【完結】婚約破棄はブーメラン合戦です!

睫毛

文字の大きさ
73 / 89
王弟殿下と公爵令嬢

結婚準備に入ります

しおりを挟む
 ドルフィーニ国の建国祭も無事(?)に終わり、マティアスやローデウェイク達も各国へと帰還した。
 帰り際にマティアスからナディアへ謝罪があり、ナディアは満足そうに頷いた。


「フフフフ、やっぱりブーメランは楽しいわ」

「お嬢様…今回もお見事です」

「オルガも楽しめた?」

「勿論です!」


 心底楽しそうにしているナディアをレイナードが呆れたように眺め、父であるフィリップはうんうんと頷いていた。


「姉上、めちゃくちゃいい顔ですね」

「まあ仕方ないだろう。今回ばかりはカイラモ大公殿下の自業自得だ」

「今回ばかりって言うか、毎回そうじゃないですか。いつか姉上もブーメラン投げられますよ」

「それはそれでナディアなら喜びそうだが」

「…否定できないですね」


 とまあ、こんな会話を父と息子がしていたが、ナディアは全く気にも止めていないようで、終始ご機嫌だ。


「女性を甘く見るからこうなるのよ」

「その通りです、お嬢様」


 ナディアの呟きに当然とばかりにオルガも頷いている。
 楽しそうな所申し訳ないが、レイナードにすればこんな姉で本当にいいのかと、時々エラディオを気の毒に思っていた。
 すると、父であるフィリップも同じことを考えていたのかポツリと愚痴のように零す。


「全く、こんな娘で申し訳ないな…」

「父上、それ姉上の前で言う事じゃないですよ」


 二人が小声で喋っていたが、ナディアにはバッチリと聞こえていたようで。


「こんな私でもいいと仰るのはエディ様ですので、申し訳ないなんて事はないわね」

「そうですよ!公爵様も公子様もお嬢様に失礼です!」

「本当にね。ナディア、ちょっといいかしら?」

「ル、ルディア…!」

「母上!」

「あら、お母様?」


 二人に反論していると、突如ナディアとレイナードの母であるルディアがやって来たのだ。
 ルディアの後ろには見慣れない女性が数人付いてきている。


「お母様、後ろの方達は?」

「ウフフフ、そろそろ貴女の花嫁衣裳を作らないといけないでしょう?だから今日は貴女の採寸とデザインの相談に来てもらったのよ」

「え」


 全く聞かされていなかったせいで、ナディアが目を丸くする。
 フィリップとレイナードも顔を見合わせ、そして恐る恐るルディアに問いかけた。


「ルディア、花嫁衣裳はまだ早いんじゃないか?」

「そうですよ。姉上の婚約の調印が終わったばかりじゃないですか。式は早くても一年先では…」

「何を言っているの?一年先だろうが二年先だろうが、準備を早くして何が悪いのかしら?」

「いや、悪い訳ではないが…」


 ナディアとエラディオの婚約は、建国祭が終わった後に正式に結ばれた。
 何しろザクセン国王からの親書もあり、ナディア自身がエラディオとの婚約を了承したのだ。
 ジョバンニは随分と文句を言っていたらしいが、エラディオに一蹴されたようだが。

 それはともかくとして、王弟と正式に婚約した事もあって、二週間後にナディアは再びザクセンに向かう事になっている。
 あちらでは婚約式を行うそうだ。
 とは言っても身内だけのお披露目のような場になるので、規模は小さいと聞いている。
 そもそもエラディオは婚約式なんてしないと言っていたが、今回の婚約の後押しをしてくれた国王が却下したらしい。

 そんなこんなでナディアは今とても忙しい。
 婚約式の衣装はエラディオが向こうで用意すると言って、先にザクセンに戻ってしまったのだ。
 そしてなんだかんだで寂しい父フィリップは、婚礼衣装の採寸と言われて面白くないようだったが、母ルディアがキッと睨み、そしてレイナードと共に部屋から追い出すように手をパンパンと叩いた。 


「さあさあ、男性は出て行ってくださいな。ホラ、あなたもですよ」

「あ、ああ…、そういう事なら仕方ない。レイナード、私の執務室へ来なさい」

「分かりました。じゃあ姉上、また後で」


 ドレスの採寸と聞いて二人はすぐに納得し、早々に部屋から退室する。
 そして応接室には女性のみになり、テキパキと準備を始める。

 その中の一人の女性が一歩前に進み出て、ナディアに向かって丁寧なお辞儀をした。


「はじめまして、サルトレッティ公爵令嬢。お会いできて光栄です」

「ナディア、この方はマダムカープよ。王都の高級ドレスショップのオーナーなの」

「え、マダムカープって…あの王室御用達の!?」

「うふふ、そうですわ公女様。さあさあ、早速採寸をしてしまいましょう」

「え、ええっ!?」


 まさか自分の婚礼衣装を王室御用達のドレスショップで頼む事になるなんて。
 ナディアにすれば寝耳に水だ。

 そもそも、婚礼衣装はザクセンでつくるつもりでいたのだ。
 何しろエラディオの国に嫁ぐのだから、あちらの衣装を用意する方が印象も違うだろうし。

 そう思ってナディアは慌ててマダムカープに申し出た。


「あ、あの、私はザクセンの王弟殿下の元へ嫁ぐので、できればザクセンの衣装にしたいのですが…」

「まあまあ!そういう事ですのね!わかりましたわ、公女様。必ずご希望に添える物をご用意いたしますのでご安心くださいな!」


 ナディアの申し出にマダムカープは目を光らせる。
 どうやらデザイナー魂に火をつけてしまったようだ。


「公女様のシルバーブロンドの髪は本当にお美しいですわ」

「ありがとうございます」

「その御髪に付けられている髪飾りも素敵ですわねぇ。一体どちらでご購入されたのか教えていただいても?」

「あ、これは…」


 髪飾りと言われて思わず手を髪に持っていく。
 そっと触れたのはいつしかエラディオに貰った髪飾りだった。

 実はあれから毎日髪に着けていて、今ではナディアのトレードマークになっているのだ。


「可愛らしいチューリップの髪飾りですわね。ですが公女様であれば美しいバラがお似合いではないかしら」

「…いえ、私はこれが気に入ってるの」

「そうなのですか?それで、どちらでご購入を?」


 かなり食い気味に購入先を訊ねてくるが、これはエラディオの手作りだ。
 言うべきかどうか悩んでいると、何故かオルガがすんなりと答えた。


「こちらの髪飾りは婚約者であられるザクセン王弟殿下の手作りでございます」

「まあ!」

「ちょ、オルガ」

「いいではありませんか、お嬢様。本当の事ですし、隠す方がマダムカープが気になってずっと聞いてきますよ」

「それはそうかもしれないけど」


 この髪飾りはエラディオの真心だ。
 王家のブローチを渡された時よりも、この髪飾りとぬいぐるみをもらった時の方が比べ物にならないくらい嬉しかったのを覚えている。
 勿論王家のブローチは返そうとしても受け取ってくれないので、厳重に保管しているが。

 そんな事を考えていると、マダムカープは興奮したように騒ぎ出した。


「なんっっっって素敵なのでしょう!愛しい婚約者に手作りのアクセサリーを送るだなんて!しかもこの出来栄えはプロ顔負けですわ!!ええ、ええ、いいでしょう!この髪飾りを花嫁衣裳でも使わせていただきましょう!」

「えっ、いいんですか?」


 まさか婚礼にこの髪飾りを着けれるなんて。
 思わず声を上げてしまうと、マダムカープはニンマリと笑みを浮かべて頷いた。


「勿論です!他の飾りも使いますけど、基本メインはこのチューリップの髪飾りにしましょう。ああ、楽しくなってきたわ!さあさあ、公女様!すぐに採寸に入りますわよ!」

「よ、よろしくお願いします…」


 マダムカープの勢いに飲まれそうになりながらも、ナディアは採寸を始める。
 そしてナディアの母であるルディアとマダムカープが何やら白熱しながらアイデアを出し合い、二日後にデザインを数点描いて持ってくると言ってマダムカープは帰っていったのだった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

処理中です...