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緑と洗脳機と真剣勝負
しおりを挟む洗脳機を手に取る。洗脳機から『ジジッ……』とノイズのような音が聞こえてきて――
「忘れておったぁぁああああ! ってなぜ緑はそれに着替えておるのだ!?」
「うぉぉおおおお!?」
び、びっくりしたぁ!
急にドアが開かれたと思ったら、ココア・ブラウンが飛び込んできた。
ココア・ブラウンは焦った様子で部屋を見渡すと、俺が持っている洗脳機に目を止め、プルプルと震えながらこちらを見てきた。
「み、緑……そ、それは……」
――ジジジッ
洗脳機から聞こえる音が大きくなってくる。
「そ、それを返すのだ緑ぃいい!」
「うおっ、何するんだココア・ブラウン!」
とびかかってきたココア・ブラウンを必死に避けたが、その時持っていた洗脳機をはたき落とされてしまった。
「ぐ、くそ……見られてしまうとは……!」
ココア・ブラウンは焦った表情を浮かべる。
それもそうだろう。なんて言ったって洗脳機はココア・ブラウンにとって切り札のようなもの。その切り札を失いかけたのだから、焦りもする。
だが、ピンチなココア・ブラウンとは違い、俺は千載一遇のチャンスである。
ココア・ブラウンの乱入と言う想定外のハプニングはあったが、何としてもこのまま洗脳機を壊しておきたいところだ。
部屋を見渡して洗脳機を探す。すると、少し離れた場所、部屋の隅に落ちているのを見つけた。
それを確認した俺は洗脳機に向かおうと……
「させるかぁっ!」
「ぐべっ」
しようとしたら足を引っかけられ、後ろから押さえつけられた。ココア・ブラウンはそのまま俺を踏み台にして先に洗脳機を拾おうとする。
くそっ、俺を踏んづけたなっ! 洗脳機を渡すわけにはいかない!
くらえっ!
「そうはいくかぁっ!」
前を行こうとするココア・ブラウンのワンピースを、スカートのように思いっきりめくりあげる。
「……? ――――っ! ~~~~~~~~~ッッ!?!?!?!?」
どうだ! これが必殺『劣情を呼ぶ魅惑の揺らめき・激』だ! 例えどんな人間であろうと、これをされたら思わずワンピースの裾を押さえてしまい動きを封じられる技。何度もイメージトレーニングを繰り返し、洗礼された俺の動きについて来られまい。俺の目の前ではふわりと舞ったワンピースが、今まで隠していた魅惑の花園をさらけ出し、ワンピースからパンツへ、純白からまた違う純白へと移り変わるその景色はまるで誰にも踏み荒らされていない雪景色のようでしかしそれは時間と共にゆっくりと顔を隠していき俺の心に一抹の寂しさを覚えさせる――ってしまったぁ! 思わず見とれてしまっていた! ココア・ブラウンの動きを止めるはずが俺の動きも止まってしまった!
「な、な、な、何をするのだこのバカ! 変態っ!!」
顔を真っ赤にしたココア・ブラウンが、げしげしと蹴って来る。
ダメージは食らうが、同時に『ワンピース少女に蹴られる』と言うシチュエーションにより回復もしているため実質プラスマイナス0である……おっと、今はそんなことを言っている場合じゃなかった。
「ま、待って! 一回落ち着こう!」
「落ち着く前にわれに言うべきことがあるだろう緑! み、みみ、見たであろうっ!」
「ばっちり見た」
「そこは嘘でも見てないと言え!」
「俺がワンピースに関して嘘をつけるか!」
「格好悪いことを格好良く言うでない!」
「な、なにをぅっ!?」
格好悪いかなぁ……こう、信念を貫き通す漢って感じがして格好いいと思うんだけど。
「と、とにかくだ。ここはお互い、一回落ち着いて冷静になろう。今、俺達はこんなことをしている場合じゃない」
「いや誰のせいだと思っておるのだ」
俺とココア・ブラウンは、どちらも洗脳機を手中に収めようとしている。俺は洗脳機を壊すため、ココア・ブラウンはまあ、それを阻止するため。
しかしここは俺の部屋。限られた空間。
二人の人間が大立ち回り出来るような広さなんてない。怪我をする可能性があって危ないじゃないか。それに丁寧に畳んでおいたダークグリーンのワンピースを踏んづけてしまったらどうするつもりだ。
そう言った諸々の懸念事項を考慮して、俺はある提案をした。
「ココア・ブラウン。ここはどちらが洗脳機を手にするか、勝負で決めないか?」
「なに? 勝負だと?」
ココア・ブラウンは『何を言っているんだこいつは』と言うような顔でこちらを見てくる。まあまあ落ち着け。話は最後まで聞けって。
「ああそうだ。俺達がここで自分が先に洗脳機を手にしようと争っても、こんな広くもない部屋だと危なくてしょうがない。お互いに前を行こうとする相手の邪魔をしようと考えているわけだし、俺も怪我をしたくない。ココア・ブラウンだってこれ以上恥ずかしい目に会いたくないだろ?」
「おぬしまたスカート捲りをするつもりだったのか!?」
バッ、とワンピースの裾を押さえてココア・ブラウンは後ずさる。
……うん、その反応はちょっと傷つくな。俺が悪いんだけど。
「だから、勝負で勝った方が洗脳機を手に入れて、恨みっこなしにした方がいいと思うんだ」
「うむむ……緑の言うことにも一理ある……いやしかし……」
ココア・ブラウンは考え込むように唸る。だがやがて観念したかのように息を吐くと、仕方なさそうに口を開いた。
「はあ、良いであろう。なんだかムキになるのもばかばかしく思えてきたわ。緑の提案に乗ってやるとしよう」
「そうか……じゃあ、早速だが始めるとするか」
何で勝負するかはもう考えてある。
このスペースで出来て、ココア・ブラウンが納得し、そして俺が勝つことの出来るであろう勝負なんて一つしか思いつかない。
「種目は『だるまさんがころんだ』だ」
この勝負で……すべてが決まる!
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