【完結】婚約破棄はブーメラン合戦です!

睫毛

文字の大きさ
3 / 89
婚約破棄を告げられました

ナディア様見守り隊

しおりを挟む
「では次、ジャンカルロ・ボニファシオ侯爵令息様」

「…な、何だ!」





 今のエルネストとのやり取りを聞いていたジャンカルロはすでに逃げ腰だ。何を言われるのか大方予想できる上に、エルネストと同じく言い返す言葉が思い浮かばないからだ。





「同じ事を聞いても面白くないですわね。ではフェリッリ男爵令嬢の言葉を全面的に信じた経緯を教えてくださいな」

「何だと…」





 馬鹿にするかのように言い放つナディアにカッとなったジャンカルロは、ダンと足で床を踏みつけ、ナディアに顔をぐっと近づけた。

 それを不快そうにナディアが距離を取ると、フンと小ばかにしたように唇の端を吊り上げる。





「何だ、俺が怖いのか?」

「まさか」

「正直に言っていいんだぞ?俺はエルネストのように優しくないんでね」

「では言いますけど」





 扇子で顔の半分を隠しながらもジャンカルロをじっと見つめる。そして恥ずかしそうに頬を赤らめ、ふっと目をそらした。

 その仕草は全く予想していなかったジャンカルロが驚いて目を見開く。不覚にも見惚れてしまう程に可愛らしいナディアの様子に、ちょっと動揺してしまったのだ。





「な、何だ、言ってみろ」

「息が臭いですわ」





 絶句。

 今何を言われたのかとナディアを凝視する。

 一方ナディアは恥ずかしい告白をしたかのように顔を赤らめ、視線をそらしていた。





「だっ、誰が息が臭いんだ!!!!」

「え、ジャンカルロ・ボニファシオ様の息ですわ。一体何を食べましたの?ニンニクの匂いかしら…」

「…!!!!」





 確かにさっきニンニクをふんだんに使った肉料理を食べた。大層美味かったのだ。が、それで今そんな事をこの場で言う必要があるか?

 そう思うと怒りがわいてくる。思わず掴みかかろうとしたその時、ナディアを守るように数人の男性がジャンカルロの前に立ちふさがった。





「ナディア様に無体を働くのは見過ごせない」

「な、何だお前達は!」

「「「ナディア様見守り隊だ!!」」」

「はあ!?」





 ナディア見守り隊と名乗った男達はナディアの無事を確認すると、スッとナディアの後ろに控える。そしてまるで空気かのように見事に存在感がなくなっていった。





「何だアイツ等は!?」

「知らないですわ。でも時々どこからともなく現れてピンチの時に助けてくださいますの」





 見守り隊だったんですねぇとナディアが呑気に呟く。さっきから馬鹿にされているようで仕方がないが、ここで怒っても話が前に進まない。

 とにかくナディアの質問にさっさと答えて選手交代しなければ。





「フン、まあいい。サブリナの言い分を信じる理由が知りたいと言ったな?簡単だ!サブリナは嘘をつくような女じゃないからだ!!」

「アホくさ」

「は!?今なんつった!?」

「答えになってませんわ。嘘をつくような女性じゃなくても嘘をつく事もあります。それにだからと言って片方の意見だけを聞くなんて愚の骨頂。それでも侯爵子息ですか?」

「き、貴様…!」





 怒りで顔を真っ赤にさせているジャンカルロを冷めた目で見つめ、ふうっと溜息をつく。そしてもう興味を失ったかのように視線を次のターゲットに向けた。





「ダニエル・ルイジ公爵子息様」

「な、何ですか」





 唐突に名を呼ばれ、たじろぎながらも返事をする。そしてジャンカルロに視線を向けるが、ナディアはゆるく首を横に振った。





「ああ、ボニファシオ様はもういいです。大した話もできないので」

「何だと!?」

「それよりもダニエル様」

「おい!!」





 まだ喚くジャンカルロを黙らせるべく、ナディアはさっき出て来た見守り隊へと視線を向ける。すると彼等も承知したとばかりにジャンカルロを取り囲み、事もあろうか数人で取り押さえてしまった。

 それでも喚き散らす為、黙らせるよう消音魔法を使ったのだ。

 思いのほか優秀な見守り隊にナディアが関心したが、すぐさまダニエルに向き直った。





「こんな事になって残念ですわ。貴方とは殿下と共に小さな頃から一緒でしたのに」

「……」

「それで、ダニエル様のご計画をお聞かせ願えないでしょうか?」

「計画だと?何を言っている」





 ナディアの言葉にダニエルではなくジョバンニが言葉を発した。それを一瞥し、再びダニエルに向き直る。





「だって賢い貴方がこんなバカな事をするなんて、私には信じられないんですもの。それなら何か考えがあってしているのかと思うのが普通でしょう?」

「…そう、ですか」

「まあ、フェリッリ男爵令嬢に想いを寄せられてるのは分かりましたけど、それにしても全く報われない行いではありませんか。まさか彼女が幸せならそばで見守るだけでいいとか思ってませんわよね?」

「ナディア様!さっきから皆に酷いです!もう、もうこんな事やめてくださいっ!!」

「そのお言葉、そっくりそのまま返しますわ」





 大勢の前で婚約破棄をしでかした事をもう忘れたのか。

 やはりこの女の頭の中は空っぽだとナディアは思った。

 今現在自分がナディアに対して非道な行いをしている自覚が全くない。





「フェリッリ男爵令嬢には後でゆっくりと尋も…質問させていただきますが、今はコイツ…じゃなくてダニエル様ですわね」





 今尋問って言おうとしたよな、とジョバンニが呟く。

 それよりもコイツって確実に言ってた、とジャンカルロが呟いている。

 そんな二人の呟きはしっかり聞こえていたナディアだったが、ニッコリと良い笑顔を二人に向けた後、再びダニエルに向き直った。





「宰相様のご子息であられるダニエル様が、こんなお粗末な断罪劇をされるとは思えませんもの。まさか確たる証拠も証言もなく、ただそこにいらっしゃるフェリッリ男爵令嬢のお言葉だけを信じ、サルトレッティ公爵家に。ダニエル様が得られるモノは一体何ですの?」

「そ、それは…」

「まさかフェリッリ男爵令嬢のお心、なんて戯言をのたまう事はしませんわよね?ハッキリ言いまして将来お父上の後をお継ぎになられる予定でしたら、完全な悪手でしかありませんわよ」





 パシンと子気味いい音を立てて扇子で手のひらを打つ。そしてナディアはパシンパシンと扇子を鳴らしながらも、ダニエルを静かに見据えていた。



 ダラダラと嫌な汗をかくダニエルは、今の状況が最悪だと言う事にようやく気付いたようだ。せわしなく視線が彷徨い、そしてぎゅっと両手を握りしめて唇を噛んだ。





「わ、私は…サブリナが君に嫌がらせをされていて辛いと…、そう聞いて…」

「それなら嫌がらせをされた時に言いに来るべきですわね。と言っても嫌がらせの事実はありませんけど」





 フンと小ばかにするように鼻で笑う。それを言い返す事もできず、ダニエルはただ悔しそうに視線を落とした。

 そこへさらに追い打ちをかけるように、ナディアはニンマリと笑みを浮かべて言葉を続けた。





「それに、フェリッリ男爵令嬢だけを保護するのはいささか不公平ではございませんか?」

「…は?」





 ナディアのセリフにダニエルは思わず顔を上げ、首を傾げる。

 そんなダニエルだけではなく、ナディアは自分と対峙している男性陣に視線を向け、心底不快そうな表情を見せたのだ。

 それを見たジョバンニの方も表情を歪める。





「何が言いたい?」

「まあ、殿下がお答えしていただけるのですね」

「だから、何の事だ」

「フフフ、ではこちらにお呼びしますわね。マーズ子爵令嬢、こちらへ」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

処理中です...