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公爵令嬢の婚約事情
女性を甘く見た男の末路4
あれから。
結局の所、マティアスは国王王妃両陛下にこっぴどく叱られ、キャンディスに謝罪する羽目になった。
さすがに他国の王族の醜聞ともなると、いくら公爵家のご令嬢とは言えナディアが中に入る事はできない。
が、こちらはマティアスに求婚されていたと言う事も考慮して、つまるところ結果だけドルフィーニ国の王妃が教えてくれた。
「え、ではカイラモ大公殿下は全く知らない方と婚姻されるのですか?」
「全く知らないと言う訳ではないわよ?それに婚姻ではなく婚約させられるだけだし、大したお咎めを受けるわけでもないわね」
不本意そうに王妃が呟くが、ナディアにすればまあまあの落としどころだったと思う。
マティアスは、コルト国の国王の大叔母であるデルフィーネ・ヘイル・ジェプセンの逆鱗に触れたのだ。
この件に関しては、コルト国の王妃がすでにデルフィーネに伝えており、デルフィーネは大層ご立腹だそうだ。
それもそのはず、大切な孫娘を娼婦のように扱った挙句、ナディアに求婚する為に簡単に捨てたのだから仕方がないだろう。
「ジェプセン前公爵夫人…いえ、デルフィーネ様からすれば、兄の孫がとんでもない事をやらかしたと怒り狂ったようよ。ご高齢とは言え、まだまだお元気なようだしねぇ」
「ええ…それは…ご愁傷様ですわ…」
デルフィーネは御年70歳の健康な女性だと聞いている。
彼女の兄であり、前々国王だった兄は75歳で、こちらもまだまだ元気らしい。
ただコルト国は王太子が妃を迎え、第一子が誕生すると王位を譲ると言う決まりがあり、その為現在の国王の父である前国王もまだまだ若い。確かまだ50歳くらいだったはずだ。
「デルフィーネ様はカイラモ大公殿下の御父上にも苦情を言いに行ったらしいわね。フフフ、お前がしっかり息子を躾けないからこんな事になったのよ!とね」
「いいお年をした男性が怒られるなんて…」
「あら、気の毒に思う?」
「いいえ?とても楽しいですわ」
「ウフフ、私もそう思うわ」
二人で楽しそうに笑いながら、目の前のお茶を楽しむ。
コクリと一口飲んでから、そう言えばとナディアは王妃に尋ねた。
「あの、カイラモ大公殿下のお相手は結局どなたですか?」
「ああ、それはねぇ」
ニンマリと悪い笑みを浮かべる王妃に、ナディアの期待が高まる。
そして王妃の口から出た相手に、全く予想すらしていなかったナディアは驚きで目を見開いた。
「え…乳母の方…ですか?」
「そうよ。お年は確か43歳かしらね。離婚されているからちゃんと独り身だし、お子様達も成人しているらしいから、何も問題ないわよねぇ」
「それは…すごいですね…!」
「そうでしょう?もう本当に、この部分に関してはリンダナと一緒に随分と考えたのよ!」
「リンダナ…コルト国の王妃陛下ですね。お二人とも何て素晴らしい…!」
「うふふふ、もっと褒めてもいいのよ!」
悪戯が成功したように笑う王妃を見て、ナディアはこの人にはまだまだ勝てないと感心した。
王妃二人が用意した新たな婚約者は、マティアスの乳母だった女性だ。つまりマティアスよりも18歳年上の、母親と変わらない年齢の女性で、乳母と言うだけあって母同然の存在のはず。
この事を聞いた時のマティアスの表情は、何とも言えないくらいに絶望した顔だったそうだ。
けれどそんなマティアスに王妃はケロッとした表情で
「あら、カーリーは貴方の初恋の人じゃない。初恋の人と婚約出来てよかったわね?」
と、非常にいい笑顔で伝えたそうだ。
カーリーと言う名の乳母は、実は43歳だと思えない程に若々しく、そして美しい女性だそうだ。
夫だった伯爵と別れてからは求婚者が何人もいたそうだが、男は懲り懲りだと言いながら仕事をしていたらしい。
カーリーはマティアスを自分の息子と同じように大切に扱い、時に厳しく接して来たのだ。
そんな彼女は今回のマティアスのやらかしを聞いて、大層嘆いたそうだ。
「王妃から婚約の話が来た時に、例え一時のお仕置きの為の婚約とは言え随分と悩んだらしいけど、彼女の息子が意外にも乗り気だったみたいね」
「息子さんですか。それってカイラモ大公殿下の乳兄弟になるんですよね?」
「ええ。彼女も離婚して伯爵家に戻ったのだけど、家族に遠慮してしまってね。それで、彼女自身に子爵の位を授けて、その息子をカイラモ大公殿下の側近にしたそうよ。今も大公に仕えていると聞いているわね」
「その息子さんが後押ししたと言う事ですか」
「カイラモ大公が昔自分の母親に好意を持っていたのを知っていたらしいわよ。半分以上面白がってるみたいだけど、どうやらモンセン伯爵令嬢にしていた仕打ちに対して思う事があったみたいね」
「完全に自業自得って事ですね」
そうは言っても相手は初恋の君だ。
ある意味幸せだと思えなくもない。
ただ、かなりはっきりモノを言う性格の方のようなので、しばらくは根性を叩きなおされるだろう。
「どう、ナディア?満足のいく結果になったかしら?」
「まあ、王妃陛下。何の事でしょう?」
「とぼけなくてもいいわよ。ジョバンニの事もあったし、貴女には色々と悪いと思っているのよ?」
「あれは完全に殿下が悪いので気にされなくても」
「そうはいかないわよ。せっかくこんな面白い子が私の娘になると思ってたのに、ジョバンニがやらかしたせいで台無しになったのよ?あのサブリナとかいう子も、今は地下牢で大人しくしているみたいだけど、最初はジョバンニを呼べとうるさかったわね」
「そ、それは…ある意味スゴイですわね…」
「本当に身の程知らずにもほどがあるわ。ジョバンニもようやく完治したし、今後はヴェロニカを支えてもらう為に馬車馬のように働いてもらわないと」
「え、完治したのですか?」
ジョバンニが完治したと言う事は、サブリナのお菓子の依存症がなくなったと言う事だろう。
かなり長い間服用していたせいで、ジョバンニを含む側近達も禁断症状に悩まされていたと聞いていたが。
「側近候補だった子息達も随分と良くなったと聞いているわ。でもね、こんなふざけたハニートラップに全員で騙されるようじゃ、とてもじゃないけど国の中枢を任せられないでしょう」
「その通りです」
「宰相の息子は王宮の官職には就かせないわ。せいぜい領地経営だけを頑張ればいいでしょう。騎士団長の息子も辺境伯預かりになって、一兵卒からやり直し。魔術師団長の息子は無理やり冒険者協会に登録させられたみたいね。魔術師団に入る為に、まずは冒険者になって修行させるそうよ」
「私が聞いていたのと少し違いますわ」
「一旦薬物中毒を治す必要があったからね。治療が完了した頃には三人とも意気消沈していたようよ。過程はどうあれ、一人の令嬢を男4人でいじめていたのですもの。騎士団長の息子は特にショックを受けていたわね」
「ジャンカルロ・ボニファシオ様が」
意外だと言わんばかりに目を見開くと、王妃はクスリと笑みをこぼす。
「一応騎士としての心構えはあったみたいよ。自分はか弱い女性になんて事をしてしまったのかと悔いてるらしいわ」
「一番反省しなさそうなのに」
「一番反省していないのは残念だけどジョバンニね。まあ、半分は意地になっているんでしょうけど、まだあの娘に対する気持ちを偽りだと思いたくないみたいだわ」
「そうですか」
建国際のパーティーでサブリナの事を聞いた時のジョバンニの態度を思い出す。
確かにアレはいまだに気持ちを引きずっていると言うよりも、自分が惚れ薬によって操作されていたと思いたくないようにも見えた。
「…こういう事は時間がかかります。普通に失恋したと思ってくれたらいいのですけど」
「あら、案外優しいのね?ジョバンニの事を恨んでいないの?」
恨んでいないのかと聞かれれば、恨んでいませんとしか言いようがない。
そんな風に憎しみを持つ程の関係性ではなかったし、強いて言えば理不尽な行いに対しての怒りしかない。
「正直殿下がサブリナさんを今でも想っていたとしても関係ありませんので」
「あらあら、本当に我が息子ながら情けないわ。婚約者一人の気持ちすら捕まえられないなんて」
「単に私が殿下のタイプではなかったんですよ」
「そんな事ないわよ。最初は貴女の事を追い回していたじゃない」
あんなに好きだったのに、初恋って長続きしないのかしらねぇ。と、王妃が呟いた。
(初恋…そうかしら?)
自分はジョバンニにそんな気持ちを持った事がない。
好きだとか思おう間もなく婚約者になり、他の人に目を向ける事を禁じられて今まで生活していたのだ。
けれど、あの日の婚約破棄があり。
そして今は愛しい婚約者がいる。
「私は殿下に感謝しております。だって、エディ様と巡り合わせてもらえたんですから」
「まあ」
心の底からの気持ちを王妃に告げると、王妃は驚いて僅かに目を瞠る。
だがすぐに微笑ましそうに見つめられ、そして「良かったわね」と告げられた。
こうして、ナディアの求婚騒動は幕を下ろしたのだった。
結局の所、マティアスは国王王妃両陛下にこっぴどく叱られ、キャンディスに謝罪する羽目になった。
さすがに他国の王族の醜聞ともなると、いくら公爵家のご令嬢とは言えナディアが中に入る事はできない。
が、こちらはマティアスに求婚されていたと言う事も考慮して、つまるところ結果だけドルフィーニ国の王妃が教えてくれた。
「え、ではカイラモ大公殿下は全く知らない方と婚姻されるのですか?」
「全く知らないと言う訳ではないわよ?それに婚姻ではなく婚約させられるだけだし、大したお咎めを受けるわけでもないわね」
不本意そうに王妃が呟くが、ナディアにすればまあまあの落としどころだったと思う。
マティアスは、コルト国の国王の大叔母であるデルフィーネ・ヘイル・ジェプセンの逆鱗に触れたのだ。
この件に関しては、コルト国の王妃がすでにデルフィーネに伝えており、デルフィーネは大層ご立腹だそうだ。
それもそのはず、大切な孫娘を娼婦のように扱った挙句、ナディアに求婚する為に簡単に捨てたのだから仕方がないだろう。
「ジェプセン前公爵夫人…いえ、デルフィーネ様からすれば、兄の孫がとんでもない事をやらかしたと怒り狂ったようよ。ご高齢とは言え、まだまだお元気なようだしねぇ」
「ええ…それは…ご愁傷様ですわ…」
デルフィーネは御年70歳の健康な女性だと聞いている。
彼女の兄であり、前々国王だった兄は75歳で、こちらもまだまだ元気らしい。
ただコルト国は王太子が妃を迎え、第一子が誕生すると王位を譲ると言う決まりがあり、その為現在の国王の父である前国王もまだまだ若い。確かまだ50歳くらいだったはずだ。
「デルフィーネ様はカイラモ大公殿下の御父上にも苦情を言いに行ったらしいわね。フフフ、お前がしっかり息子を躾けないからこんな事になったのよ!とね」
「いいお年をした男性が怒られるなんて…」
「あら、気の毒に思う?」
「いいえ?とても楽しいですわ」
「ウフフ、私もそう思うわ」
二人で楽しそうに笑いながら、目の前のお茶を楽しむ。
コクリと一口飲んでから、そう言えばとナディアは王妃に尋ねた。
「あの、カイラモ大公殿下のお相手は結局どなたですか?」
「ああ、それはねぇ」
ニンマリと悪い笑みを浮かべる王妃に、ナディアの期待が高まる。
そして王妃の口から出た相手に、全く予想すらしていなかったナディアは驚きで目を見開いた。
「え…乳母の方…ですか?」
「そうよ。お年は確か43歳かしらね。離婚されているからちゃんと独り身だし、お子様達も成人しているらしいから、何も問題ないわよねぇ」
「それは…すごいですね…!」
「そうでしょう?もう本当に、この部分に関してはリンダナと一緒に随分と考えたのよ!」
「リンダナ…コルト国の王妃陛下ですね。お二人とも何て素晴らしい…!」
「うふふふ、もっと褒めてもいいのよ!」
悪戯が成功したように笑う王妃を見て、ナディアはこの人にはまだまだ勝てないと感心した。
王妃二人が用意した新たな婚約者は、マティアスの乳母だった女性だ。つまりマティアスよりも18歳年上の、母親と変わらない年齢の女性で、乳母と言うだけあって母同然の存在のはず。
この事を聞いた時のマティアスの表情は、何とも言えないくらいに絶望した顔だったそうだ。
けれどそんなマティアスに王妃はケロッとした表情で
「あら、カーリーは貴方の初恋の人じゃない。初恋の人と婚約出来てよかったわね?」
と、非常にいい笑顔で伝えたそうだ。
カーリーと言う名の乳母は、実は43歳だと思えない程に若々しく、そして美しい女性だそうだ。
夫だった伯爵と別れてからは求婚者が何人もいたそうだが、男は懲り懲りだと言いながら仕事をしていたらしい。
カーリーはマティアスを自分の息子と同じように大切に扱い、時に厳しく接して来たのだ。
そんな彼女は今回のマティアスのやらかしを聞いて、大層嘆いたそうだ。
「王妃から婚約の話が来た時に、例え一時のお仕置きの為の婚約とは言え随分と悩んだらしいけど、彼女の息子が意外にも乗り気だったみたいね」
「息子さんですか。それってカイラモ大公殿下の乳兄弟になるんですよね?」
「ええ。彼女も離婚して伯爵家に戻ったのだけど、家族に遠慮してしまってね。それで、彼女自身に子爵の位を授けて、その息子をカイラモ大公殿下の側近にしたそうよ。今も大公に仕えていると聞いているわね」
「その息子さんが後押ししたと言う事ですか」
「カイラモ大公が昔自分の母親に好意を持っていたのを知っていたらしいわよ。半分以上面白がってるみたいだけど、どうやらモンセン伯爵令嬢にしていた仕打ちに対して思う事があったみたいね」
「完全に自業自得って事ですね」
そうは言っても相手は初恋の君だ。
ある意味幸せだと思えなくもない。
ただ、かなりはっきりモノを言う性格の方のようなので、しばらくは根性を叩きなおされるだろう。
「どう、ナディア?満足のいく結果になったかしら?」
「まあ、王妃陛下。何の事でしょう?」
「とぼけなくてもいいわよ。ジョバンニの事もあったし、貴女には色々と悪いと思っているのよ?」
「あれは完全に殿下が悪いので気にされなくても」
「そうはいかないわよ。せっかくこんな面白い子が私の娘になると思ってたのに、ジョバンニがやらかしたせいで台無しになったのよ?あのサブリナとかいう子も、今は地下牢で大人しくしているみたいだけど、最初はジョバンニを呼べとうるさかったわね」
「そ、それは…ある意味スゴイですわね…」
「本当に身の程知らずにもほどがあるわ。ジョバンニもようやく完治したし、今後はヴェロニカを支えてもらう為に馬車馬のように働いてもらわないと」
「え、完治したのですか?」
ジョバンニが完治したと言う事は、サブリナのお菓子の依存症がなくなったと言う事だろう。
かなり長い間服用していたせいで、ジョバンニを含む側近達も禁断症状に悩まされていたと聞いていたが。
「側近候補だった子息達も随分と良くなったと聞いているわ。でもね、こんなふざけたハニートラップに全員で騙されるようじゃ、とてもじゃないけど国の中枢を任せられないでしょう」
「その通りです」
「宰相の息子は王宮の官職には就かせないわ。せいぜい領地経営だけを頑張ればいいでしょう。騎士団長の息子も辺境伯預かりになって、一兵卒からやり直し。魔術師団長の息子は無理やり冒険者協会に登録させられたみたいね。魔術師団に入る為に、まずは冒険者になって修行させるそうよ」
「私が聞いていたのと少し違いますわ」
「一旦薬物中毒を治す必要があったからね。治療が完了した頃には三人とも意気消沈していたようよ。過程はどうあれ、一人の令嬢を男4人でいじめていたのですもの。騎士団長の息子は特にショックを受けていたわね」
「ジャンカルロ・ボニファシオ様が」
意外だと言わんばかりに目を見開くと、王妃はクスリと笑みをこぼす。
「一応騎士としての心構えはあったみたいよ。自分はか弱い女性になんて事をしてしまったのかと悔いてるらしいわ」
「一番反省しなさそうなのに」
「一番反省していないのは残念だけどジョバンニね。まあ、半分は意地になっているんでしょうけど、まだあの娘に対する気持ちを偽りだと思いたくないみたいだわ」
「そうですか」
建国際のパーティーでサブリナの事を聞いた時のジョバンニの態度を思い出す。
確かにアレはいまだに気持ちを引きずっていると言うよりも、自分が惚れ薬によって操作されていたと思いたくないようにも見えた。
「…こういう事は時間がかかります。普通に失恋したと思ってくれたらいいのですけど」
「あら、案外優しいのね?ジョバンニの事を恨んでいないの?」
恨んでいないのかと聞かれれば、恨んでいませんとしか言いようがない。
そんな風に憎しみを持つ程の関係性ではなかったし、強いて言えば理不尽な行いに対しての怒りしかない。
「正直殿下がサブリナさんを今でも想っていたとしても関係ありませんので」
「あらあら、本当に我が息子ながら情けないわ。婚約者一人の気持ちすら捕まえられないなんて」
「単に私が殿下のタイプではなかったんですよ」
「そんな事ないわよ。最初は貴女の事を追い回していたじゃない」
あんなに好きだったのに、初恋って長続きしないのかしらねぇ。と、王妃が呟いた。
(初恋…そうかしら?)
自分はジョバンニにそんな気持ちを持った事がない。
好きだとか思おう間もなく婚約者になり、他の人に目を向ける事を禁じられて今まで生活していたのだ。
けれど、あの日の婚約破棄があり。
そして今は愛しい婚約者がいる。
「私は殿下に感謝しております。だって、エディ様と巡り合わせてもらえたんですから」
「まあ」
心の底からの気持ちを王妃に告げると、王妃は驚いて僅かに目を瞠る。
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