7 / 39
孤独な日々からの解放
第2王子
しおりを挟む「ここが、Aクラス‥新しい世界の始まり場所!」
1ーAと書かれた看板を見上げながら、
胸をときめかせる。
ここに、わたくしの友人第1号が居るのですね!!
早く、早く!
私をこの孤独から救い出してくれるお方!
女性の方かしら?それとも男性?
どのような髪色で、どのような瞳の色をしていますの?
ああ、楽しみで楽しみで仕方がありません。
この扉の先にっ!!
「そこの女。邪魔だ。いつまでそこに突っ立っているつもりだ?」
怒りの篭った低すぎないハスキーボイス。
振り返ると、見えるのは黄金。
絶対的王者の証。
見覚えのある顔つき。
だけど、どこか‥?
ラピス「‥‥第1王子、アルベルト・クラウン‥?」
「ふん、呼び捨てとはいい度胸だな。だが残念ながら、俺は二番目だ。第2王子、リカルド・クラウン。
始めだから大目に見てやろう。だが、
今後やつと間違える事は許さない。よく覚えておけ女。」
アルベルト王子の、3ヶ月後に生まれた王子、
第2王子 リカルド・クラウン。
腹違いとはいえ、よく似ていらっしゃる。
瞳の色が同じであれば、見分けがつかないほどだわ。
ラピス「あら、これは失礼いたしましたわ。
リカルド様。
わたくしは、ラピス・クローリーと申します。以後お見知り置きを‥。」
その場で制服のスカートの裾を持ち上げて礼をする。
いくら、身分を問わないこの学園でも、
挨拶は常識ですわ。
ルド「ふっ、躾がなっているな。よい、許す。さあ、そこを退け女。
俺の為に道を開けろ。」
なっ!?今なんとっ!?
道を‥開けろですって!?
なんて恐ろしいお方っ!?
レディに対してなんて失礼な!!
まったく‥王家で育ちながら、勉強不足にもほどがありますわ!
リカルド様もこの教室に入ろうとしているということは、同じAクラス。
この方と一緒にこのAクラスで過ごしていくには、少しレディの扱いを教えて差し上げた方がよろしいですわね。
ラピス「ふふ、おかしな方ですわ‥リカルド様。」
わたくしは、踏ん反り返るリカルド様にクスリと微笑む。
ルド「っ、どういう意味だ‥?」
あら、人を怪しげに見つめてはいけませんわよ。
ラピス「嫌ですわ、道を開けろだなんて‥レディに対して失礼じゃありませんか?どなたが講師を担当していらっしゃったのですか?レディの扱いを心得ていないなんて!この先、王様を支える立場である貴方が!?不安になりましてよ!!」
ルド「は、はあ?!貴様、誰に物を言っているか分かっているのか!?」
間抜けな顔で指を突き刺してくるリカルド様。
あらまあ!?大変!これは重症ですわね!!
ラピス「仕方ありませんわ!!わたくしが教えて差し上げます。さあ、早くお手をお出しになって!!」
ルド「は、はあ?!何故、俺が!?ってちょ、おい!?勝手に触れるな!!!何をする!!」
リカルド様の腕を取り、自らの手のひらをその上に乗せ、握りしめる。
引き剥がそうとするリカルド様だが、
まだまだ力が足りない。
私の握力に勝とうだなんて、10年早いですわ!
ラピス「よし、これでよろしくてよ。次は、エスコートですわね。さあ、行きますわよ。」
ルド「ひ、ひっぱるな!まて!!おい!聞いているのか!というか、何故こんなにも力が強いのだ!?くそっ、外れない!?」
ラピス「リカルド様、背筋を伸ばしてくださいませ!!優雅に、そして美しくですわ!!」
私は舞うように教室への扉を開ける。
ルド「や、やめ!?」
クラスの視線が、一気にこちらへ向いたところで、
ラピス「ほら、次は笑顔で挨拶を!
御機嫌よう皆様!」
ルド「つっ!!?」
これで完璧ですわ。
ふう、良い仕事をしました。
少し強引でしたが、これも
国のため、王家のため。
「あのリカルド様が女性をエスコートしているぞ!?」
「何者だあの令嬢は!?」
ラピス「ふふ、ほら、リカルド様!ご覧ください。皆、リカルド様の素敵なエスコートに呆気にとられておりますわ!
これからも、レディにはこのように接するのですよ?
それでは、わたくしは自分の席へ失礼いたしますわね!ふふふ!」
これは借りにはしないでおきますわね、リカルド様!
さあ、ここからが楽しい人生の開幕です!ふふふ!
ラピス「ふふふふ‥」
ルド「‥!?!?な、なんなんだ‥あの女は‥!?!?」
そして、ここにわたくしに恐怖する男性が1人増えたなんて事は知らずに、
わたくしは、妖しい笑みを浮かべておりました。
これが私ラピス・クローリー12歳。
リカルド様との出会いでした。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる