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聖女召喚
クラン様
しおりを挟む「ふふ‥お恥ずかしいのであまり見つめないで頂きたいですわ。それに、この手もお離しください。王族の方に気安く触れるなどーー」
クラン「ねえ、どうして嘘の仮面を被るの?」
嘘‥違います。
これは私です
「っ、ですから、わたくしはっ」
クラン「俺はね、今日ラピスに初めて会って、初めて話して‥最初は、不思議な子だなって思ったけど、
ラピスの歌やダンスは楽しいし綺麗だし、
人をからかっているふりして、ちゃんと皆んなの事考えてて‥
ラピスの事が大好きになったんだ!」
この方はっ、
素直すぎて、真っ直ぐすぎて
‥こちらが動揺してしまいますわ。
どのような育ち方をしたらこのような‥。
クラン「勝手だけど、俺はラピスと友達になったと思ってる。
だから、大切な友達の泣いてるところ見てると辛いんだ。心配なんだ。分かるよね?」
友達‥
たしかに‥ルドが泣いていたら助けたくなります。
ですが
「わたくしは、クラン様が泣いていたとしても、何も‥何も思いませんわ‥」
これはきっと本当です。
冷たい心の奥底は、
少しの同情など、闇で溶かしてしまうのだからーー
クラン「‥そう‥。じゃあ、これは‥俺の勝手な行動で、ラピスは何も、気にしなくていいよ。
ただ、巻き込まれただけだ。そう思えばいいーー」
ソッとわたくしに近づいてくるクラン様。
その距離はとても近くて、
黄金の瞳が私を捉えた。
「な、なにを‥」
この方のする事は分からない。
分からないからとても恐ろしいのだ。
こつりとぶつかる額同士。
クラン「ジッとして」
「っ、」
離れようと体を動かすが、
石で固められたように動かない
これは、魔法ーー。
無詠唱かー、
いつから‥
クラン「〝光よ。哀しき闇の仮面を、我が光を持って、それを壊せーー発動せよー
ーー特殊幻術魔法 キングアイズーーー」
まずいっー、ー
「や、やめっ!?ゔ‥」
クラン「ねえ、君の本当の気持ち
聞かせてーーラピスーー」
耳鳴りがする。
目の前がぼやけて、
真っ白な光に包まれる。
そこには幼い私がいて、
泣きそうな顔で、わたくしを見つめるのだーー
『
おとうさまが、おにいさまを、おしかりになるの、
たくさん、おこるの、
おにいさまは、たくさん、ないて、
わたくしが、うまれたせい、
かわいそう、
たすけなくちゃ‥、
どんなことをしてもーー
みんな、いらない、
こころも、からだも、
わたくしは、
たすけなくちゃいけないの、
‥
それ、なのに、
どうして、こんなに、くるしい、の
こんな、かんじょう、いらない、のに、
さみしい、
いたい
くるしい
だれも、いない
まっくらな、やみ、
おにいさま
おいていかないで
いやだ
だれか、わたくしを、
この、ふかい、やみ、から、
たすけだしてーー
ひとり、ぼっちは‥もう、嫌なのーーー』
幼い自分が泣き叫ぶ
っ!?なんっなのですか!これは!?
クラン「そう‥本当の気持ち教えてくれてありがとう‥。
なら、俺が君を‥ラピスを助けてあげる」
幼い自分を、
どこからか現われたクラン様が抱きしめる。
その子は安心したように微笑んでいてーー
あり、えないーー
あんなもの、わたくしの中に、居るわけがないーー
気づいたら、眩い光は消えていて、
暖かな温もりが、代わりにわたくしを包む。
「こ、れ、は‥」
な、に‥?
なに、が‥
クラン「大丈夫‥大丈夫だよラピス。」
ゆっくりと髪を撫でられ、
びくりと身体が震えた。
「っ!?」
なぜ、わたくしは抱きしめられて‥
クラン「勝手に君の中をみて‥ごめんね‥。責任は‥ちゃんと、とるから」
わたくしの肩に顔を埋めるクラン様。
なぜ、私よりも傷ついているのですか貴方は‥。
優しい声‥哀れむような、
責任‥
そんなもの‥いりませんわ
とりあえず、一人になりたいのに‥
離さない。そんな意思のこもった力強い腕。
これは、とうぶん面倒になりそうですわ‥
はあ、
頭が痛い‥
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