希望を歌う悪の姫

花村 ネズリ

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ペア戦開幕

子守唄

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その後も、わたくし達ペアは、


ルド「はああっ!!」

ラピス「リカルド様~、ファイトですわ!」


先生「勝者、1ーA No.2」


熱い戦いを繰り広げ、


ラピス「リカルド様!そこです!!そこそこ!!」


ルド「クッ!?ふんっ!!」



「勝者‥1ーA No.2」



無事、


ルド「ぜえ‥はあ‥このっ!!!」


ラピス「リカルド様!勢いが足りませんわよ!!」


ルド「くそ‥っ!くたばれっ!?」


先生「あー、‥勝者‥1ーA No.2」






準決勝まで勝ち上がったのでした。






ラピス「おめでとうございます。リカルド様。あと2勝すれば、優勝ですわね。」



ルド「はっ、‥っああ、‥」


ラピス「あら?息が上がっておられますよ?大丈夫ですか?
ほら、これでもお飲みください。」


ルド「誰の、せいだと‥っ、寄越せ!
ゴクゴクーッ!?ープハッ!?ゔ!?なんだこれは!?」


ラピス「クローリー家特製の、疲労に効く飲み物ですわ。少々独特な味ですが、効力は素晴らしいのですよ?さあ、もっと飲んでくださいませ!」


ルド「やめろ!結構だ!!!はあ‥

俺としたことが‥このくらいで息を乱すなど鍛錬が足りんな‥くそっ‥

次の試合まで少し時間があるな‥
俺はここで一眠りして休む。
お前は、見張りでもしていろ。」



ラピス「‥膝枕はいりますか?」


ルド「お、まっ!?!!!お願いだから少し静かにしていろ!!分かったな!!?」



リカルド様は、そのまま控え室のソファーで横になられてしまいました。


あら、暇になってしまいますわね‥




ルド「‥」


少しして、リカルド様から寝息が聞こえてきます。
よほどお疲れだったのでしょう。

当たり前ですわ。
わたくしは、先の試合、殆ど何もしておりません。

リカルド様の言う通り、自分を守る事に専念しました。

そして、リカルド様も自らの言葉を守り通すかのように、一人で数十人を相手にして戦って‥

ほんと、


ラピス「真面目な人‥」



わたくしは、リカルド様の頭の横に腰掛け、
彼の黄金の前髪に触れる。



ルド「‥何をしている」

ふいに空色の瞳が、私を捉える。


ラピス「あら、起きていましたの?」


ルド「見張っていろと言ったはずだが?」


ラピス「今は準決勝の試合中ですわよ?リカルド様のファンも取り巻き達も、皆観客席で熱いバトルに盛り上がっていますわ。」

ルド「チッ‥」


ラピス「時間になればちゃんと起こしますから。気にせず。眠ってください。
そうですね‥とある令嬢の欲に塗れた〝子守唄でも聴きながら‥」


ルド「っ‥こっちに寄れ」


わたくしの意図を読み取ったのでしょう。
少し拗ねたように言うリカルド様は、
どこか珍しく年相応で‥



ラピス「ふふ、膝枕はいらないのではなかったのですか?」


ルド「この硬い足で我慢してやる。さあ、さっさとその欲まみれの歌とやらを聴かせろ」

ポスンとわたくしの膝に収まる黄金は、
とても偉そうで、そしてとても温かい。


ラピス「ふふ、では‥お言葉に甘えて‥

想像してください。
ここは森‥静かな森です。

水辺のある方には、清らかな音が‥
草木は風に揺られ、音楽を奏でますわ」

ルド「‥いいから‥早く‥」

ラピス「まあ!想像はとても大事ですのよ?」

ルド「‥わかった‥ここは森だ」


ラピス「ふふ‥」


ああ、こんな風に‥
1人を思って唄う事があったでしょうか?




ラピス「ひとしずく おちて はじまる




癒しの音をーーー貴方にーー

ーー治癒の唄ーー」


治癒の舞とは少し違いますが、
これもクローリー家の得意とする特殊回復魔法。

治癒の舞とは違い、
魔法陣を展開しない事で、
その対象を即座に、そして小さく収めた。

その特殊な詠唱を奏でる唄には、
疲労回復や、精神安定の効果があります。



ルド「‥、ーーー‥」




歌を口ずさむ私を見て、
リカルド様が、なにかそっと呟きました。

ですが、わたくしは、その意味を知る事なく
彼の為に歌うのでした。






そして暫くして、リカルド様はわたくしの膝の上でお眠りになられたのです。
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