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ペア戦開幕
視線の先
しおりを挟むアルベルトsideーー
アル「この歌‥」
準決勝を終え、控え室へ戻る途中、
どこからか、胸の奥に眠る懐かしい歌声が響いてきた。
急いでその声が聴こえる方へ向かうと、
第2控え室の奥、扉の無いその部屋で、
彼女と、その膝に頭を乗せ眠る弟の姿がそこにはあった。
アル「リカルド‥と、あの子は‥」
リカルドを優しく見つめながら、
美しい歌を歌うその人は‥
5年前のあの少女で‥
あの頃よりも大人びた彼女は、
その不思議で透き通った美しい髪を輝かせながら、
不思議な儚い雰囲気を醸し出していた。
リア「アルベルト様‥次は決勝ですわね。」
アル「うん‥そうだね。」
リア「っ!?あれは‥リカルド様とッ」
汗を拭きにいくと、少し別れていたリア。
僕が見惚れていた先に視線を向ける。
アル「ラピス・クローリー‥。僕の恩人。
不思議な人だね。あのリカルドが、あんなに安心しきってる。」
リア「っ、な、なんだか‥2人だけの空間ですわね‥まるで‥恋人同士のような‥」
恋人‥
リカルドが‥?
違う、あれは‥きっと‥
アル「‥そうかな?僕には、
彼女の儚さに‥母親の面影を重ねているように見えるけど‥。」
リア「アルベルト様‥。」
リアが困惑した顔で、こちらを見つめる。
僕がこんな事を言うのは意外だったのだろう。
アル「なんてね‥。さあ、ここは先客がいるようだ。他をあたろうか。」
リア「‥はい。」
リカルドの母親は元踊り子。
王国一の美貌とその青い瞳は、世の男を魅了した。
現王もその1人だ。
第2王妃となったリカルドの母親は、
元庶民で差別されながらも、
その美貌と才で、王室での後ろ盾を多く作った。
僕の母である正妃をも超えるほど‥
しかし、
大臣との親密な関係が王の耳に入る事で、
彼女は王室を追放されてしまった。
まだ幼い息子、リカルドを残して‥
僕はあの光景を見たことがある。
リカルドの母親が、幼いリカルドを膝に乗せ、
とても儚い恋の歌を歌っていた‥
アル「‥。だけどその声は‥君のものじゃないよ、リカルド‥」
母親に重ねているのなら、今はそれでいい。
だけど、それ以上を求めたのなら僕はーーー
アルベルトside endーーー
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