出してきたので流石に断念。
あー、くっそ!
殺したくねーのにっ
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